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風の国編12話

一同は塔を降りていく。

そして塔の1階に到着する。

まだメソメソしているアエリをトリトンが車椅子に乗せる。

そして1階の中央付近には縄で縛り付けられたハワーがいた。

ハワーは未だに呆然としている。

「ねぇねぇ兵士さん。」

シューが一番に駆け寄り話しかける。

「大臣と何を企んでたのー?」

一同は無言でハワーを囲う。

ハワーはそれに気づかずクビだ、終わりだなどと言った言葉をうわ言のように呟き続けている。

「ねーえ!」

シューはハワーの頬を軽く両手で押し付ける。

ハワーは少しポカンとしていたが、やがて事態に気づく。

「!?シュー王子にトリトン王子!?何故ここに殺されたはずじゃ?………まさか幽霊………?」

「?」

少しした後に、あっと何かを理解した表情を浮かべるシュー。

「地獄から未練を晴らしに戻って来たぞぉ。復讐を晴らしに戻ってきたぞぉ。」

少し低い声でシューは話し始める。

そしてシューは風を発生させる。

「どうかお助けを!」

ハワーは恐怖の表情を浮かべる。

周囲の人間はシューの芝居に何もコメントを出さずに認めていた。

「助けて欲しくばお前らの目的を言えぇ」

トリトンは空気を読んでハワーの上あたりから雨を降らせる。

「だ、大臣からの指示だったんです!」

「大臣の?」

「詳しく説明してください。」

トリトンもハワーに詰め寄る。

「ヒィィ!大臣が!この国の実権を握りたいって!だから邪魔な国王達を殺すって!だから一部兵士の手で暗殺を目論んでたんです!」

「うんうん。それでー」

「それでシュー王子が魔剣を奪って国王と姫が拉致される事件が発生したんです!」

「暗殺の方が事件でしょー」

「それで………」

ハワーは追憶する。




ハワーはシュー王子が謀反し、国が混乱に陥っているある日、ハワーは玉座に呼ばれた。

辺りにはファサードとオクシジーンがいるのみであった。

大臣とオクシジーンのみしかいない空間に内心疑問に思いつつも敬礼をする。

「この度は大臣にお呼びいただき光栄です!本日のご要件はいかが致しましょうか?」

「よく来てくれたね。えーっと………」

ファサードは側近のオクシジーンに目線を向ける。

「ハワー。よく来てくれた。」

オクシジーンがハワーに挨拶をする。

「あぁ。パワーくん」

「ハワーです」

オクシジーンがすかさず訂正する。

「ハワーくん。ようこそ来てくれた。普段から真面目な勤務態度でよく働いてくれているね。」

「はい!光栄であります!」

「今国が大変な状態なのは分かっているね。」

「はい!」

「シュー王子の反乱によって、国は大混乱状態。」

「はい………。そうですね………。」

「一刻も早く国王を取り戻すために兵は総出で捜索しています。」

「はい。」

「ですが相手は魔剣の使い手。正攻法では勝てませんね」

「はい………。」

「そこで本題です。あなたには他国に魔剣を手に入れてもらいたい。」

「………え?」

「他の国に魔剣を借りるか、魔剣使いを連れてきてください。」

「………善処させていただきます。」

「善処ではダメです。やってください。」

「しかし魔剣を借りるなんて」

「あなたは真面目なのですから出来ますよ。」

「しかし………」

「氷の国の国王は平和ボケのボンクラ………おっと失敬、とてもお優しい方と聞きます。氷の国にいけば力は貸してもらえるでしょう。交渉の基本は利害の一致です。どうにか相手の望むものを口約束して連れてきてください。」

「………」

「返事は?この任務できないとあなたは兵士失格になってしまいますよ」

「………はい。分かりました。」

ハワーは渋々返答する。

「流石は真面目な兵士さんです!真面目なあなたに免じてそれとあなたにはもう一つシークレットミッションを伝えておきましょう。」

「………はい?」

「これができた暁にはあなたへいいポストを用意しますよ」

「………はい」

ファサードは耳元へ近づく。

「頃合いを見て氷の国の魔剣使いを殺して魔剣を奪ってください。」

「………は?」

「ものすごいアドバンテージである魔剣が目の前に転がってきたらそれは奪うしかないじゃないですか。国王も魔剣を国から取得したとなれば大きな評価をするはずですよ。私からも推薦します。」

