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風の国編26話

一旦市民の騒乱が落ち着いた………というより追い払った後、怪我人も多数あったことから、カグツチ達はしばらくレアスサイドに滞在することになる。

その後市民たちはこれまで通りの商売を再開していくことでまた商売国家としての姿を少しずつではあるが取り戻していった。

補填など一抹の不安は残っていたが少しずつ市民の間には元の生活が戻りつつあった。

パズズの魔法により倒れたアエリとラムチは快方に。

その他ラグナロクの3人にやられた兵士たちも死人はなく、少しずつ回復していった。

今回の首謀者であるファサードについては一旦は地下牢に投獄。

国王がこのまま目覚めなかったら覚悟してねというシューからの申告にかなり恐怖を抱いていた。

その協力者であるファサードについては療養中で未だ意識を取り戻していない。

もう一人の協力者であったハワーは騒動後正式にカグツチ達一同とシュー達王族に謝罪。

アエリの猛反発はありながらも、そこまで大きな被害は起こしていなかったことから許しを得ることになる。

そして国王についても未だ意識を取り戻していなかった。

ラグナロクに失神させられただけのテフヌトについては外傷はなく、玉座の間の一件の後すぐに意識を取り戻した。

そして国王の現状に涙した。

一方今回の件の被害の半分以上を出していたラグナロク3人衆はというと。


「………いない?」

トリトンは風の国の兵士は療養室内で話していた。

「………はい。3人いたかと思うのですが、あの後兵士一同で探したものの………」

「………そうですか」

3人衆については、騒乱の後忽然と姿を消していた。多数の兵士で城中を探し回ったが、そこにはいなかった。

一抹の不安を抱えながらも一同は逃げたという結論を置いた。


そして1週間後。

パズズにやられたアエリとラムチはすっかり動けるようになる。

そして国王が眠る病室にて、レアスサイドに来た一同とシューとテフヌトが見舞いに来ていた。

シューとテフヌトは神妙な面持ちである。

近くにいた医師が声をかける。

「治療は施しました………が意識を取り戻しませんね………。」

医師が申し訳なさそうに声をかける。

「んーん。ありがと。」

シューとテフヌトはペコリと挨拶する。

「さーてと。向かおっか。」

「向かう………とは?」

トリトンが疑問を投げかける。

「尻ぬぐいー!」

そう言ってシューは歩き出した。

一同はついていく。

それなりな距離を歩いた先に向かっているのは、ファサードが投獄されている地下牢である。

地下牢に入ると若干の湿気を感じる。

そして牢屋を見ると、ファサードは項垂れて体育座りで入っていた。

シューは声をかける。

「おはよー」

シューの声に対してファサードは明るく反応する。

そして立ち上がり手でごまをするような動きをする。

「これはこれはシュー様!ご機嫌いかがでしょうか?」

「うーん。父さん目覚めないね。」

「!」

ファサードから冷や汗が噴き出る。

「いやいや!そんな!きっとすぐ目覚めますよ!」

「うーん。そろそろかなー?」

ファサードの過去が少し青ざめる。

「そろそろとは何を?」

「国王が目覚めるまでの時間」

「あー。きっともうすぐ目覚めますよ!大丈夫です!」

1週間前までの強気が嘘のようにゴマをすり続ける。

「いや。目覚めを待つ時間。そろそろかなーって思って」

ファサードの顔がみるみる青ざめていく。

「いやいやいや!きっともうすぐ目覚めますよ!それに私はあなた方のお役にきっと立ってみせます!」

ファサードは車椅子のロスカに目線を向ける。

「そうだ!姫様の魔法解除に全力を尽くします!それならどうです?ね?」

カグツチにも目線を向けるが、カグツチの言葉は厳しいものであった。

「お断りします。」

ファサードの顔がさらに青くなる。

「あのー。えっとー。あの真面目な兵は許したのでしょう?私はあいつよりも役に立てますよ!」

「真面目な兵って誰?」

「えーっと」

ファサードはハワーの名前をこんな時でも思い出す事はできなかった。

さらにさらに青白くなっていく。

「じゃあそろそろかな」

「いやいやいや!どうか!群衆に差し出すのだけはご勘弁を!どうか!」

ファサードは土下座をする。

一同は処刑するのかと思っている。

しかしその中でシューは首を傾げていた。

「えー?差し出すって?」

ぽかんと一瞬空気が止まる。

カグツチが口を挟む。

「えっと。あの人を処刑するのでは?」

「んー?しないよー」

誰もが処刑をするのだろうと思っていた手前、声を出して驚く。

