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風の国編21話

パズズはシューに立ち塞がれ立ち往生する。

その隙にトリトンも追いつき挟み撃ちの状態となる。

「フフフ。」

シューが微笑む。

パズズは額に汗をかいている。

「パーズさん。魔剣を返していただけませんか?」

トリトンは空気中の水分を冷やし、室内に豪雨を降らせる。

冷たい水の塊が上から降り、パズズを撃ち抜いていく。

パズズの服が濡れ、その後凍っていく。

「………」

しかしその氷はみるみる溶けていってしまう。

パズズは黙って、トリトンとシューを見回して、剣とナイフを構えながら警戒を続けている。

その警戒状態の中でシューが素早く剣を突き出す。

それを頭を動かして躱す。

そしてシューの懐に潜り込んでナイフを突き出すがシューは後ろに下がってそれを躱す。

「シュー王子!」

「多分魔剣渡さないよー。だから戦わないと」

「………」

少し複雑な表情を浮かべるトリトン。

「ごめんなさい。パーズさん。いつでも降参してください。」

トリトンもパズズに向けて剣を振りかぶる。

それをナイフで受け止める。

その後もう片方の手に持っている魔剣を振るう。

しかしトリトンは後ろに躱して当たらない。

振ったところでその後ろからシューも迫る。

首元に迫る剣戟に対してすんでのところでナイフで受け止める。

そして非常に素早く手に足に首に流れるように風のように剣を振るっていく。

それをパズズはナイフと魔剣を使って踊るかのように受け止めていく。

受け止め方の反面パズズの表情には少し焦りが見える。

(………ちっ。流石に複数人は分が悪い。それに………)

パズズは降りしきる雨に目線を寄せる。

(冷たい雨………。となると俺の魔法も意味をなさない。)

トリトンが再び剣を使って連続攻撃してくるため、それをパズズは何とか防いでいる。

そんな攻防の中シューは先ほど先制攻撃をしたのにも関わらず、ただポケーっとその場で立ち尽くしていた。

「シュー王子!?」

一同は攻防のさなかシューの動向に注目する。

シューはんーと何やら唸って考えている。

そしてあ、と閃いた表情を浮かべ、口を開く。

「ここは僕に任せてー。先に行っててー」

「えっ!」

「!」

一同は驚きの表情を見せる。

「いや。一人じゃ危ないですよ!」

「王のが危ないかもー。僕は一人でも大丈夫だからよろしく!」

「いや。流石に………」

「大丈夫。魔剣も取り返す。信じて」

「………」

カグツチが遠くから考える。

(相手の魔法の正体は分からない。であれば奴から離れた方が姫にとっては安全………)

トリトンも考える。

そして少しした後に口を開く

「分かりました!先に進みます!」

「全員連れてってねー」

シューはパズズに剣を振りかぶる。

パズズは再びその剣を受け止め鍔迫り合いとなる。

「………分かりました!」

トリトンは魔法の使用をやめる。

降りしきっていた雨が止んだ。

「フロマはアエリ!ハワーはラムチさん!カグツチは姫を護衛して!先に進みます!」

掛け声と共にハワーが先導して警戒しながら進んでいく。

パズズは鍔迫り合いの中、通り過ぎていく一同を見る。

そしてシューの涼し気な表情も見る。

(いや………。こっちの方が好都合)

「こっちです!」

ハワーが大きな廊下の先にある階段を登っていき、一同は階段の上へと消えていった。

その姿を横目で見るシューとパズズ。

パズズが再び

(俺の魔法は気温を上げることができる魔法。それで専守防衛を続ければ相手はスタミナが切れて勝手に倒れてくれる。人は暑いなかにずっと居続けると倒れる生き物だ。だから俺は長期戦なら絶対に負けない。)

周囲に蜃気楼が浮かび上がる。

周囲の気温が明らかに上がった。

「なんか暑ーい」

「私も熱くなってきましたよ。」

パズズは鍔迫り合いの中、後ろに下がって距離を取る。

そしてシューを眺める。

シューは服をパタパタとさせている。

(あの王子は何を考えているか分からん。ただ一つ言えるのは恐らく緊張感がない。)

続けてシューが持っている剣に目線を向ける。

(剣の腕は中々。しかし捌けない程ではない………。………だが………より確実に相手を倒すためにこのタイミングで雑談をして少しでも時間を稼ぐか。)

