風の国編29話
国立ヘリオローブ魔法学校。
世界一の魔法学校である。
風の国に向かう道中で出会った、3人の少年が廊下を歩きながら話している。
フォスと呼ばれていた少年が口火を切る、
「いやー。旅行楽しかったな。」
ザグと呼ばれていた少年が返答する。
「そうだな。」
その後もう一人の少年は頷く。
「いやー。今回景色は良かったけど、ほとんど買い物とかはできなかったじゃん?何か謎の置物しか買えなかったし………」
そう言って象のようなキリンのような謎の生物の木彫りを取り出す。
「………お前それ気に入ったのか?」
「うん。何かチグハグな感じが」
「…………そうか」
「だからまた行きたくね?」
もう一人の少年は頷く。
「また行こうな!」
「あぁ」
ザグと呼ばれていた少年はぶっきらぼうに返す。
「しかしあの婆ちゃん達無事に風の国に行けたな?」
「………どうだろうな?」
「いやー。あの手際はヤバかったよな。ゴッドハンドって感じだった。」
もう一人の少年はうんうんと2回頷く。
「あ、そういえば、次の授業って何だっけ?」
「魔法歴史学」
「あー。あの授業の先生とザグ仲いいよな!」
「あぁ。質問はよくしに行ってる」
「流石は優等生!成績10番以内なだけのことはある。何の質問してるんだ?」
「まぁ………色々………」
「ほぉ~。流石。」
頷きを続けていたもう一人の少年は口を開く
「今日は人気の大国の戦乱の話だから。各国の英雄たちが活躍する話。ここの話は好きな人は多い」
「なるほどね。ノウスも確か歴史好きだったっけ」「うん。歴史学大好き」
「いいねいいね。いやー俺も勉強もっと頑張らんとなー」
「ザグもここの歴史が好きなの?」
「………まぁ。まぁまぁかな」
「そっか」
ザグと呼ばれている少年は歩きながら窓から見える街並みを見ていた。
そしてトリトンが持っていた魔剣のことを追想していた。
(あいつが持ってた剣………。間違いなく魔剣だった………。何で魔剣を持ち歩いてた………?あれは多分………水の魔剣………。守秘義務があると言ってたが一体何者だ?チューン王国の何かか?チューン王国のやつが何で魔剣を持ってレアスサイドに?)
ザグと呼ばれている少年は窓を見ながら考え続けている。
そんな小難しい顔をしているザグと呼ばれている少年に気づき、フォスが声をかける。
「ザグ?大丈夫?」
話しかけられ、ハッとして思考を止める。
「………あぁ。大丈夫」
こうして魔法歴史学の教室へと進んでいく。
魔法歴史学の教室に到着し、40人ほどが集まった教室で授業が始まる。
初老の先生が教壇に立つ。
今日の授業は前評判通り大国の戦乱の話。
大国の戦乱がどのような経緯で進んでいったのかを本日は話していった。
普段は寝てる人がかなり多い授業ではあるが、人気の題材ということもあり寝ている人は少なかった。
そして授業が無事に終わった。
授業が終わると、受けていた生徒たちはゆっくりとまばらに教室から出ていった。
そして戻り支度をしている先生と、ザグ達3人だけが教室に残った。
「いやー。中々楽しい授業だった!」
「そうだね。僕も楽しかった」
ザグは机に座ってノートに必死にメモをしていた。
「お、流石は優等生。」
2人は感心してザグを見ている。
そしてメモが終わり、ザグはノートを書く手を止める。
「授業終わったし飯食ってから寮戻ろうぜ!」
「いや………。ちょっと先生に用事あるから先戻ってて。」
「おー。流石は優等生!おっけー!」
2人はグッドマークを手で作ってザグに見せる。
魔法歴史学の先生は教科書などをまとめて教室を出ようとするので急いでザグは向かう。
「先生」
「おー。ザグ君!何だね何だね?」
「………ちょっと質問したいことがあって」
「いいよ。君は本当に勉強熱心だね。」
関心関心の先生は笑顔を浮かべる。
「今回の話って各国同士で争いが止まらず、各地で戦乱が起こっていたというお話ですよね。」
「あぁ。そうだよ。」
「その争いをとめるきっかけになったものって………」
「この先の授業で話そうと思っていたものだが話してあげよう。魔剣だよ」
「魔剣ですか?」
