風の国編15話
国に帰ってきて、玉座の間に戻ってきた兵士たち一同。
オクシジーンは傭兵3人だけ残るように伝え残りは解散となる。
兵士たちは少しざわめくが、少ししたらゾロゾロと玉座の間を後にした。
こうして玉座には未だ失神している国王と姫、そして大臣とファサードと傭兵3人となる。
「やぁやぁどうも。お疲れさまでした」
ファサードがにこやかに挨拶をし、その隣でオクシジーンが会釈をする。
「はい。任務は滞りなく成功いたしました。」
「いやぁ。流石ですねぇ。」
ファサードはウキウキとしている。
「それでそれで。魔剣の方は?」
「………はいこちらに」
パズズは一瞬の思考の後に風の魔剣を手渡した。
「ハハハ。これが風の魔剣!」
ファサードは緑の魔剣を手に取って軽く振り回し、まるで子供のように楽しそうにしている。
「あの王子は無事倒せたのですか?」
ヒッポグリフは少しだけ気まずそうな表情を浮かべている。
「………はい。問題なくシュー王子もトリトン王子も倒せております」
「ほぉ~。水の魔剣は?」
ファサードは目をキラキラとさせている。
「こちらです」
パズズは懐から水の魔剣を取り出し、見せつける。
「ほぉ~。やっぱり水の魔剣は綺麗ですねぇ」
「そうですね。」
「水の魔剣もありがとうございます。」
「………はい?」
3人はキョトンとした顔を浮かべる。
「何をキョトンとしているのですか?風の国のために魔剣を奪ってきてくれたのでしょう?」
「指示に従うかわりに魔剣を手に入れるという前提のもと話が進んでいたはずですが?」
「そうでしたっけ?私はこの国のために正義の傭兵さんが助けていただいたのかと」
「………我々は魔剣を2本とも持って逃げる事もできたのですよ」
「だったら逃げればよかったではないですか。」
「こちらは約束を守った。そちらも誠意を見せてほしいところですが」
「テロリストに誠意を持ってあげる必要がありますか?魔剣を奪うテロリスト集団に」
パズズたちは無限でファサードたちを睨みつける。
この部屋にいる一同の頬や額から汗が滴り落ちる。
「………?なんかこの部屋暑いですね。まぁいいや。魔剣を渡す気はないということですか?」
「約束ですから」
「そもそもテロリストは社会の約束を守ってくださいよ。では交渉決裂ですね。」
ファサードは魔剣を構える。
「レアスサイド国王の力見せて差し上げましょう」
ファサードは魔剣をパズズ達の方へ向けて振るう。
しかし魔剣から何も出ない。
怪訝な表情を浮かべて何度もぎこちの無い拳の振りを続けるも魔剣からは風が吹くことはなかった。
(油断をさせるためか………?)
パズスはファサードの方を見る。
平静を装うと努力をしていることは伺えるが、顔からは焦りが滲み出ていた。
(いや………違うな。あれはガチだ。)
その隙を見逃さずにパズズはナイフを取り出し逆手で持つ。
そしてファサードに接近しナイフで攻撃する。
ファサードは気づいていないが、ファサードの前にオクシジーンが立ち塞がり、ナイフでの攻撃を剣で受け止める。
ギリギリと震えながらナイフと剣での鍔迫り合いが始まる。
それを見てびっくりしつつ、ファサードは魔剣を振るのをやめた。
パズズは一旦距離を取って、ボクシングのような構えを取る。
そして再度ステップワークで近づき、ナイフを縦横無尽に綺麗に振り回す。
それを交わし続け、たまに剣で弾いている。
この短期間の動きであるにも関わらず2人はかなりの汗をかいていた。
そしてオクシジーンが大きく剣を振るうと、後ろに飛び上がり、それを躱す。
そのような攻防を見てファサードが口を開く。
「………魔剣の力があるなら兵士の包囲など突破出来たはず。それなのに正直にここに来たということはあなた方も魔剣を使いこなせていないように見えますね」
パズズ達は黙り込む。
