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風の国編10話

2人は睨み合い膠着状態が続く。

ハワーの目は何だか血走っている。

カグツチはその中で思考を回す。

(塔の中にいればひとまずは姫たちはあいつの脅威は避けられる。後はどう相手を倒すか………)

カグツチは相手の空気砲を見る。

(相手の魔法は明らかに、あの箱での遠距離攻撃。距離を詰めるのは中々骨が折れそうだ。クソ、クリオネッタ王国の伝統的な御守りとか言って樹の実を渡しておけばよかった。それか握手とかで服に触っておけば一発で燃やせたのに)

そう考えている内にも箱を叩くハワー。

どこに飛んでくるか分からないカグツチはその動きを見てひとまず大きく横に移動して避ける。

(………仕方ない。いつもの通りどうにか接近するしかないか。)

カグツチは腰にかけた袋から大量の樹の実を取り出す。

そしてその樹の実を正面と上方向に2回に分けて、大きく振りかぶって投げる。

樹の実は直後火となり、ストレートの軌道とアーチのような軌道の2種で火の玉が迫っていく。

ハワーはそれを見て一瞬硬直し、空気砲を叩くような素振りを見せるが、すぐに横に躱す。

躱したところにカグツチは急接近し剣を振るう。

ハワーは箱を置いて、自分自身も剣を抜いて、攻撃を受け止める。

ジリジリと鍔迫り合いとなる。

鍔迫り合いの中カグツチは下に置かれた箱を見る。

(これは………この箱多分紙製。燃やせる)

そして箱に触れようとするが剣で反撃をされる。

流れるような素早い剣さばきに中々箱を触れない。

「あなたの魔法は火の魔法使いですか?」

「………」

戦闘中のためカグツチは返信しない。

「返信してくださいよ!」

(服に樹の実入れようにも隙がないな。)

そして素早い剣さばきを剣で止め、相手の剣を力で下に押さえつける。

そしてその隙に箱に触ろうとするも、そのタイミングでどうしても隙が生まれてしまいなかなか触ることができない。

「あなたの魔法分かりましたよ。触ったものを燃やせるんですね。」

「………」

「だからこの箱を燃やして攻撃手段を奪おうとしてる。」

「………」

「メリットとしては相手の魔法を封じれば戦闘が大きく有利に働くこと。でも今のその戦い方には欠点が2つあります。」

「?」

「一つは剣術。魔法が使えなくても結局剣技で勝てなければ、私にダメージは与えられない。」

たしかにそうであった。

今の剣の攻防においてお互い有効打は今のところない。

その話している隙にハワーの剣を大きく上に弾いて隙を作るカグツチ。

その隙に箱を触ることを試みる。

しかしその後ポンという音のあとにカグツチの右足首に導通が走る。

「!?」

急な痛みに膝をつくカグツチ。

膝をついてしまい箱にはさわれなかった。

箱を見ると箱の上にはハワーの足が乗っていた。

「足でもこの魔法は発動できるんですよ!私の魔法は箱を叩いて空気の塊を発射させられるんですよ」

どうやら足で箱を叩いて魔法を発動し、空気の塊が足首に直撃したようである。

急な鈍痛に苦しむ中カグツチの首元に剣が振り下ろされる。

咄嗟に体を倒し、ローリングすることで躱すカグツチ。

しかしローリングしているということは低い体制を取っていることであり、空気の塊がさらに足や体などに直撃する。

またもや鈍痛が響く。

「痛いでしょ?空気って凄いんですよ!重たいし痛いんです。だから空気には逆らっちゃいけない。そうやって自分は生活してきたんです。」

「………そうですか。」

ハワーの足が止まり、空気が発射されなくなった隙をついて、よろよろとゆっくりカグツチは立ち上がる。

カグツチはその中でハッセルの技を鍛えろという言葉を反芻していた。

(俺の魔法は触れたものを燃やせる魔法)

辺りを見渡す。

辺りは砂漠。

燃やせそうな物はなかった。

(燃やせるとしたら自分の手持ちの樹の実か、相手の箱か服………。いやそれじゃ全く今までと変わらない。何か、他に何か)

カグツチは地面を見る。

(地面には大量の砂)

そう考えているとあることに気づく。

(そうだ。まだあった)

カグツチは手で服の埃を払う。

カグツチは先程と同じようにポケットから樹の実を取り出し投げる。

「またそれですか?」

呆れたような声を出しハワーは再び火の雨を躱す。

その隙をついて再び接近する。

「ハハハ。やっぱり同じだ!さっきと同じ目に合わせますよ!」

カグツチとハワーはまたもや鍔迫り合いの状態となる。

ジリジリと2人はかなり近い距離になる。

「さっきと同じ目に合わせて………」

ハワーが話している中で突如カグツチの服が燃え始める。

「うわぁ!」

突如として発生した全身火だるま人間に、防衛本能が働き咄嗟に尻餅をつくハワー。

その隙をついて地面に置いてある箱に触れ、箱はあっという間に炎上し出す。

「………あ」

箱の炎上に狼狽えながらもヨロヨロと立ち上がる。

目の前には腕が燃え続けているカグツチが無表情でハワーを眺めていた。

その姿にハワー後ずさりする。

カグツチはハワーから目を離さずに、突如として砂漠の砂を水のように掬い上げ、一心不乱に自分にかけ続け、並行して炎を自分の掌で叩き続けている。。

その光景を見てさらに辟易とした表情を浮かべて後ずさりをする。

そしてカグツチが砂を自分自身にかけ続けていると、いつの間にか火は消えていた。

服は途中まで焼け焦げ、所々煤で少し黒くなっていた。

「何を考えているんですか?自分を燃やすなんて。」

「これしかなかったんです。自分の服くらいしか」

「いや………。消えなかったらどうするんですか?」

「その時は服を脱ぎます」

「………は?………いや………」

カグツチの行動に対して引いた表情を見せるハワー。

その隙を見逃さずにカグツチは接近をして持っている剣で斬りかかる。

それをハワーはなんとか防ぐ。

キンキンキンと剣の攻防が続く中、ハワーは考える。

(いや。落ち着け。相手は派手だが戦況は五分。空気砲を失っただけだ。相手も自分も剣同士の戦い。剣技で勝てばいいだけ)

ハワーは回想する。

(俺は与えられた仕事を全うするんだ。じゃなければクビ。)

ハワーは大臣の顔を思い浮かべる。

(あのクソ大臣。兵士を物言わぬ駒だと思ってる。でも今の最高責任者はあいつだ。給料を払うのもあいつ。任務を失敗すれば当然兵士はクビ。俺はこの職にしがみつくんだ。)

ハワーは相手を見据える。

(さっきは急なことに驚いたが、それは俺にも同じ事ができる。脅かして隙を作ってやる)

「うおおおおお!!!」

突如鬼の形相で叫び出すハワー。

しかしその叫びを全く意に介さず、カグツチは蹴り放ち、それがみぞうちに直撃する。

「おおお………」

ハワーは剣を落として腹を抱えて悶絶する。

そのハワーにカグツチがタックルを仕掛け、地面に押し倒す。

ハワーは腹の痛みに苦しみながらも、逃れようと暴れている。

それを抑え込み、服の中に入れていた縄を使って、腕と足を暴れる中で締め上げた。

縄で締め上げられたタイミングで諦めたのか、動きが止まる。

「………クソ。終わりだ。クビだ」

「………後で色々と聞かせていただきます。」

呆然とするハワーを抱える。

そしてカグツチは塔の方へ向く。

「姫!」

そう言ってカグツチはハワーを抱えて塔の中へと走っていった。

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