火の国編1話
ここまでのお話を読んでいただいた方、
またこのお話を偶然開いていただいた方も本当にありがとうございます。
ここまでの簡単なあらすじを転記しますので、もしお時間等よろしければこのお話から読んでいただければ嬉しいです。
(ここまでの話のネタバレを含みます。)
氷の魔剣によって封印された氷の姫ロスカを助けるために奮闘する護衛のカグツチ。
前章では風の国で魔剣を奪われたということで、姫を元に戻すための協力を条件に救援に行ったところ、いろいろな事件に巻き込まれてしまい、姫を元に戻す情報もあまり得られなかった。
その帰り道、氷の魔剣の解除は火の魔剣で出来るんじゃないかと思いつく。
そして火の国マガハラに行くことを提案するも拒否されてしまう。
その翌日カグツチは氷の国からいなくなってしまいました。
カグツチがいなくなった日の前日の夜。
カグツチは城内のロスカの寝室付近に立っていた。
寝室ではベッドにロスカが眠っており、その隣でラムチが布団を敷いてすやすやと爆睡している。
辺りは夜のためすっかり静まり返っており、カグツチは周囲を警戒しながら、考えていた。
(………姫を助けたい。そのためには火の国マガハラに行くのが近道………。いや爺さんの言う通り火の魔剣があるなんて保証はない………。だからといってヘリオローブに姫の解除の情報もあるなんて限らない………。)
カグツチは頭を掻きむしる。
そして小さく深呼吸する。
(落ち着け。爺さんの言ってた通り………急がば回れ。情報が少ないときはまずは情報収集。まずはヘリオローブに行って情報を探る………。これが最善…………。最善だ………。)
カグツチな脳裏に魔剣にやられる前のロスカとの日常を思い浮かべる。
買い物、散歩、雑談に、民との交流。
様々な出来事とその度のロスカの笑顔を思い出し、カグツチは目に涙を浮かべる。
(姫………。申し訳ありません………。必ず元に戻してみせますから………。)
カグツチは流れ落ち滴る涙を拭い警戒を続ける。
ふと周りを見ると小豆色の忍者装束を身に着けた4人がカグツチを囲んでいた。
カグツチは大きく息を吸い込み、大声で叫ぼうとする。
「しーっ。今は夜中で睡眠中ですよ」
「もし大声で叫んだら、姫様はただではすみませんよ。」
「………!」
カグツチは自分を囲う4人を見渡しながら、剣に手をかけて、剣を思い切り振るう。
すると4人は二手に分かれて、左右に跳んで躱す。
カグツチは姫の部屋のドアを守るように背中をピタリとつける。
「どうして城の中に?目的は何ですか?」
「その赤い髪。あなたがカグツチさんですか?」
「………!」
カグツチは驚きの表情を浮かべる。
「………いえ。違います。カグツチは今国を出ております」
忍者装束の1人は顎に手を当てる。
「ほぉ。しかし姫の護衛で火の魔法を使う赤髪の男がカグツチと聞いていたのですが………」
「申し訳ありませんが人違いです。私は魔法は使えません」
「………そうですか。それは大変失礼しました。」
4人は歩いて近づいてくる。
「これは夢ですので。一旦お眠りください。」
あっという間に一人に背後を取られ首を絞められる。
そいつの服に触りカグツチは少し暴れる。
そしてその後少ししてカグツチの首がカクンと落ちる。
「落ちたか?」
「はい。落ちました。夜なので夢と勘違いするでしょう」
一人はカグツチをそっと地面に置く。
そのやり取りをカグツチは聞き耳を立てていた。
(………目的は分からない。だが俺が目的なら姫が狙われることはないだろう。一旦このまま去ってくれれば)
その後4人は集まり談合する。
「これからどうする?」
「うーん。カグツチさんが今は国にいないとなると潜伏になるんですかね?」
「そうだな。しかしあの爺さん。カグツチ何てこの国にはいないって言ってたのに、結局いるんじゃん。」
(爺さん………?ハッセル爺さんのことか?)
「あの爺さんが嘘をついてるか、爺さんだから忘れてるか知らないか」
忍者装束軍団の一人がカグツチをじーっと見つめる。
「この子が嘘をついているか」
首を絞めた一人が話す。
「まぁ先ず潜伏ですかね?」
「………いや。スサノオ様をこの地で長期滞在させるのは避けたいところだ。………にしてもあの爺さん何かしらの理由でカグツチさんを隠したかったんだろうな」
(………爺さんが?何があったんだ?どういうことだ?)