「シュー王子」

ん?とシューはパズズに目線を向ける。

「ここで少し雑談でもしませんか?」

「えー?こんな時なのにー?」

お前が言うのかと言う表情をパズズは浮かべる。

「いいよー」

いいのかよと表情をパズズは浮かべる。

「………私実は孤児だったんです」

「ふむふむ」

「同じ傭兵の2人も僕と同じ孤児でした。」

「うん。」

「物心ついたときには孤児院にいました。孤児院で穏やか日々を送っていたんです。」

「うん。」

シューは静かに真剣に話を聞いている。

「でも孤児院にある日、大量の盗賊が襲ってきました。」

「うん。」

「私達3人は隠れていたことで被害に遭わなかったのですが、優しく育ててくれた大人や一緒に寝食を共にしていた多くの友人を失い、私達は3人しか生き残れませんでした」

「うんうん」

「私達は復讐のために盗賊共の身元を探しました。そいつは地元の貴族達の息子達であることが分かりました。」

「うん」

「私達は聞きました。目的はと。最初はヘラヘラと否定していましたが、やがて口を割りました。………ただの暇つぶしだと。日々の研鑽で疲れた体を癒やすただの娯楽だと」

「うん」

「そんなことで人の自由や尊厳を奪っていいはずがある訳がない。そう思い証拠を集めて警察にそれを提出しました。………どうなったと思いますか?」

「………」

「証拠を捏造した罪で捕まりました。明らかに奴らは罪を犯していて、その完璧な証拠を用意したと言うのに裁くはおろか、無実の罪で私達が裁かれたのです。」

「………うん」

「警察の言い分はこうです。身寄りのない記事よりも、身分の高い貴族の子の方が信用できると。仮に現行犯でも事情があるはずだと。要は身分が高ければ罪を犯しても無罪ということです。」

「うん」

「だからその時思ったんです。世界を変えるためには私達は絶対的な力が必要だって」

パズズが魔剣を眺める。

「だから我々は魔剣を集めてるんです。不条理な世界を変えるために」

シューはその話を聞いて黙り込んでしまう。

その姿を見てパズズは考える

(………長話で時間は稼げた。………同情的な境遇を話せば、相手も同情して少しは攻撃は弱まる。そうすることでより確実に時間を稼いでいく。)

「そっか。可哀想な境遇だね。」

同情の表情を浮かべ哀れむシュー。

「ハハハ。戦闘前にする話ではありませんでしたね。じゃあ始めましょうか」

再びパズズがナイフと魔剣を構える。

そしてパズズはシューを観察する。

シューの体中から汗が流れ落ちていた。

(かなりの長話で相手も消耗している。これは後は専守防衛で)

それを行った瞬間、パズズは後ろから何かに押されて前のめりになる。

そしてそのまま押されるがままにおっとっととシューの方向へ近づいていく。

(これは!?)

パズズは後ろを見る。

後ろからかなりの強風が吹き荒れていることに気づく。

(何故だ!?魔剣は持ってないはず。)

そう考えている間にパズズはシューの目の前までやってくる。

待ち構えてたと言わんばかりにシューは剣を振るう。それを何とかナイフで受け止めるも、後ろに重心を乗せたところで今度はパズズの正面から強風が吹き荒れる。

何とか吹き荒れる強風に踏ん張っているパズズにシューが近づいていく。

「僕からもざつだーん!」

「!?」

急なシューの呼びかけに驚く。

「何でみんなを先に行かせたと思うー?」

「は?」

シューはパズズの目の前まで到達する。

パズズはナイフや魔剣を振ろうとするも強風で振ることができない。

「それはね」

シューはパズズの足を蹴る。

するとパズズの足が宙に浮く。

地面との接点を失ったパズズは強風に吹き飛ばされ、どんどんと後ろの壁へと迫っていく。

「周りを巻き込んじゃうんだ」

強風で吹き飛ばされたパズズは壁へと思い切り叩きつけられる。

衝撃で咳が出るパズズ。

強風により壁に貼り付けにされたような状態でパズズは動くことができない。

それをみたシューがパズズに向けて猛スピードで走ってくる。

そしてある距離まで来たらジャンプして足をライダーキックのようにパズズへと向ける。

強風で進んでいくシューのキックは程なくしてパズズの腹へとめり込んだ。

壁に阻まれ力の逃げ場がない蹴りは、ミシミシと音を立てパズズの肋を蝕んでいく。

「ガハッ」

あまりの衝撃にパズズはつばを吐く。

そしてナイフと魔剣を落としてしまう。

そして程なくして腹を押さえてその場に倒れ込んでしまう。

シューはその落ちた水の魔剣を拾い上げる。

「よーし!約束果たしたり」

るんるんとした表情を浮かべる。

「ま、………待て」

「?どしたの?」

「まけんを………魔………剣………」

パズズは必死に手を伸ばす。

「無理しちゃ駄目だよー。危ないよー。」

ピキンとパズズの全身に痛みが走る。

「く………」

そうしてうめき声を上げながらパズズは前に倒れた。

それを尻目にシューは振り返り、カグツチたちが進んでいった方向を向く。

「よーし急ごー!」

シューは再び追い風を作り出し、先に行ったカグツチ達を追いかけていった。

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