風の国編24話
汚職の事件は国中を騒がせた。
本人たちは否定していたが、何故か数々の証拠が明らかになり、2人は失意のまま国外追放となった。
信頼されていただけにレアスサイド師団への信頼の失墜は激しいものとなった。
その中で今までの団長自らがその近親者を選ぶようにしていた文化も問題視され、次期団長は試験的に兵士たちが多数決で使命をすることになる。
兵士たちはこの動乱を抜けられるのは信頼と実績のオクシジーンしかいないと、過半数を大きく超えるメンバーがオクシジーンが指名した。
誰もがその就任を喜んでいた。
ただ一人を除いて。
その除いた一人であるオクシジーンは心穏やかではない状態で大臣室に入り、大臣に詰め寄る。
大臣は変わらず張り付いた笑顔で拍手を行っている。
「団長就任おめでとうございます!兵士たちの満場一致で決まったとのことで!よかったです!」
オクシジーンは表情を少し歪めながら話す
「………あなたが何か工作を………!?」
「はい?」
「前団長と現団長に何か工作を?」
「さぁ?まさかあんなことをやってるとは!やっぱり近親者で団長を選んでいくとこういう事が起きるのですね。」
「団長達はやってない!」
「えぇー?証拠も出てるじゃないですかー。」
白々しくファサードは話す。
「ふざけるな。」
オクシジーンは怒りをあらわにする。
「こんなことで団長になっても意味がない。」
「まぁまぁ。兵士たちに選んでもらったのはあなたの実力ですよ。それに市民も近親者を選ぶことは問題視されていましたからそれが偶然今だったと言うだけですよ」
「裏工作で団長になるなど」
「では団長を辞退しますか?」
「………はい!こんなことで団長になっても意味はない!」
「ふーん。いいんですか?今のこの国の大変な状況の中で、逃げた団長として一生傷が残りますよ」
「間違いだったと告発すればいい。」
「いいんですか?擁護は勝手ですけど、この時間に対する民の目線は非常に厳しい。証拠が嘘だって確証はできるのですか?今の証拠をひっくり返すにはよほどの物が必要ですよ。」
「それは………」
オクシジーンは話が詰まってしまう。
「それにね」
ファサードは話し続ける。
「今の風潮的にね、兵士側の人間が不祥事を起こした兵士を擁護するとなると、あなたへの批判は凄いことになる。加えてあなたのお父様の栄誉も傷ついちゃいますよ。」
「………」
オクシジーンが睨みつける。
「仮に証拠が明らかになってオープンしたとて、もうどこかに行ってしまった人を連れ戻せますか?世界は広いですよ」
「………」
「それにね。世間はあることないことを本当のように話しますから、たぶん推測としてこう出ちゃいますよ。英雄の息子オクシジーン。裏工作で大臣になるが、良心の呵責で裏工作を告発。となればあなたもあなたのお父様だって実行犯として国賊として国から追放されるかもしれませんよ。それでいいですか。」
その言葉を聞きオクシジーンは自問自答しながら俯く。
自分が意図したことではないが、引き金を引いてしまった。
そのことは自分だけでなく父の栄誉すらも傷つけてしまう。
自分のせいで父の輝かしい栄光が汚されてしまうのはオクシジーンとしても何としても避けたかった。
それに成り行きは望んでいたものではないが、ファサードのおかげで地位のあるポジションに現在ついてしまっている。
しかもそれは自分が内心忌み嫌っていた実力先行ではない選び方によってだ。
ここまでのやり取りからファサードが何かしらの工作をしていることは自明。
だがそれを証明する手立てはない。
不本意ではない義理立てと憧れの姿を守るためにオクシジーンは従わざるを得なかった。
「………分かりました。団長をやらせていただきます」
「はい!これからもよろしくお願いしますね!あなたが私に従わない場合はどうなるか分かっていますね?国王よりも私のほうが上と覚えておいてくださいね。」
「………はい」
「あなたの魔法は非常に協力だ。水を一瞬で消してしまう魔法。特に水の国との戦いにおいて役に立つでしょう」
「!」
国との戦いというワードに驚きの表情を浮かべる。
「何ですか?驚いたような顔ですね。私はこの国をより大きくしたいのです。」
黒い笑みを浮かべるファサード。
「今の国王を殺してね」
一瞬驚くもすぐに諦めたような察したような表情を浮かべる。
父の姿を見て国のため、国王のために全てを捧げる兵士像を持っていたオクシジーンにとって、一定個人の私利私欲のために忠義を尽くすのは、それはともかくあまりにも屈辱的で冒涜であった。
しかし自分の引き金によって父の栄誉に傷がつくことは、屈辱や冒涜よりも何よりも大きかった。
こうしてオクシジーンは国王ではなくファサードに従い暗躍を続けていくこととなる。
(あれ?俺は何だ今こんなことを思い出して)
スローモーションに近づいてくる樹の実を観ながら思考する。
(これは………走馬灯か………)
そう考えているただけている間にも着々と樹の実は近づいていく
オクシジーンは目を瞑る。
(罰なのかもしれない。兵士としての義を貫けなかった。俺自身の………)
そして樹の実が顔の直前まで到達する。
その刹那オクシジーンは前々大臣、前大臣の顔が浮かぶ。
(本当に申し訳ありません。私の責任です。謝っても謝りきれません。本当に申し訳ありません)
続けて親の顔が思い浮かぶ。
(………ごめん。親父に憧れてたけど、親父みたいな兵士にはなれなかったよ。ごめん)
樹の実に光が灯る。
水は酸素と水素という物質で構成されている。
これらの物質の特徴として酸素は非常に燃えやすく、水素もまた非常に燃えやすい。
そしてオクシジーンの魔法は水を一瞬にして無くす魔法であったが、それで正味やっているのは水を酸素と水素に分解をすることである。
トリトンが作り出した雨をことごとく酸素と水素にして防いできたオクシジーン周辺には当然、酸素と水素が充満している。
そんな中でトリトンが投げた樹の実に、カグツチは火を付けた。
そうなると当然待っているのは。
樹の実に火がつく。
するとドカーンという非常に大きな炸裂音が響き、辺りを爆風が包む。
カグツチとトリトンの2人は爆風に揺られながらも必死に立っていた。
そしてオクシジーンはというと爆発に直撃し大きく吹き飛ばされ、壁に直撃する。
爆発が終わるとプスプスと軽く焦げた状態で仰向けに倒れ込んでしまっている。
そしてその爆風の衝撃により玉座の扉も破壊された。
爆風が止み2人は顔を上げる。
「あ………」
「え………」
目に入ってきた光景にカグツチとトリトンの2人は絶句する。
そして2人は顔を見合わせる。
「いや………なんで………こんな威力今まで………」
しかしすぐにハッと2人は我に返る。
「ハワーさん!オクシジーンさんの介抱を!」
トリトンの呼びかけにより小部屋から顔をひょこりと出して見ていたハワーがオクシジーンへと駆け寄る。
「オクシジーンさん!大丈夫ですか?」
「フロマは姫たちの防衛を!俺達は玉座に突入する!」
「私も姫の護衛を!」
俺達というトリトンのワードを気にせずに、カグツチはロスカ達が入っていった小部屋へと一目散に走っていく。
そしてトリトンは警戒しながら単騎で玉座の間に突入する。
吹き飛んだ扉を越えて中に入る。
するとそこにいたのは爆風に驚いてこっちを向くファサード。
そしてファサードのすぐ下に転がっているテフヌト
最後にファサードが持つ風の魔剣に体を貫かれた国王の姿であった。




