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風の国編11話

塔の中に入るとロスカとラムチが無事に待機している。

カグツチに抱えられているハワーは変わらず呆然としている。

「あーカグツチ!よかった!」

安堵するカグツチ。

「よかった………。また危険な目に合わせてしまいすみません。」

「大丈夫よ!今回も護衛の役目をしっかり果たせたわね!」

ラムチはパンパンとカグツチの肩を叩く。

「それで………」

ラムチは笑顔を崩さずに少し怖い表情でハワーを見る。

「どうして急にハワーさんは襲ってきたのかしら」

ハワーをじっと見つめる。

しかしハワーはそんな目線は意に介さず、呆然としているだけである。

「一旦話は後にしましょう。王子は?」

「少なくともこのフロアにはいないみたい。」

「分かりました。塔も静かですね。戦闘が行われてないみたい。」

「そうね」

「まずは塔を登って王子を探しましょう」

「了解!」

カグツチはハワーを地面に置き、辺りを見渡す。

そこであることに気づく。

「………あれ?アエリさんは?」

そこにはアエリがいなかった。

「私たちが入ってきてからいないのよね。ほら」

ラムチが階段の方を指差すとそこにはアエリが乗っていた車椅子があった。

その後塔の上の方から啜り泣くような音が継続的に聞こえてくる。

「アエリさんかも!」

「早く行きましょう!」

カグツチはロスカの車椅子を持って、ラムチと共に塔を登り始める。

ハワーは一階に放置である。

塔を登っていくと、小さな水の後が出来ている。

「この水のあとは………」

登るにつれて啜り泣くような音も近くなっていく。

そしてさらに登っていくとようやく四つん這いで進んでいく人影があった。

啜り泣く音と共に、ヨロヨロと進んでいる。

「嫌。トリトン様………やだ…………絶対駄目………」

何かを呟きながら、啜り泣きながら匍匐前進で塔を登っていた。

「アエリちゃん!」

ラムチがその姿をみて駆け寄るが、それに気づいていないのか、無視しているだけなのかアエリは進み続けている。

その姿にカグツチは感銘を受けている。

「凄い………。主のためにここまで………」

ラムチはアエリを抱きかかえる。

「アエリちゃんよく頑張ったわね!ここからはおばちゃんが運ぶから」

「嫌!離して!トリトン様が!トリトン様が!」

子供のように駄々をこねてアエリは泣き叫んでいる。

「王子なら絶対大丈夫だから!大丈夫!」

励ましを耳に入らずアエリは暴れている。

「………急ぎましょう」

「そうね」

錯乱しているアエリを持って上へと登っていく。

「全く上から音はしませんね。」

「そうね………」

そして塔の頂上へと到着した。

奥の部屋の扉は空いている。

警戒しつつ部屋に入る。

するとそこには赤い液体にまみれ、3人が倒れていた。

その光景を見てカグツチとラムチは愕然とする。

そして錯乱していたアエリは一度大人しくなる。

「は、はは………。嘘………トリトン様………」

ラムチは手で口を覆う。

「そんな王子………」

アエリから涙がポロポロと絶え間なく流れ続ける。

「嫌。嘘。トリトン様。嘘ですよね」

涙声で呟き続けている。

カグツチは歯を食いしばり、悔しそうな表情を浮かべる。

「王子………そんな………」

ラムチは俯きつつもアエリをトリトンの近くに降ろす。

降ろされたアエリは直ぐ様トリトンの近くに寄る。

トリトンは赤い液体にまみれて仰向けに倒れていた。

目が閉じており、トリトンは動かない。

「嫌です………。トリトン様………。嫌ああああああ!!!」

アエリはあまりの悲しみに絶叫する。

そして嗚咽を上げながらただひたすらに泣いている。

カグツチとラムチはその光景を悲しそうに見つめている。

そしてカグツチは辺りを見渡した。

その後あることに気づき、トリトンの腰にも目をやる。