「あぁ。今はこの国の魔剣は王女が使っている。王女様は非常に優秀な魔法使いだ!私の教え子でもあるが、非常に優秀な生徒だった!君も王女様には詳しいんじゃないかい?」
「………そんなことはありません。」
「ハハハ。かつて戦乱に包まれていたこの世を平穏にするために、何者かが各国に強大な力を持つ魔剣を作った渡した。ここまでが教科書通りの定説だな。」
「なるほど。………魔剣は誰が作ったのですか?」
「ふふふ。それはね………」
勿体ぶってためる先生。
「教科書では分からない世界だがね。私には分かるのだよ」
「………」
「私は教鞭を執る傍ら、魔剣の研究を専門でやっている!魔剣の知識であれば私以上に知識が立つやつはこの世にいるとは思えんな。」
自信過剰に高笑いをする先生。
「それで………魔剣の作成者は?」
「あぁ。伝承を片っ端から集めた限り、戦争嫌いの鍛冶屋が思いを込めて作って各国に送った」
「なるほど。その鍛冶屋は何者なのですか?」
「………」
先生は渋い顔をする。
「………先生?」
そして頭を掻きむしる。
「くそ!歴史にはわからないことが多すぎる!あぁ過去に戻りたい!過去に戻って考察が合っているかを確かめてやりたい!!!」
急な発作にザグは驚きを隠せない。
「………先生?」
「………すまない。その鍛冶屋が何故こんな強大な魔剣を作り出せたかは分かっていないんだ。クソ。歴史とは何と蟲惑的なのだ!!!」
「………あの。」
「あぁ………過去に戻りたい!だが私が過去に戻ったら今の輝かしい歴史が変わってしまうぅぅ。あぁそれは悩ましい。美術館のように歴史を窓枠から眺めていたい………。あぁ眺めたい………」
「………他にその人についてわかっていることは?」
「あぁ。戦争嫌いの彼は戦争終結後鍛冶職人になったらしい。」
「………?同じじゃないですか」
「そうなのだ!鍛冶屋も鍛冶職人も変わらん!だからこそ過去に遡ってみたいのだ!当時の定義として鍛冶屋と鍛冶職人は違う意味合いだった可能性もあるからな!あぁ!戻りたい………。いいいいいい!!!」
定期的に発作を起こす先生に少し複雑な表情を浮かべながらもザグは続ける。
「ありがとうございます。………魔剣はどこにあるのでしょうか?」
「あぁ。魔剣は戦乱を起こしていた10の国に送られた。ここも私の研究の成果だがね。10本の魔剣にはそれぞれ属性がある。その属性にちなんだ国とそこから呼ばれるようになっているのだ。我らヘリオローブなら光の国だな。国による保管状況は分からんが水の国チューンは洞窟で保管しているらしい。国家機密だがね!その筋の者と酒を飲んで聞いたのだ!これぞ研究だな!」
「·………」
いいのかよと思いつつ、ザグの脳裏にはトリトンが持っていた水の魔剣がよぎる。
若干の困惑がありつつもザグは続ける。
「そうですか………。各国の魔剣の効果は」
「その属性に因んだ魔法を使える。詳細なところは分からん。それも私の研究だがね!それを模したのか真似たのか、世界中で魔剣に続けとばかりに名剣が生み出された。その中でもあと一歩で魔剣に追いつけるほどの名剣が25本世界に存在する!」
「………そうですか。じゃあすみません。最後に魔剣の使用するための条件は………?」
「あぁ!これも分かっていて条件は………2つだ!これも私の研究によるものだがね!」
「………それは」
「クヴェンダ先生!」
教室の外から声が聞こえる。
その声の主は別の授業である魔法基礎を担当している若い先生であった。
「先生!職員会議!早く来て!」
「あぁ。すまん。ザグ君すまんな!また今度!今度は教授室でじっくり話そう!」
そう言って走って教室から出ていった。
「………」
ザグは脳裏にヘリオローブの王女の姿を思い浮かべる。
綺麗で透き通った白髮に、すべすべの肌、整った顔立ち、そして性格も非常に温和で慈悲深く優しい。
「チッ」
100人いたら100人は好きと答えるだろう王女のことを思いながらザグは舌打ちをする。
「………力が欲しいな。力が」
ザグは魔剣を頭に思い浮かべる。
「あいつを絶対に認めさせてやる」
王女を思いながらそう呟きザグは教室を後にした。