反面ファサードの顔色は少しずつではあるが元の色に戻っていった。

「シュー王子!?一体?」

そして更にごまをするファサード。

「流石は第一王子見る目がありますね!お力になれることなら何でも力になります。」

「んー。じゃあお願いするねー」

「はい。なんなりと」

「この国の統治を任せた」

……………………………

唐突な発言にファサード含めて唖然とし、沈黙が包む。

困惑したファサードがゆっくりと続ける。

「えーっと。もう一度お願いしても?」

「うん。この国の統治をよろしく」

聞き間違いでないことを把握した一同がいやいやいや!と全力で詰め寄る。

テフヌトだけが落ち着いていた。

「いやいやいや!一度裏切った人ですよ!さすがにそれは」

フロマが驚き否定する、

「そうです!流石に危険すぎるのでは?」

普段は噛み付いてばかりのアエリもここぞとばかりに反論する。

ワーワーと騒がしくなっている手前ファサードはほくそ笑んでいる。

(この王族何を考えてるんだ?まぁいい。俺にとっても願ったり叶ったりだ。王の権限で王族の排除を進めてやろう。くくく。)

「考えを聞いてもよろしいですか?」

トリトンが聞くとシューも回答する。

「んー。今国が大変な状況だしさー。一応大臣やってたし、その人に統治やらせたほうがよくなーい?」

「いや………しかし………この人は一度国を裏切って………」

トリトンの反論を聞いてファサードがすかさず間に入る。

「いやいやいや!私今回の件で深く反省し心を入れ替えました!国王亡き今その役目しっかりと果たさせていただきます!」

「まだ死んでないんだけどー?」

少し怒りのこもった声をシューが放つと、ファサードが慌てる。

「いやいやいや。申し訳ありません。そういう意図では」

カグツチも口を挟む。

「シュー王子。国王が目覚めていない間はシュー王子が国を収めるのがよろしいのではないでしょうか?トリトン王子もおっしゃる通り一度裏切ったものを信用するのは大変かと。」

「んー。国を治めるまだまだ実力不足だから。父さんが治めてる国や民が困るのは避けたいしー」

「しかしそれにしても人選が」

「僕たちは旅に出て修行するー」

えーっ!?と周囲が困惑の声を上げる。

「え?いや?え?」

「だから。色んな国に行って色々学んでこようかなーって。テーちゃんと一緒に」

「はい。一緒に。」

テフヌトも口を開く。

「あ、風の魔剣は持ってくから大丈夫!」

「は?」

ファサードが困惑の連続で固まる。

他のメンバーも困惑の連続で固まり言葉を失ってしまう。

「いや………防衛の要の魔剣を持ってくのは。」

ファサードの言葉に水の魔剣を持ち出しているトリトンがバツが悪そうに苦笑しながら顔を背ける。

「えー。やだー。魔剣を渡すのはこわーい」

「そこは怖いんですか………」

アエリが少し呆れ気味に話す。

(何だこいつ。全く理解できない。………だがこの国の統治を任せられるというのは十分妥結点か………)

「………分かりました。その役割誠心誠意果たさせていただきます」

「うん。重税とか営業停止の後始末もよろしくね」

「………はい!実施させていただきます」

(まぁ少し経てば忘れるだろう)

しめしめと内心笑うファサード。

「すべての人が幸せにするように統治してね」

「………はい?」

ファサードは本日数回目の思考停止に陥る。

周囲もついていけずにぽかんと見ていた。

「もし出来なかったら怒るから」

「いやいやいやいやいや!無理ですよ!?人の幸福は他の誰かの不幸であることもあるんですよ!?全員を幸せにだなんてそんな!」

「出来るよね?父さんを裏切ったんだから」

ファサードは苦い顔をする。

(所詮は口約束。まぁいいだろう。世間知らずのガキだ)

「………分かりました」

「もし戻った時に父さんが死んでるか、誰か一人でも不満が出たらこの国滅ぼすから」

「………は?」

テフヌト以外のその場にいるものの思考はもはや回っていなかった。

「風でこの国滅ぼしてでも君を殺す。もしいないように見えたらこの世界を滅ぼす。滅ぼしてでも殺す。あ、ここにいるみんなと風の国のみんなは事前に助けるから安心してね!」

「ちょっと待って!水の国は?氷の国は?」

「あー。じゃあそこも許す。でも出来ないならこんな世界滅ぼしちゃうから」

無邪気に純粋にシューはコメントする。

もはや一同はコメントをすることをやめていた。

そしてファサードはその無茶苦茶ぶりに平常に戻っていた顔色がみるみる青く戻っていった。

「出来るよね?」

「は、はい。………善処します」

オクシジーンは消え入りそうな声で了承した。

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