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火の国編4話

辺りの空気がシーンとする。

「………は?………今何て?」


「君には火の国の王になってもらう」


「………訳が分かりません」


ラムチは心配そうにカグツチを見ている。


「火の国の王になれば火の魔剣も君の物だ。それで君の望みも叶う。悪い話ではないだろう?」


「………!」


カグツチは火の魔剣というワードを聞いて我に返る。

そして直ぐ様ロスカのことを見る。

そして期待に満ちた表情の後すぐに首をブンブンと振る。


「いや。都合が良すぎる。そんな偶然が」


「偶然はあるのだな」


「………」


カグツチは期待と不安が入り交じった不安な表情を浮かべて考え込む。

そしてその後、ラムチに目線を寄せる。


「ラムチさん………」


カグツチは声を振り出す。


「ラムチさんは知ってたのですか?」


ラムチは目を瞑って無言で首を横に振る。


「………」


カグツチも考え込む。


「………それは本当のことですか?」


「あぁ。君が王族であることは違いない。それに国王直々の命だ。それ以外に考えられん。」


「………」


カグツチは考え込み、少しした後話し始める。


「そもそもあなたも王子のはず。何故あなたが継承しないのですか?」


「………それは」


そう話したところで船の動きが止まる。

そうしてドタバタと外から足音が聞こえる。

そして忍者装束の男が部屋に入ってくる。


「マガハラに到着しました!」


「あぁ。ご苦労。話は後にしよう一旦出ようか。」


そう言ってスサノオは部屋の外に出ていく。

俯くカグツチをラムチが心配そうに見ている。


「………カグツチ」


そしてカグツチは大きく深呼吸をする。


「………取り乱しました。すみません。………マガハラは海に囲まれた国………。簡単にはクリオネッタには戻れない………。ひとまず今は従うしかない………と思います。必ず守ります。情報の真偽を確かめつつ、動いていきます。」


その言葉を聞いてラムチは微笑む。


「………うん。流石は護衛騎士ね!」


「じゃあ行きましょう………」


ロスカの方を見てある違和感に気づく。


「………あれ?車椅子は?」


「………あの人達多分持ってきてなかったみたい」


「………どうしましょうか」


「カグツチがお姫様抱っこじゃないかしら?」


「!」


カグツチは赤面する。


「いや………お姫様抱っこなんて」


「私のような老婆に力仕事をさせるつもり?」


意地悪な笑みを浮かべてラムチが返答する。


「………でも姫が嫌がらないでしょうか?」


「大丈夫よ。きっと喜ぶわよ。お姫様抱っこは女の子の夢だもの」


「…………」


複雑そうにカグツチはロスカのことを見ている。


「ほーら。大丈夫だから。」


ロスカはカグツチの背中を押す。

しかしカグツチは固まっている。

そうするとスサノオが部屋に入ってくる。


「どうした?」


「………いえ」


カグツチは特に何も返答しないが、スサノオはロスカに目線を向ける。


「実は車椅子でいつもは移動してるのですが………」


「………そうか。すまない。女性の兵を呼ぶから待っていてくれ」


スサノオは部屋を出ていこうとするが、カグツチは葛藤する。


(いや………見ず知らずの敵兵に姫の身柄を預けていいのか………)