「となると………」
一人が姫の部屋を見る。
「姫を人質に取って、カグツチを連れてこさせるか」
直後首を絞めた男の装束が発火する。
「!?」
周囲が驚いている隙にすぐさま起き上がり、素早く近づき残りの3人の服にもタッチする。
「!?」
そしてその装束を燃やす。
「!?」
カグツチは怒りに満ちた目線で4人を睨みつける。
「姫に手を出すなら絶対に許さない」
4人に向けて剣を向ける。
しかしカグツチは4人の姿を見て驚く。
確かに火は付いたはずなのに、全く燃え上がっておらずむしろ火は消えてしまっている。
周囲には少し燃えた匂いと煙が漂うのみである。
4人の内の一人は笑っている。
「我々は火の国出身ですからね。火の対策はバッチリなんですよ。」
「氷の国には似合わない炎の魔法。やはりあなたがカグツチさんですね」
「………あぁ。私がカグツチです。私が目的なら、姫には手を出すな。」
「とても物分かりがいいですね。じゃあ早速」
「いや。そこからは我が話す」
忍者装束の4人はバッと後ろを振り返る。
すると水色のツンツンの髪の毛をちょんまげにしている、オーラある和鎧の男が立っていた。
「お前たちは下がっていろ。ご苦労だった」
「はい。」
そう言って4人は静かに走り去っていってしまう。
「!」
「安心しろ。この城のものには手は出さんように言ってある。」
和鎧の男は近づいてくる。
カグツチは警戒をやめない。
「警戒は解いていい。そちらの姫君に手を出すつもりはない。」
しかしカグツチは警戒を解かない。
「………それもそうか。部下の無礼すまなかった。」
男は手を挙げて話始める。
「我はスサノオ。スサノオ·マガハラ。マガハラ王国第一王子で、マガハラ武士団の団長をやっている」
「………マガハラ?………あ………。」
カグツチはマガハラにあると推測している、火の魔剣表情を緩ませる。
「………火の魔剣」
「………?」
「マガハラに………火の魔剣はありますか?」
「………あるぞ。火の魔剣ホノハバリ。国王の愛剣だ」
「!」
カグツチは頭を下げる。
「火の魔剣をお貸しいただけないでしょうか?」
「あぁ。それは恐らく我々の頼みを聞けば叶えられる。」
「………?」
スサノオは手を出す。
「マガハラ王国に来てくれ。我々と一緒に。悪いようにはしない。約束する」
真剣な眼差しでカグツチを見据える。
「………分かり」
即答しそうになるがハッとする。
(いや待て。話が良すぎないか?)
「………あなたの身分を証明するものはありますか?」
「………まぁそれもそうか」
スサノオは考える。
そして悲しそうな表情を浮かべて、刀のような剣を抜く。
カグツチは警戒して剣を構えるが、スサノオは手で制止する。
「安心しろ。戦いじゃない。我の魔法を見せてやる。」
そう言ってスサノオは綺麗な太刀筋で剣を振るう。
剣からは青色の光がゆらゆらとメラメラと揺れている。
その光の正体は………。
「………青い………炎?」
剣を止めると、青い炎がメラメラと剣に纏わりつくように燃えているのがよく分かる。
そしてスサノオはその炎を消す。
「………そうだ。我の魔法は………青い炎を出せる。………王族らしく特別な………炎の魔法だ。これでは証明にはならないか?」
「………魔法だけでは分かりません。」
「………まぁそれもそうだな。君の要求を聞こう。それに答える」
「………火の魔剣の力を貸してください」
「………何?」
「火の魔剣を氷の国に持ってきていただくか………いや、国王に来ていただいて力をお貸しください」
「………その心は?」
「………え?」
「………理由と背景を教えてくれ」
「………」
カグツチは葛藤し手を握りしめている。
見ず知らずの男に姫の状態を話してよいものかということに。
「………言えない。でもあなたの指示に従うならそれが条件です。」
「………姫様だな?」
「………は?」
「君は姫様をとても大切に思っている。そのために戦っている。恐らく何か火の魔剣を使って姫に何かをしてあげたい。違うか」
「………」
カグツチは黙り込む。
「すまないが、君の要望に100%応えることはできない。だが早く叶えられるように努力は尽くす。」
「………何を」
「姫もマガハラに来てもらう」
「っ!!!」
カグツチの表情が歪み剣を持ってスサノオに突進する。
しかしそれを素早く躱す。
あまりにも素早い躱しにスサノオを見失ってしまう。
気づくとスサノオはカグツチの真後ろにいた。
「すまないな。」
振り向こうとした時にはカグツチの首に凄まじい衝撃が走り、同時に意識を失ってしまう。
力なく倒れるカグツチを抱き抱えるスサノオ。
スサノオが小さく指パッチンをすると忍者装束の4人がまた現れる。
「スサノオ様」
「そちらの部屋にいる姫様を連れて行く。優しく丁重に扱え。任務完了後にこの国に返す。」
「ハッ!」
そう言って4人は優しくドアを空ける。
そこには姫に加えてラムチも下に布団を敷いて眠っている。
「スサノオ様。使用人もいますがどうされますか?」
「………姫も一人では不安だろう。一緒に連れていく」
「はい。」
そう言ってスサノオと忍者装束の4人はクリオネッタ城から去っていった。