「あらあら図星ですか」
「そういうあなたもなぜ先ほど魔剣の力をお使いにならなかったのですか?」
「テロリストにこちらの手の内を見せるわけないですよね?」
「随分と焦られていたように見えましたが?」
苦虫を噛み潰すような表情をファサードは浮かべる。
「やっぱりテロリストは礼儀にかけていますね。妄想と主観で決めつけるなど。」
「どうやら図星ですね」
ファサードの眉間にシワがよる。
「あー!もう怒りました。温情を見せてやろうと思ったんですけどねー。」
ファサードはスウっと大きく息を吸い込む。
「みなさーん!早く来てくださーい!傭兵3人が謀反ですー!!!」
ファサードが叫ぶと少しした後にぞろぞろと警戒態勢のたくさんの兵士が入ってきて、パズズ達を囲う。
「この方たちトリトン王子から魔剣を奪ってきたみたいです!どさくさに紛れて!」
白々しくパズズたちを指差して話す。
「トリトン王子たちが帰って来てないことを考えると………。ううっあんなに若くて有望な方が………」
白々しく泣く演技をする、ファサード。
「せめてもの弔いです。あいつらの首を取ってトリトン王子への手向けとしましょう!」
白々しい呼びかけに応じておぉー!!!と周囲の兵士が掛け声を上げる。
その光景をオクシジーンは気まずそうに見ていた。
パズズ達の周囲に集まっている兵士は、剣を抜いてジリジリと少しずつ距離を詰めてくる。
そんな危機的状況でケルピーは話す。
「どうするよ?いつもの戦法はまずいんじゃねーか?」
「………そうだな。この人数の相手は流石に骨が折れるな。ヒッポ!」
「ポ」
そういうとヒッポグリフはクラウチングスタートの体勢をとる。
そしてその肩に2人がつかまる。
オクシジーンが声をかける。
「何か企んでいるぞ!気をつけろ!」
「何かやる前に襲いかかれ!!!」
ファサードの号令とともに周囲の兵士たちは襲いかかる。
「ポーッ!!!」
そして猛スピードで再び走り始める。
肩を掴んでいる2人もそちらに掴まって猛スピードで移動する。
そして襲いかかった兵士たちを吹き飛ばして玉座の間外へ出る。
そしてドリフトのように方向転換をして3人は猛スピードで走り去っていく。
「何をしてるんですか!早く追いなさい!逃がした日には分かっていますね!入り口も即座に封鎖すること!」
兵士たちは大急ぎで玉座の間から出ていき、再び玉座の間にはオクシジーンとファサードだけが残った。
オクシジーンもそれについていこうとする。
「待ちなさい!」
オクシジーンは足を止めファサードの方を見る。
「あなたはここに残って、ここの護衛をお願いします。魔剣が奪われる可能性も0ではないですから」
「しかしいいのですか?水の魔剣使いは?」
「あいつら魔剣を扱えてなさそうですから、後は時間の問題でしょう。とはいえ念のため風の魔剣を守る体制は整えておかないと」
「………そうですね………」
「しかし………」
ファサードは風の魔剣を眺める。
「困りましたね。魔剣が使えないとは」
「はい」
「ただの綺麗な剣の可能性もありますね。そうなら観賞用にしかなりません。」
ファサードは気絶している国王に目線を向ける。
「死期が少し伸びましたね」
「はい?」
「国王が起きたら使い方を聞くとしましょう。この王女を人質に取れば国王も話してくれることでしょう。おーい国王」
ファサードは大声で叫ぶが、国王は起きない。
「起きないですね。まさか国王をあの場で殺したなんてことはないでしょうね。」
オクシジーンは国王の首に指を当てる。
「大丈夫です。脈はあります。」
「ほう。それは良かったです。じゃあ国王が起きるまで待つとしましょうか。オクシジーン。警戒を怠らないように」
「はい」
オクシジーンは外への警戒を、そしてファサードは国王と王女が起きるのをじっと待っていた。




