風の国編19話
玉座の間にて何かを話し合う王とファサード。
彼らは民の不満を抑える手法を検討していた。
国王の手には緑色に煌めく風の魔剣が握られていた。
ファサードは少し不満そうにしている。
(クソクソクソ。魔剣は奪われた。結局渡してしまった。反乱も多分鎮圧する。クソどうする。やり直すしかないのか………?いや………)
ファサードはシューの事を思い浮かべる。
(シュー王子は捕らえたって言ってしまった、それでいないってなったらどうなっちまうんだ………?明らかな矛盾だ………)
ファサードは考え続ける。
そして表情が少し明るくなる。
(いや………むしろ好機か?地下牢の破壊工作を進めておけば、この反乱で地下牢に捕らえていた王子が脱走と言い切れる。いや。それしかない。とりあえず誰か兵士を呼べば………)
その直後玉座の間のドアをノックする音が聞こえる。
国王とファサードはドアの方を向く。
「大臣!大臣!ご報告です!」
(お!いいタイミング。彼を利用して破壊工作するとしましょう。)
「入ってどうぞ」
兵士が玉座に入る。
「報告をどうぞ」
「はい!塔で足止めをしていたシュー王子が風の国に現れたようです!廊下を歩いている姿を見かけました!トリトン王子もなぜか一緒にいらっしゃるようです!以上報告です!」
「………は?」
ファサードの血の気が引き、冷や汗が一気に噴き出る。
「………は?」
国王も同じく困惑している。
「………」
ファサードはその報告を受けて沈黙しており、国王は絶句してしまっている。
「え?ファサード?地下牢って………」
「………」
「おいファサード」
ファサードが沈黙を破る。
「………ご報告ありがとうございます。城内のオクシジーンを連れてきていただけますか?」
「………はい!」
不思議な沈黙が続いたことに疑問に思いつつも、修羅場を感じそそくさと兵士は去っていく。
国王とファサードの間に沈黙が走る。
「ファサード。お前どういうことだ。シューは地下牢にいるって、トリトン王子はもう帰ったって」
「あーあ」
ファサードはため息をついた後に懐からナイフを取り出す。
そして未だに気絶している国王の娘であるテフヌトの元へと走りナイフを突き当てる。
「お前!何を!」
国王が詰め寄ろうとするがファサードが制止する。
「動かないでください。動けば娘さんの命はないですよ」
「お前!やっぱり!」
「国王も運が悪いですね。さっきのがなければもう少し忠臣を演じるつもりでしたが」
「お前………」
「おっと動いちゃ駄目ですよ。」
「………娘を解放してくれ。何でもする。」
「あら。話が早いですね。ではまずは風の魔剣を渡してください。」
「………分かった。」
国王は風の魔剣を前方に投げ捨てる。
それを大臣はテフヌトを抱えた状態で近づいていき拾い上げる。
「ふふふ。おかえりなさい私の魔剣」
手に取った風の魔剣を愛おしそうに見るファサード。
「これで娘を解放してもらうぞ」
「おっと。まずはといいましたよね。これで解放するなんてひと言も言ってないですよ」
「お前………!」
国王は静かに怒りを表明するもファサードは意にも介さない。
「おっと。この場の主導権は私にあることをお忘れなく。とは言え魔剣があるし怖くはありませんが………」
「………もう一つの要求は?」
「あぁ。大したことではありませんよ。これを教えていただければ娘さんは解放します。」
「………要求は?」
「フフフ。魔剣の使い方を教えてください。」
「!」
国王は驚く。
「お前。その魔剣をどうするつもりだ。」
「別に?何もしませんよ。」
「何もしないわけ無いだろうが。それでこの国を、世界をどうするつもりだ」
「あーあー。そういうことはテロリスト集団に聞いてみてほしいもんですがね。」
「答えろ!」
「普通に使うだけですよ。ていうか自分の立場わかってますか?」
テフヌトの肌にナイフを軽く当てる。
「娘さんの命は私の手の内ということをお忘れなく。」
「………」
「ほら。いいんですか?娘さんが」
「娘の解放が先だ」
「立場をわきまえてくださいよ。ここでは私の方が上が上ですよ。魔剣の使い方を聞き出すのが先です。」
「………話せば娘を解放するんだな。」
「えぇ。約束しましょう。魔剣の使い方を教えていただいて、それが実践できれば娘さんを解放します。」
「………」
国王が渋い表情をする。
一方その頃オクシジーンは城の中庭を走って傭兵3人衆探していた。
辺りを見渡してパズズ達が潜んでいないかを確認する。
警戒しながら走っていくと、中庭の中央にある大きな池の目の前で立ち止まる。
辺りには風の国の兵士たちが複数倒れている。
その者たちはいずれも水にまみれている。
「おい!大丈夫か!」
倒れている兵士たちにしゃがんで声をかけるオクシジーン。
しかし兵士たちからの返答はない。
首に手を当て脈があること確認し、一安心した後に
そして立ち上がり池に近づき池を眺める。
突如池の中から手が出現しオクシジーンの足をつかむ。
そして池から人が浮かび上がってくる。
そこにはケールと名乗っていた男ことケルピーがニヤニヤとしながら、水まみれの顔で眺めていた。
「ラグナロク序列86位ケルピー。俺の肺活量は神の領域。引きずり込んでその首もらってやる!」
ケルピーはそのまま足を引っ張り、オクシジーンは水のなかに沈んでしまう。
急な出来事に対してもオクシジーンは表情を変えない。
そんなことは気にせずに水中でニヤニヤを続けるオクシジーン。
(俺の魔法は肺に大量の酸素を蓄えられる。水の中なら俺の独壇場!)
ケルピーはオクシジーンの姿を観察する。
(けっ。澄ましやがって。だが水中では俺が圧倒的に有利。所詮国一番の実力者と言えど、水中では何もできまい!すぐに仕留めてやるぜ!)
そしてケルピーは足から手を離し首に手をかけようとする。
オクシジーンが目を見開く。
するとその瞬間水が一瞬にして消え去ってしまう。
「は?」
ケルピーは何が起きているかも分からないまま池の底に落下して尻もちをつく。
対するオクシジーンは正常に着地をする。
「は?え?な、なんで?水が?」
「残念だったな。俺に水は効かん。」
オクシジーンは剣を構えジリジリと近づいていく。
それを見て尻もちのまま後退りをしていくもオクシジーンの方が当然早くすぐに攻撃の射程範囲内に詰め寄られてしまう。
「ま、待って」
ケルピーは手を前に出して制止をする。
しかしその制止を聞き入れずに剣を斬り上げる。
斬り上げがケルピーに直撃し、ケルピーの体が高く跳ね上がりそのまま落下する。
直後はピクピクと動いていたが、力尽きたのかすぐに動きはなくなってしまう。
「まずは1人」
オクシジーンは剣をしまって、池の穴を登り上がる。
そして再び走ろうとする。
「オクシジーン様!」
そこに他の風の国の兵士が走ってくる。
「どうした?」
「ファサード様がすぐに玉座の防衛に戻るようにと」
「まだ傭兵3人のうち1人しか倒せていないが」
「いいから戻るようにと。シュー王子達が城に潜入した模様です!」
「!他には?」
「トリトン王子達も一緒に来ているとのことです!」
「………そうか。分かった。すぐに戻る。」
「はい!よろしくお願いします。」
兵士は敬礼をして走り去っていく。
そしてオクシジーンも走って玉座へと向かっていく。
(傭兵の奴ら。シュー王子とトリトン王子は始末したのではなかったのか………?まぁいい。仕方ない)
オクシジーンは無心で玉座へと走っていった。




