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風の国編28話

一同は馬車に乗り込み風の国から出発した。

その馬車にはシューとテフヌトも乗りこんでいる。

一旦氷の国に戻り、魔剣の力で街を救えるかを確かめた後に、2人は旅に出るという計画である。

運転はフロマが担当している。

先ほどまで一心不乱にカグツチの匂いを嗅いでいたロスカはすっかり落ち着き、車椅子に座っている。

「………キスくらいすれば良かったのに」

アエリは心底つまらなそうに吐き捨てる。

「しませんよ!ありえません!」

「あーんなに匂い嗅いでたので流石にいいんじゃないですか?」

「いや………流石に姫とその従者がそんなこと………」

「こらこら」

トリトンが諌める。

「まぁひとまず姫の状態はより良くなってきてることには間違いないでしょ!今回のところは一旦それで」

ラムチが手を叩いてその場をまとめる。

その様子をシューとテフヌトが見ていた。

「楽しそうだねー」

カグツチは話をそらすようにシューに声をかける。

「すみません。旅の前に氷の国までお越しいただいて」

「いいよー。旅みたいなもんだしー」

シューはニコリと笑う。

「旅とはどちらまで行かれるのですか?」

「んー?自由に思うがままに?テーちゃんは行きたい所ある?」

「いえ。私は兄様に付いていきます。」

「僭越ながら無計画で大丈夫でしょうか?」

「んー?大丈夫大丈夫!」

手でグッドマークを作るもカグツチは何だか不安は拭えなかった。

「えーっとまずはどちらに行かれるとかは?」

「そうだねー。雷の国に行こうかなー?すごーい最新技術が進んでる街らしいし!」

「なるほど。それはいいですね」

「カグツチさん達はー?」

シューの無邪気な問いかけに、カグツチは悩む。

「えーっと。そうですね。まだ未定かなと」

「ん!思うがままだ!いいね!仲間!」

「………はい。ありがとうございます。」

「いや。しばらくは療養でしょう」

アエリが口を挟む。

「トリトン様が今回すごく危険な目に遭いました。特別作戦部隊副隊長としてしばらくの療養を提案しています。」

「まぁまぁアエリ。」

「どれだけ心配したと思ってるんですか?本当に!しばらくはゆっくりしてください!」

「ははは」

アエリの心配そうな表情にやんわりと笑顔で返すトリトン。

「ちゃんと返事をしてください!」

アエリが怒りトリトンが慌てている。

「しかし。姫様の状態も少しずつ改善してきてるわね。本当にありがとうね。トリトン王子」

「いえいえ。お気になさらず」

ケッ!とアエリは態度悪くそっぽを向く。

ラムチはロスカのことを見ながら話す。

「しかし姫様はおいしいお菓子を食べると何やら回復するみたいね。砂糖に魔法解除の力があるとかかしら?」

「………そうですね………。そこがわからないのですよね」

「そうなのよ。砂糖に期待と思いつつも私特性の他スイーツでも戻らなかったのよねー。」

ラムチは脳内に風の国での滞在時の一件を思い浮かべる。

倒れたリハビリがてら厨房を借りてケーキやクッキーなど様々なスイーツを作り、ロスカに振る舞った。

そしたら少し表示は緩んだものの、特に手を触る、匂いを嗅ぐと言った劇的な変化は見られなかった。

「だから分からないのよねー。国の名物スイーツ)りは美味しさで劣っちゃうなかしら?」

ラムチは悲しそうに頬に手を当てる。

トリトンも顎に手を当て考える。

「それか………姫が今まで食べたことのないスイーツとか?………であればチューン王国のゼリー、レアスサイド王国のケーキを食べて何か変化が出たのにも納得が行くかも………」