「いや………」

ハワーの内心に流石にマズいのではという理性がよぎる。

「それに魔剣がなければこちらから攻め込んで滅ぼせば復讐の芽も摘めますし」

悪びれもせずにファサードは話し続ける。

「まぁ基本は彼らに任せているので、もし失敗したらでいいですよ。あなたの真面目さで信頼を勝ち取った後に殺してくださいな。」

ちょうどその言葉の直後にパズズ、ケルピー、ヒッポグリフの3人が部屋に入ってくる。

「ファサード国王。この度は我々をお便りいただきありがとうございます。必ずやこの任務成功させてみせます。」

パズズが膝をつき挨拶する。

「あらあら。気が早いですよ。彼等は傭兵の………パーズくんに………ケ………ールくんに………ヒー………ポ?くんです」

「………」

傭兵3人は名前を間違えられたことに特に訂正をしなかった。

その後しばらくは彼等はこの名前を名乗ることとなる。

「風の魔剣の奪還を担当します。以後お見知りおきを。」

「………」

ファサードがにこやかに話す。

「皆さんで魔剣を奪ってきてください。目撃者や氷の国の仲間がいたら残らず始末をすること。そのためにはえーっと………君が魔剣使いを連れてくる必要があります。分かっていますね」

「………はい。」

「ハワー様。」

パズズがハワーに話しかける。

「基本的な方針は決めておきましょう。魔剣は我々が奪いますので、同行者の始末はお願いします。」

淡々とパズズは話す。

「………はい」

ハワーは薄々感じていた。

ファサードがこの国を乗っ取ろうとしていることに。

ただハワーは普通のサラリーマンである。

元々ハワーに国王への忠誠心や執着は特になかった。

風の国の王は決して悪い人間ではないが、ハワーはあくまでも職業人として、雇用主と労働者の関係性を全うしているのみの、上司の指示に従う忠実な存在である。

そのためハワーは今の上司であるファサードに従う選択をした。




「っていうことがあって!大臣の指示で!」

ハワーは一同に向けてこれまでのことを洗いざらい話した。

それを聞いたカグツチが眉をぴくっと動かして詰め寄る。

「ちょっと待ってください。」

その声にビクっとハワーが反応する。

「カグツチさんはこの幽霊見えてるんですか!?ていうか何で皆で円になってたんですか!?」

ちょうどトリトンが降らしていた雨も止んだ。

そしてハワーの目の前に立つ。

「魔法の力を打ち消す薬は?」

「え?」

「魔法の力を打ち消す薬は?」

鬼気迫るカグツチにハワーが気圧される。

「………あ、………嘘………です」

「………何ですか?」

「じ………自分が知る限り………。その薬………聞いたこと………ない………です」

「………」

ラムチとハワーとトリトンの表情が強張る。

カグツチは表情を変えずに続ける。

「あの大臣と耳打ちで話してたのは?」

「………ロスカ姫は自分の妃にするから………殺さないで連れてこいと………。カグツチさんの目の前で妃にして………未練を残したまま殺してやりたい………とも………」

カグツチは俯いてプルプルと震える。

トリトンはその空気を感じカグツチの元へ走る。

「お前!!!」

カグツチは表情は一気に怒髪天となり、ポケットに乱雑に手を突っ込み樹の実を取り出す。

手を突っ込んだ反動で複数の樹の実が地面に落ちる。

取り出したところをトリトンが正面から抑える。

「落ち着けカグツチ!気持ちは分かる!めっちゃ分かる!深呼吸しよう!」

「わー!落ち着いてカグツチ!姫を見て深呼吸!」

ラムチは必死に姫がここにいるよとアピールしている。

フロマも止めるために近づいていく。

ハワーは恐怖で混乱と困惑している。

「………は?幽霊?何でカグツチさんを?カグツチさんも幽霊?」

「幽霊じゃないよー!実物ー!」

そんな喧騒は一切意に介せず話していく。

「………は?どういうこと………?」

ハワーは混乱している。

「説明ありがとー。さてと。じゃあ大臣が黒幕だね。」

カグツチは相変わらず暴れている。

「じゃあ早く皆で助けに行くために作戦を決めよー」

シューの呼びかけは誰も聞いていなかった。

「………」

シューが少し不機嫌そうな表情を浮かべる。

そしてシューがトコトコとカグツチに近づいていく。

そして

「落ち着きなさい!」

そう言うと頭に軽くチョップをする。

カグツチはそのチョップに気づいてシューの方を見る。

「なんですか!!??」

カグツチがシューの方を向く。

シューは諭すような目線をカグツチに向けていた。

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