風の国編22話
玉座にて風の国の国王とテフヌトを人質取ったファサードが見つめ合っている。
そしてファサードはプルプルと震えていた。
「………教えたぞ。娘を解放してくれ」
「………ふざけんな」
ファサードは小声で呟く。
「ふざけんな!!!」
ファサードは激昂し表情を怒りで歪める。
そんなファサードに哀れみの表情を持って見つめる国王。
「そんなの!そんなの!不公平じゃないか!」
「………私はお前を優秀な大臣だと思ってる。」
「優秀だろうが力がないと駄目なんだよ!圧倒的なゲームチェンジャーが!」
「それに魔剣の有無が全てではない。」
「待ってるものはいいな!上から目線で語れて!選ばれし者はいいな!」
国王は複雑な表情を浮かべ、ファサードを見つめる。
「………まだ引き返せる。どうかこれからも風の国で私の下でこの国に貢献してくれないか?」
「ふざけんなよ!ナチュラルな上から目線!なんでお前が上からなんだよ!」
「お前の力が必要なんだ」
「ふざけんな!なんで俺が下に従わなきゃならねえんだよ!魔剣という力を得たのに使えないなんて!何で………!」
ファサードは魔剣を振り上げる。
「もういい。殺してやる」
「!話が違う!」
「私からしたら魔剣が使えないのが話し違いなんだよ!」
国王はファサードに向けて全速力で進んでいく。
その間に魔剣がテフヌトに向けて振り下ろされていった。
同刻カグツチ達は玉座の前に繋がる廊下まで到着していた。
「良かった!玉座は真っすぐです!迷わず来れた!」
ハワーが少し喜んでいる
「ここには見覚えある!行くときに通った!」
「はい!」
玉座に一同は走って進んでいく。
進んでいく最中前方に走ってきている人影を見つける。
それをよく見るとオクシジーンが剣を抜いて走ってきていた。
カグツチは押していたロスカの車椅子を止め、ロスカの前に仁王立ちして剣を構える。
同じく隣にいたトリトンも剣を構える。
オクシジーンはみるみる近づいていき、距離は縮まっていく。
剣が届く距離になったところで、オクシジーンは大剣を車椅子のロスカ目掛けて振りかぶる。
それをカグツチとトリトンが剣を出して防ぐ。
そして鍔迫り合いの中で2人が剣を押し返すと、オクシジーンは後ろへと下がる。
そして玉座の入口の前に鎮座し、門番のごとく風格を見せる。
緊張感が走る。
「………オクシジーンさん。」
トリトンが口火を切る。
「通していただけないでしょうか?」
「………それは出来ませんね。この場所の防衛が任務ですから」
オクシジーンはハワーに目線を向ける。
「ハワー。なぜお前がそちら側についているんだ。」
「………」
無言で気まずそうに目を逸らすハワー。
カグツチはロスカの状態をこまめに見ている。
そしてトリトンと話す。
「どうしますか?私は皆さんを守ります。シュー王子を待ちますか?」
「………強行突破かな」
「………分かりました。他の皆さんは私がお守りします。」
「………カグツチ。」
「はい」
トリトンは真剣に話す。
「俺と一緒にオクシジーンさんと戦ってほしい。」
「え?」
カグツチはポカンとする。
「その場合姫………いや………皆さんの護衛は?」
「ハワーさんとフロマに任せたい。ハワーさんは手の内がバレてる可能性あり、フロマの魔法よりカグツチの魔法の方が戦闘に向くと思うから」
話している中でオクシジーンが迫る。
そして再びオクシジーンが剣をロスカ目掛けて振るうのを2人で受け止める。
「ごめん」
そう呟いた後に、トリトンは大声を上げる。
「フロマとハワーは非戦闘員の護衛を!カグツチと、俺でこの人を何とかする!」
「ちょっ!」
「分かりました!」
そう言うとアエリを担ぎつつ、ロスカの車椅子を押し、近くの部屋に入っていった。
ハワーもラムチを抱えたまま近くの部屋へと避難した。
「………2人で私を倒せると?」
「はい!」
フフッと笑うオクシジーンに対して、カグツチは気が気ではなかった。
カグツチはロスカたちが入っていった後ろの小部屋の方に意識を向ける。
(ヤバい。姫は大丈夫か?流石に自分がそばについていないのはマズイ。いくら水の国の人がついてるとはいえ、一度裏切ったハワーさんがいるんじゃ危険すぎる。)
思慮にふけっているとオクシジーンから声をかけられる。
「戦闘中に雑念ですか?」
オクシジーンは一旦後ろに下がった後に剣を突き出す。
猛スピードの剣を躱しきることができずに、カグツチの頬に剣が掠める。
カグツチの頬から少しずつ血が流れていく。
「カグツチ!」
トリトンがカグツチの前に立ち、オクシジーンに剣を振るう。
オクシジーンはそれを躱して後ろに下がる。
「大丈夫?」
「………はい。すみません。」
そんな姿を見てオクシジーンが口を開く。
「もしかしてロスカ姫ですか?」
「!!」
「カグツチ様は姫の護衛でしたもんね。それは気になるでしょう。しかしあなたが倒れたら私は真っ先に姫を狙いに行きますよ。」