「そうかも………あ…………」

ラムチは何かを思い出す。

「その説は有力かもだけど、行きでドライマンゴー食べたわよね?私の記憶が正しければ姫はドライマンゴー食べたことないかも………」

「なるほど………謎ですね。」 

シューもそのやり取りを聞いて、腕を組んでうーんと考えている。

「そうねぇ。まぁ次はヘリオローブに行くのがいいかしら?」

シューとテフヌト以外の面々は風の国へ向かう途中で出会った3人の少年のことを思い出す。

「縁もできたし!魔法大国だし!スイーツもあるだろうし!そこが一番確実じゃないかしら?」

「確かに。それはそうかも」

「トリトン様」

ゴゴゴゴゴとアエリが圧をかける。

行かせませんよという無言の厚である。

カグツチは今までのやり取りを聞いて考える

(確かに………。魔法の知識が一番深いヘリオローブに行くのが一番いいかも………。少しでも早く姫を元に戻したい。………ヘリオローブなら仮に魔剣じゃなくても魔法で………。氷の魔剣を打ち消す火の魔法が………)

ハッとカグツチは何かに気づく。

(確実………?いや………。氷の魔剣の力は強大。それの力を打ち消すのにより確実なのは………)

何かがカグツチの脳裏に遠くにある国がよぎる。

「あっ」

カグツチはつい声を上げてしまい一同は注目する。

「カグツチ?どうしたの?」

「………一つ思いついたことがあって………。爺さんには黙ってて貰えますか………?」

「?」

「爺さんって誰ー?」

「あっ。爺さんっていうのは国にハッセルっていう育ての親がいまして。」

「へー」

「カグツチ」

トリトンは真面目な表情を浮かべてカグツチを見つめる。

「カグツチの意志は尊重する。でもカグツチの身に危険なことなら止めるから」

「そうよ。カグツチ。爺さんに黙っててってことは多分危ないことでしょ?」

ラムチとトリトンは真剣な眼差しでカグツチを見つめる。

「………」

カグツチは沈黙する。

「ごめん。もしかしたら止めることになっちゃうかもだけど。そこから一緒に今後できることも考えられると思うから話してほしい」

トリトンは真剣な眼差しでカグツチを見つめ続けている。

その目線に一旦目を深く瞑り、そして明けたあとに、喋り始める。

「………火の国マガハラに一人で行こうと思ってました。」

「………そっか。ありがとう。話してくれて」

トリトンは頷く。

「火の国ならきっと火の魔剣があるはずです。きっと!だからそこに行くのが確実かと………」

「………確かに。カグツチは一人で行くつもりだった?」

「………はい」

「………よし。俺も一緒に行くよ。戻ったらハッセルさんに相談してみよう!」

「!」

アエリがすかさず口を挟む。

「トリトン様!?マガハラはチューン王国とも国交のない国です!流石に危険です!」

「一旦ハッセルさんに相談してからさ」

「駄目です!危険です!今回の一件で大丈夫と言ったのに危険だったことをもうお忘れですか?」

アエリは目に涙を浮かべる。

「アエリ………」

「んー。俺が行こうかー?」

シューがびっくりするほど軽く提案する。

えっ?と一瞬場の空気が固まる。

「旅の一環でー。着いてったげるー」

テフヌトもシューのコメントの後に頷く。

「え………?」

カグツチが困惑する。

「それなら安心ー?」

アエリは涙を服の袖で拭う。

「はい。それなら問題ありません」

「………いいんですか?」

「うん。迷惑かけちゃったしー」

「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」

カグツチはシューの方を向いて何度も何度も頭を下げた。

「俺もついてくよ。魔剣使いが2人いれば安心でしょ?」

「トリトン様!!!」

「王子………!本当にありがとうございます!ありがとうございます!この恩は何かで絶対に………」

アエリの怒りを気にせずに、カグツチはトリトンの方を向いて頭をただひたすらに下げている。

その光景を見てラムチは憂いた表情を浮かべていた。

そして口を開く。

「そうね。まぁまずは戻ってジジイに相談してみましょうか。ジジイが否定したらヘリオローブ。許可が降りればマガハラって感じにしましょうか」

「………はい。分かりました。」

こうして馬車はクリオネッタ王国への帰路をどんどんと進んでいく。


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