そこには水の魔剣がなかった。

「………水の魔剣が………」

「ごめん。魔剣取られちゃった。」

聞き覚えのある。声が聞こえる。

「………え?」

アエリたちは呆然とする。

そしてアエリはトリトンの顔を覗き込むと、トリトンがパチリと目を空けてケロッと体を起こす。

「あ………あ………」

アエリは少しの沈黙のあとトリトンにすごい勢いで抱きつく。

そして声も出ないほどの号泣を続ける。

そしてギリギリトリトンと聞き取れるほどの滑舌でトリトンの名前を連呼している。

「トリトンさまぁ!トリトンさまぁ!!!」

「ごめん。心配かけちゃったね」

トリトンは微笑む。

「トリトン王子。これは一体」

「心配かけてごめん。人質取られて相手にやられそうになったから、わざとやられたフリをしたんだ」

同時に少し離れていたフロマも体を起こす。

そして服の中から大量の赤の絵の具を取り出す。

「私の魔法はこの塗料を水と混ぜられるのです。それで斬られそうになる瞬間王子に水を出現させてもらって、それを混ぜて血のように見せかけました。」

「なるほど。どうして倒れたふりを」

「誰かが登ってくる音が聞こえたので、一応死んだふりをと」

「そうですか………。そちらに倒れているのは………?」

カグツチは倒れているシューに目線を向ける。

「この方はレアスサイドのシュー王子です。」

「!シュー王子は相手にやられて」

「いえ。そういう訳では」

「ごめん。魔剣を取られた」

トリトンが真剣な表情で話す。

「魔剣なんてどうでもいいです!トリトン様が生きていれば!」

アエリはトリトンの胸のなかで号泣を続けている。

「どうでもよくは無いんじゃない?」

同じくしてトリトンの隣側から声が聞こえる。

カグツチが目線をやるとシューがムクリと起き上がる。

カグツチは臨戦態勢を取る。

「あなたは一体」

「僕はね。レアスサイド第一王子のシューだよ。」

「なるほど、あなたが謀反を起こしたと噂の」

「謀反はあっちだってばー」

「えーっと………。まず何でシュー王子も死んだふりを?」

「トリトンさんと階段登ってる時にね、話したんだ。斬りかかられたらやられたふりをしろって」

「シュー王子は何だか悪い人には見えなかったりだから死んでほしくなかったんです。」

「いやーそれほどでも。」

「シュー王子」

トリトンはシューを真剣な眼差しで見つめる。

「本当に申し訳ありません。私のせいで大切な魔剣だけでなくご家族まで。私の判断ミスです。」

そして深々と頭を下げる。

「いーよー。自分の力が無かっただけ。自分か悪いよー。急いで助けに行きたいけど………まずは状況整理かなー?」

カグツチとラムチはぽかんとしている。

「………すみません。どういう状況なのか説明いただいてもよろしいでしょうか?全容が掴めず。」

「ごめんカグツチ。………俺もよく分かってないんだけど、あの傭兵2人、パーズさんとヒーポさんはラグナロクだった」

「な!」

カグツチとラムチは驚きの表情を浮かべる。

「それと………シュー王子曰く、大臣が王の命を狙っていたみたい。シュー王子はそれを聞いてここに避難したと」

「なるほど………だからハワーさんが」

「ん?ハワーさんがどうかしたの?」

「ハワーさんにさっき襲われたんです。何とか無力化出来ましたが、どうやら自分達を葬ることを考えていたみたいです。」

「なるほど………。分からん!国がラグナロクと協力してるってこと?」

トリトンは腕を組み唸る。

「シュー王子は何かわかりますか?」

「んー。分かんない!僕は謀反を耳に挟んだだけー」

「そうですか………。」

「………当事者に聞きましょう」

トリトンの胸のなかでまだ泣いているアエリを除き、一同がカグツチを見る。

「ハワーさんなら下に縛り付けてあります。あの人に聞き出しましょう。」

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