風の国編27話
風の国の国王が意識不明であること、そしてその代理にファサードがなるということが国民に伝えられた。
国民はその人事に猛反発。
しかし不満のある者たちの家を一軒一軒回って、不満を聞いていく姿に少しずつ民の怒りも収まっていった。
やつれた顔で要望を聞いて、それを実現することで今回の騒動による被害の補填は概ね完了した。
民に寄り添った被害の補填に一同は満足したが、ある人が見るにそれは民に寄り添うと言うよりは、何か別の、恐怖心に囚われているような行動に見えると話していた。
風の国の王子と姫が旅に出ることも主に兵士たちから反論があったものの、ファサード必死の説得で何とか事なきを得た。
そんなこんなで3日が経ち、傷も癒えた一同は風の国を出発しようとしていた。
その出発前、水の国から来た一同と、シューとテフヌトは風の国を歩いていた。 シューとテフヌトは騒がれないようにフードを深く被っている。
ラムチがウキウキしている。
「いやー。観光できてなかったから!出る前に観光!」
出店が並ぶ通りを進んでいるが、かなり栄えており、そこら中で取引の声が聞こえてくる。
「皆さんは食べたいものあるー?」
「あ!スイーツ!スイーツ食べたい!」
ラムチが食い気味に話す!
「スイーツ!いいですね!出る前にスイーツ食べましょ!」
無邪気にシューは話している。
ラムチは目をキラつかせ、アエリも期待の眼差しを横で向けている。
「レアスサイドは何が美味しいのですか?」
「んー。色々美味しいけど………テーちゃん!」
「はい。お兄様。レアスサイドに来たならケーキがおすすめです」
「ケーキ!それは一体どんな?」
「はい。先祖代々続くレシピで作られているらしく、昔からレアスサイドスイーツ圧倒的不動のナンバーワンです」
「おー!それで特徴は?」
「はい。ハーブにスパイス、洋酒などさまざまなものがブレンドされた絶品ケーキで、味はさることながら、香りが本当にいいんですよ。私達もよく食べています。」
「ねー」
シューとテフヌトが仲良さそうに掛け合いをしている。
「わぁ!良いですね!行きましょう!」
こうして国一番の老舗のケーキ屋に足を運ぶ。
一同は持ち帰りで注文し、馬車の中で食べることを選択した。
そうして購入して急いで馬車へと入る。
そしてケーキを空ける。
ケーキを空けた瞬間様々なお酒やハーブ、スパイスが調和して非常にいい甘い香りが漂ってくる。
「わぁー美味しそう!」
「いただきまーす!」
一同は食べ始めた。
「んー!美味しいー!」
ラムチはほっぺを押さえて美味しそうに食べている。
アエリは無言でパクパク、トリトン、シュー、フロマ、テフヌトの4人は幸せそうに微笑みながらパクパク食べていた。
カグツチ小さく一口サイズに切って、ロスカの口元へと運ぶ。
口元へと運ぶとロスカが口を開き、一口サイズのケーキを入れてあげる。
その姿をラムチは食べながら凝視していた。
ロスカは咀嚼して飲み込む。
すると少し表情が柔らかくなったように見える。
「!!!姫!」
カグツチは嬉しそうに二口目を口元へ運んでいく。
「やっぱり味は分かるのね!」
ラムチも嬉しそうに微笑んでいる。
「兄様。氷の国の姫君は一体?」
テフヌトがシューに話しかける。
「んー。氷の魔剣で意思疎通が取れない状態みたいー」
「なるほど。大変なのですね」
「あ。そうだ。忘れてた」
シューの呟きを尻目にカグツチが二口目を口元に近づけると、ふんふんとロスカの鼻が匂いを嗅ぐように動いているのが分かる。
「!」
「!?」
カグツチとラムチが驚く。
トリトン達水の国メンバーもそれを見て驚く。
「あれ?もしかして匂いが!?」
「凄い!これがスイーツの力!」
「分かるのですか?姫!こちらにたくさんありますよ!」
カグツチは涙を流しながらケーキをどんどん運んでいく。
それをどんどん食べていくロスカ。
カグツチは自分の分もロスカの口にどんどんと運んでいった。
そうして一同はケーキを食べ終わる。
「いやー。美味しかった!」
「それにしても姫。何で匂いが分かるように」
「甘いは正義ってことね!」
「カグツチ!少しずつ進んでいってるよ!」
トリトンは嬉しそうにカグツチの肩を組む。
「はい!ありがとうございます!」
カグツチの歪みない返答に顔をうつむかせる。
「………ごめん。今回も危険に巻き込んじゃった。アエリとラムチさんも」
「いーのよ!気にしないで!私のスタミナがなかっただけですから!」
「そうですよ。そこの姫のために落ち込んでやることないですよ」
アエリのコメントにラムチはえー?とちょっとだけ引いた表情を見せる。
「ねえねえ」
シューは唐突に口火を切る。
「ごめん。忘れてたんだけど、ロスカ姫に魔剣が聞くか試してみないとだね。」
「!!!はい。お願いします」
トリトンはカグツチの方から離れ、シューは魔剣をロスカに向ける。
「何かが氷漬けにされてるんだよね?」
「はい。そうです」
「おっけー。じゃあ………えい!」
そう言うとロスカの顔面に強風が直撃し続ける。
そうすることで髪の毛がボサボサに乱れてしまう。
「姫えええええ!!!!」
カグツチは姫へと駆け寄り、アエリは口を抑えて笑いをこらえている。
カグツチはロスカの前でオロオロする。
「あー。何かごめん。」
「………いえ。ありがとうございます。」
その時近づいていたロスカの鼻がスンスンと動き始める。
そして近くにあるカグツチの体に顔をくっつけてスンスンと匂いを嗅ぎ続けている。
「………!?」
少しの間の後カグツチが赤面する。
「ちょ!?姫!?何を!?」
トリトン、アエリ、ラムチ、フロマはあらあらと微笑ましそうにその光景を眺める。
そしてロスカは前のめりになってカグツチの体を掴み匂いを嗅ぎ続けている。
カグツチはそれにされるがままとなり押し倒されるような体勢となる。
「あー。そのままキスしましょう。もとに戻るかもしれませんよ」
アエリが野次を飛ばして煽っていく。
ロスカはカグツチの身体をペタペタと触りながら、身体中の匂いをスンスンと嗅ぎ続け、カグツチは赤面したまま石像のように固まっている。
「んー。これは微笑ましいですね。ラムチさん」
「えぇ。とても微笑ましい」
トリトン、ラムチ、フロマは変わらず小動物を見るような目つきで微笑ましそうに見学している。
そしてひとしきり匂いを嗅ぐとロスカの目から涙が流れ落ちる。
「!?」
一同は驚く。
「あ!姫?すみません!臭かったですか?すみません。毎日風呂には入ってますが………」
しかしその後も泣きながら、ペタペタと触りつつ、匂い嗅ぎ続ける
「姫………?お声は聞こえておりますか………?」
カグツチの呼びかけ、ロスカは反応せずひたすらに匂いを嗅ぎ続けている。
「いい匂いだけど、声は聞こえてないみたいね」
「姫…………」
赤面しつつも、カグツチはロスカがどんな状態なのか思いに馳せていた。
「んー。どゆこと?」
「さぁ?」
その光景を見て風の国の2人は困惑していた。
ロスカの匂い嗅ぎはその後しばらくは続いた。