「!!」
「大臣は姫のことを気に入られているようですから」
「………」
カグツチの心に火が灯る。
「王子。早く倒しましょう。」
暗い怒りのこもった声でトリトンに呼びかける。
「オーケー!」
トリトンがそう言うと、トリトンはオクシジーンの頭上から雨を降らせる。
冷たい雨無数の水滴がオクシジーンに降り注ぐも、オクシジーンに当たる直前でその水滴は無くなってしまう。
その光景に驚く2人。
「なっ!」
「水が………」
「トリトン王子は水の魔法使いですね。しか私に水は通じませんよ。」
「くっ!」
トリトンが策を練っている間、カグツチはきのみを取り出すために自分のポケットに手を入れようとする。
しかしそれを見てオクシジーンが詰め寄ってくる。
そして剣を素早る振るい、ポケットを立てにきり落とした。
ドバッーっと溜まっていた樹の実が下に落ちて飛び散っていく。
「あっ」
ポケットを落とした体勢そのままに切り返して剣を振るうオクシジーン。
そして連続攻撃が流れる風のように繰り出される。
何とか防いでいくものの、カグツチの服は所々に切りが生まれていく。
トリトンが頭上から再び雨を降らせた状態で襲いかかるも、雨はやはり消えて、剣はあっさり受け止められてしまう。
オクシジーンは視線を軽く下に向ける。
「おっと。魔法の道具ですかね。」
そして樹の実の存在を目視した後に樹の実から離れるために後ろに下がる。
オクシジーンは警戒を続けている。
(この人。相当の剣の腕だ。おそらく俺よりもトリトン王子よりも数段上。戦闘スキルも高い。これが風の国一番の実力者)
カグツチは下を見る。
下には転がった樹の実が大量にある。
(拾ったら相手に詰め寄られる。でも拾わないでトラップにしても………これだけきのみが密集していれば多分1回きりだ。)
「カグツチ」
トリトンが話しかける。
「挟み撃ちにしよう」
「………分かりました」
そう言うと今度は2人がオクシジーン目掛けて走り出す。
2人が手に足と異なる方向を狙って剣を振るうが、それを素早く捌いていく。
頭上からは雨は降り続けているものの、オクシジーンに当たる前に消え続けてしまっている。
2人は攻撃を続けるも、捌き続けられてしまっている。
そして剣の攻防の最中、隙を見つけて、トリトンはオクシジーンの横を抜けて後ろに回った。
こうしてオクシジーンを挟むような状況が完成した。
後ろからトリトンは剣で斬りかかるも、横目でトリトンの存在を確認しているオクシジーンに防がれる。
防がれたタイミングで再度カグツチは剣を振るうもそれはまたもあっさりと受け止められる。
そのように攻撃をどんどんとされていくも表情を変えずに冷静にさばき続けている。
むしろカウンター攻撃を的確にしていくことで、2人の身体に切傷が少しずつ増えていく。
(この人………目がいくつあるんだよ)
(強い………。水の国の騎士団長くらいだ………)
相手の攻撃が少し速くなってきたため、一旦距離を取る2人。
カグツチが思考を回す。
(どうする?剣の腕は相当。成功率では勝てない………しかこっちは樹の実が無くなった………。)
後ろには大量の樹の実が転がってしまっている。
(自分を燃やす………?いや相手は水を無効にするんだ。それに砂もない。となると火を消すのは至難の業………。樹の実を持ってない以上奇襲も不可………。樹の実があれば………どうすれば………あっ)
カグツチはトリトンたちが塔に入る前のあるやりとりを思い出す。
同じくしてトリトンは思考を回す。
(なぜか水が効かない。雨が当たる直前で消えてしまう。俺みたいに温度を上げている訳ではなさそう。となると一体何だ?………剣の腕で戦おうにも二人がかりで有効打も当てられてない現状を考えれば……·…。となると奇襲………でもカグツチの魔法で使えるものなんて…………あ)
トリトンは何かを思い出し、ポケットに手を突っ込む。
するとそこには塔に入る前にカグツチからもらった樹の実が入っていた。
「!」
トリトンはポケットから樹の実を取り出す。
「カグツチ!」
そう言ってオクシジーン目掛けて樹の実を投げる。
「!」
丁度同じ事を考えていたカグツチは直ぐ様その意図に気付く。
オクシジーンはその二人の姿を見ていた。
(悪あがきめ。打ち落としてやる………恐らく打ち落としてからの攻撃がメインだろう。………だが無駄だ。剣術の腕に差がありすぎる)
その予想の通りで少しずつカグツチとトリトンも距離を詰め始める。
そうしてオクシジーンに樹の実が迫るがそこである違和感に気づくオクシジーン。
(あれ?)
樹の実が眼前に迫るも、その樹の実はなかなか到達せずにスローモーションとなる。
オクシジーンの脳裏に幼少期の映像がフラッシュバックする。
(何故こんな時に昔のことなんか)
オクシジーンの走馬灯が始まった。




