風の国編14話
カグツチたちを除く、傭兵とレアスサイド師団の一団が国へ戻っていく中、ファサードは国を眺めていた。
「必ずこの国を私のものにする。」
ファサードは風の国のスラムで不自由に生まれた。
明日をもしらないギリギリの状況の中でファサードは生きてきた。
ファサードの父と母は小さな露店を開いてギリギリの生活をしていた。
しかしファサードが物心をついた頃に突如として蒸発、その小さな露店すらも国に没収された。
齢4歳にして社会に出ざるを得なかった少年は、親から学んだ朧気な倫理観か、犯罪行為には走らず、国の各地で靴磨きをして過ごした。
時には優しい客、時には見下した客、時にはストレス発散のために暴力行為を働く客。
上のものに媚びへつらわなければ、生きていくこともままならないその環境はファサードに強烈な上昇志向と大きな夢を与えた。
それはファサード自身が支配者となることである。
そこでファサードは当時のレアスサイド師団長に必死に媚びへつらい、師団への入隊を行う。
師団への入隊理由は国の内部に入り込み、政治を担当するためである。
運動能力や戦闘能力は低かったものの、手段を選ばずに、時には自分を見つけてくれた師団長までも裏切って、様々な実績を積み重ねていく。
その実績と戦闘能力の低さを全面的にアピールしたことから、それが王国の上層部に発見され、要職に就くことになる。
そこからも暗躍をし続け、ひたすらに実績を積み上げていき、やっと大臣という職につくことが出来た。
しかしそんな自身の力でのし上がってきたファサードにも越えられない壁がある。
それは王の血筋以外国王になることは出来ないということである。
その事実にファサードは悩んだ。
そうしてファサードはある結論に至る。
国王の血筋を絶やしてしまえば、大臣である自分が実権を握ることが出来るということである。
そう思いついたファサードは上昇志向を絶やさずに早速計画を練る。
まず初めに師団長であるオクシジーンの懐柔である。
国の最高戦力を握れば謀反は容易い。
しかしそれは既に完了していた。
軍の実権を握るため、軍で才覚のあった同期のオクシジーンに恩を売り、昇格までのサポートを全面的に実施。
そしてその後、団長であるファサードの恩人が失脚するように冤罪と策謀を張り巡らせた結果、オクシジーンが団長に代わっている。
軍の実権については取得済み、次に謀反の障壁の可能性が最も高い魔剣についてだ。
魔剣は王族しか入ることが許可されていない宝物庫に保管されている。
そこはやはり国王と仲良くなること、表向きは国王のやりたいことを全力でサポートしていくことにより、国王の信頼を得て、宝物庫にも最近入る許可が得られるようになる。
しかしそんな矢先国王や姫の拉致事件が発生。
しかも魔剣の持ち出しのおまけ付きである。
魔剣がなければ各国のパワーバランスは崩壊する。
魔剣の奪還と国王の拉致という2つの事実に直面。
シューからの魔剣は返さないが、そっちが追ってこないなら何もする気はないという要求も当然拒否。
魔剣奪取のためにファサードは策謀の中で噂を聞いていた。
魔剣に詳しいと噂のである織のラグナロクと接触。
魔剣を1本渡す代わりに無謀に協力をしてもらうことに。
しかし風の国の魔剣は渡せないという建前から、隣国の魔剣使いに救援要請を飛ばし、魔剣使い2人から人質などでどうにか2本の魔剣を手に入れることが目的である
しかし当然魔剣を渡す気などはさらさら無かったため、同行する兵士たちには魔剣の持ち出しが無いように見張ること、風の魔剣についてはレアスサイド側で立ち会って預かるように伝えた。
また受け渡しの際に、ラグナロクの3人を襲うことで魔剣を日本手に入れるという折角二兎を追うことを考えていた。
こうしてファサードの策謀が続き、今に至る。
「ファサード様。まもなく一団が帰ってこられるかと」
後ろにいたオクシジーンが報告する。
「はい」
「魔剣の奪還には成功していますかね?」
「どうでしょう?ただトリトン王子は人がいいと聞きますから、人質でも取れば大丈夫じゃないですか?」
「しかしハワーにあそこまでの仕事できますかね?」
「ハワー?誰でしたっけ?」
「………大臣自ら任務を頼んだ兵です。最も真面目な兵士をご所望でしたので私が選びました。」
「あぁ。彼か。彼なら大丈夫でしょう。クビがかかった天王山では人は凄い力を発揮するものですよ。まぁ彼はある意味どのみちクビですけど」
「あの傭兵たちは信用できるものでしょうか?」
「大丈夫ですよ。国王と姫を一緒に連れてくるように頼んでいます。それで約束不履行なら、国を100%敵に回すことになる。それは相手にとっても厄介なはず」
「………そうですか。」
「それに水の魔剣であればあなたは無力化出来るでしょう。」
「………はい。そうですね。………国の不満は?」
「それも問題ありません。」
「しかし国王が見つかるまで店に重税を課す、不可能なら営業停止というのは流石に。」
「大丈夫ですよ。王子は随分と民と仲良かったみたいですからねぇ。それに信用代ですよ信用代。国王に関する有力な情報提供が出来れば税は免除。現にそうして国王が見つけられたじゃないですか。国王がそう言う規定を定めたことにするのと、ハワーくんを言葉巧みに動かして国王を暗殺させましょう。ハワーくんと王子が国に反乱しようとしてたことにして。そうして我々がハワーくんを処刑する。これぞ本当のクビです。そうして大臣である私が国の復興を高らかに宣言する。死人に口なしですから。誰も口出しできません。完璧なシナリオです。」
「………そうですね。」
「何か問題が?」
「いえ」
「あなたのことはとても信頼しています。あなたを団長にした恩義を忘れたわけではありませんね?」
「はい。忘れておりません。」
「であればよろしい。変な気は起こさないのが身のためです。さぁもうすぐ帰ってきますよ。」
コンコンとドアの方からノックが聞こえる。
「どうぞ」
兵士が入ってくる。
「ご報告します!塔に向かっていた一団が帰宅されました!2本の魔剣と国王と姫の奪還に成功!」
「おぉ。成功したようですね。トリトン王子達は?」
「トリトン王子たちが乗っていた馬車は確認出来ません。」
「何とまぁ。魔剣が2本あるということは………。これはとても残念ですね。」
わざとらしい残念そうな声色で話す。
「報告ご苦労。戻ってよし」
「はっ」
オクシジーンの声がけの後兵士は外へ走っていった。
「聞きましたか?どうやら成功したようですね。ハワーくんがいないのは流れ弾で殺されでもしましたかね?まぁ新しい駒でも探すとしましょう。」
「………」
「ロスカ姫がいないのも気になりますねぇ。まぁ亡国の姫ではありますが、新しい風の国の王妃にしてあげようとおもったのですが………まぁ仕方ない。その付き人共もどうだっていい。魔剣さえあれば抵抗さえ出来はしない。流れ弾で死んだことにしましょう。」
「………」
「いやー。でも中々に好みでしたからね。どうせ氷の国に戻ってるんなら氷の国に行ってロスカ姫を迎えに行くのもありですね。亡国からしたら喉から手が出るほどの話でしょうし。最悪魔剣もありますから。2回も魔剣に滅ぼされる国というのも滑稽ですね。まぁもう滅びてますけど」
「………」
オクシジーンは無言でその言葉を聞いていた。
「さーてと。我々もお話の準備をしておきましょうか。しかし魔剣が来るのが楽しみですねー。」
ファサード達は英雄の凱旋を受け入れる準備を整えて始める。