そして目を瞑り申し訳なさそうな顔を浮かべる。


「………申し訳ありません」


そう言って手のひらを当てないように腕だけでロスカをお姫様抱っこする。

カグツチは赤面しつつ、非常に申し訳なさそうな顔をしている。


「だ、大丈夫です。」


スサノオが振り返る。


「………そうか。分かった。」


そう言って一同は船から降りていく。


船を降りるとそこにはあぜ道に木造建築の街が広がっており、和装に身を包んだ民が歩いていた。

籠のついた棒を担いで、その籠に魚やら野菜を乗せて歩いている人もいれば、何やら箱のついた棒を持って走る人もいて多種多様である。


建物も魚を売っている店に、団子屋、簪を売っている店と多種多様な店が並んでいる。

カグツチ達氷の国から来た人の格好はほかの人と比べるとすごく目立っており、物珍しげな目線を向ける。

スサノオが進んでいくと自然と人が左右にはけていき道が作られる。


カグツチは最大限周囲に警戒しながら歩いていく。

スサノオに対して群衆から黄色い歓声が飛び、スサノオは手を振って返している。

スサノオがカグツチに声をかける。


「ここがマガハラだ。覚えているか?」


「………いや。全く」


「まぁそれもそうか。すまないな。馬車の発着場はもう少し先だ。」


「………さっきの話ですが」


「群衆の前でする話じゃない。すまないが後にしよう。」


「………分かりました。」


そう言って一同は馬車へと乗り込み進んでいく。

そうしてしばらく馬車に揺られて乗っていると、大きな建造物の前に到着する。

一同は降りる。

するとそれはそれは大きい和の城がそびえ立っていた。


「ここがマガハラの首都。マガハラ城だ」


城の入口には門番のように足軽のような槍を持った2人が立っている。


「ご苦労。」


「はい。」


「王は帰っているか?」


「いえ!まだ遠征中です!」


「そうか。」


足軽は道を開け、城のドアもゆっくりと開閉する。

そんなやりとりや光景を見てラムチがカグツチに耳打ちする。


「本当に王族っぽいわね」


「………ですね」


そして木材の城の中を進んでいき、広間のような場所に案内される。

広間には巫女装束のような服を着た女性が二人座っていた。

尊大そうなキラキラした女性となんだか物静かな雰囲気女性の二人である。

スサノオは話し始める。


「すまないが、国王は暫く不在だ。暫くはここに泊まってもらうことになる。」


「しばらくって………どれくらいですか?」


「恐らく1週間くらいだな。今宿泊部屋の準備をしているから待っていてくれ」


「あ、私手伝いますよ」


「いや。客人の手は煩わせん。お茶も出すから待っていろ」


そうやり取りしていると尊大そうでキラキラした女性が近づいてくる。


「あら。あなたがカグツチ?」


不躾に聞いてくる。


「はい。そうですが」


「私はアマテラス!アマテラス·マガハラ!この国の第一王女!あなたの姉よ!姉を敬いなさい!」


「………」


「でこっちの根暗がツクヨミ·マガハラよ!第二王女よ!覚えなさい!」


後ろにいるもの静かな女性を指差すアマテラス。


「そちらの老婆と姫っぽい方は?」


「あぁ。私こちらの姫の使用人のラムチと申します。こちらはロスカ姫。クリオネッタの第一王女です」


「ふーん。ツクヨミと同じで随分根暗な姫なのね」


「………姫は!」


「アマテラス。ロスカ姫に失礼だ。謝れ」


カグツチの沸点に触れかけた発言にスサノオが釘を差す。


「何?弟のくせに姉に逆らうって?」


「礼儀の話をしている。それに弟じゃない」


「何よ!挨拶しない根暗の方が礼儀なってないじゃない!」


「姫は!」


カグツチが声を荒げ、アマテラスがカグツチの方を見る。

アマテラスはカグツチを睨み返す。


「何?何かあるなら言ってみなさいよ!」


カグツチは少し怒り気味のトーンで話始める。


「姫は誰よりも人と話すのが好きで優しい人です!それが氷の魔剣によってこんな状態になってしまったんです!」


アマテラスは固まる。

そしてスサノオを見る


「………氷の魔剣?」


「クリオネッタ王国が襲われ、氷の魔剣が奪われたらしい。国もかなり大打撃を受けていた。」


アマテラスはそれを聞いた後に涙を流し始める。


「そうなの………。姫様すっごい可哀想ね………。頑張って生きてるのね………」


ポロポロと涙を流しながら話す姿を見て、自然と怒りが収まっていくカグツチ。

ラムチが耳打ちする。


「何か感受性が豊かね」


「………そうですね。」


ヒックヒックと泣いてるアマテラスを無視してスサノオが話を続ける。


「先ほどの話の続きだな。我が何故王を目指さないのかについてだったな。」


「はい」


「それは………」


スサノオが話しかけた瞬間、ふすまが勢いよく空けられる。


「スサノオ様!」


すると治安の悪い表情をした男が入ってくる。


「俺はこんなやつ王とは認めない!あんたが王を継げばいいんだよ!」


ズカズカと男が入ってくる。


「イズモ!失礼だぞ」


「失礼なのは余所者の方だ。王位を譲るなんざ」


「余所者じゃない」


入ってきたイズモと呼ばれている男はカグツチを見るや否や近づいてくる。

そして襟元を掴む。


「てめえがカグツチか。俺はお前を王として認めねえ」


カグツチは少し驚くも、その少し後に返答を返す。


「はい。王になるつもりはありません」

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