風の国編9話
倒れ込んだ2人を見て、パズズが指示をする。
「よし。2人を連れて行くぞ。」
「こいつはどうします?」
ヒッポグリフはフロマを指さす。
「あぁ。こいつは王族じゃないしな。殺せ」
「ぽーっ!」
パズズがフロマを地面に置く。
そさてヒッポグリフは同じくフロマを斬り捨てる。
フロマからも赤い液体が散った?
「ぽ?」
ヒッポグリフは何やら怪訝そうな表情を浮かべる。
「よしいくぞ。水の魔剣は隠せよ。一向に見られたら厄介だ。」
パズズは2人を抱えたまま階段を降りていく。
そして同じくしてヒッポグリフも階段を降りていった。
そうして赤い液体にまみれた3人がその場に残った。
一方カグツチ達は少し塔から離れた位置で塔の動向を見守っていた。
辺りには大量の兵士たちが並んでいた。
カグツチはロスカの車椅子に手をかけながら塔を眺めている。
近くにラムチが寄ってくる。
落ち込んだアエリの乗った車椅子を押している。
「どうカグツチ。機嫌はどう?」
「えぇ。まぁ」
「不安?」
「はい。そうですね。」
「トリトン王子なら大丈夫よ!ねっ!アエリちゃん!」
アエリはトリトンに怒られたのがまだ尾に引いているのか落ち込んでいる。
「あらあら。これは大ダメージね。そういえばカグツチって同年代の同性のお友達が少なかったもんね。」
「………はい。トリトン王子はとてもいい方………だと思います。」
「良い友人ができてよかったじゃない」
「………はい。」
「やぁやぁどうも」
話しているとケールと呼ばれていた傭兵の一人が近づいてくる。
「ご機嫌はいかがですか?」
「はい。まぁぼちぼち」
「吉報を待ちましょう。不安を持ってると吉報は来ませんよ」
「………そうですね。」
「それにしてもそこの車いすの方は魔剣にやられてしまったのですか?」
「………はい。」
「いやー。魔剣の力って強大ですね。こうも強大だとこっちも魔剣欲しくなっちゃいますよね」
「………は?」
「塔の中から階段音が聞こえる!誰かが降りてきてるかも!」
一般兵が大きな掛け声を上げる。
「おや?これは吉報かも!」
ケールは塔の入り口まで近づいていく。
ハワーがカグツチの元まで近づいてくる。
「撤退の準備を」
ハワーはカグツチに話しかけ、馬車に乗る。
「あらあら。馬車に戻らないとかしら」
馬車に戻ろうとするラムチを引き留める。
「どしたのカグツチ?」
「何か………胸騒ぎがします。」
程なくして塔の中からパズズとヒッポグリフが出てくる。
ヒッポグリフの手には風の魔剣、そしてパズズの両脇には男性と女子が抱えられていた。
パズズが大声を上げる。
「国王と姫は保護した!拷問されて気を失ってるが!魔剣も保護した!今トリトン王子がシュー王子を足止めされてる!トリトン様のご意思だ!早く撤退するぞ」
おおー!と風の国の兵士たちが反応する。
また沈んでいたアエリが反応する。
「トリトン様?まだ中に?駄目!撤退なんて駄目!」
アエリの叫びとは裏腹に風の国の一員たちは次々と馬車に乗り込み、随時出発していく。
パズズは騒乱のさなかハワーとカグツチたち一同に視線を送る。
そしてハワーもパズズを見ていた。
少しのアイコンタクトの後パズスは馬車に乗り込む。
アエリが暴れているのをラムチが必死に抑えている。
しかし止めきれず、アエリは自分で車椅子を押して塔の中に猛スピードで進んでいく。
「あぁ!ちょっとアエリちゃん!」
ラムチが手を伸ばした頃にはもうアエリは塔の中にいて見えなくなっていた。
「カグツチさん達!早く!」
ハワーもカグツチたちに呼びかける。
しかしカグツチは塔を眺めていた。
ラムチがカグツチに近づいてくる。
「カグツチどうする?王子の救援に行く?」
「カグツチさん!早く!」
ハワーが呼びかけを続ける。
その間にも馬車は次々と出発し、残りはカグツチ達のみとなった。
「………塔に行きます。ハワーさんは先に戻っててください!」
「は?早く戻らないと!」
「塔を登ります。」
カグツチの意思は固かった。
「早く戻りましょう!軍の命令です!」
「トリトン王子の救援に行かないと。水の魔剣を奪われてしまう可能性もあります。」
「いや。早く撤退しましょう!魔剣使いは危ないですよ。」
「いや、自分たちは残ってトリトン王子の救援に行きます。」
「いや撤退しましょう。魔剣使いのトリトン様がいれば大丈夫ですよ」
「いや。自分たちは残ります。すみません。ハワーさんは先に」
「………」
それに対してハワーは少し黙った後に馬車から降りる。
「………早く馬車に乗ってくださいよ」
そしてハワーは暗い表情を浮かべながらカグツチの元へと歩いていく。
カグツチはハワーの方を向く。
「すみません。魔剣使いが魔剣のない相手を足止めしていて、まだ戻ってこれないのはおかしいとは思いませんか?だから自分達は残ります。ハワーさんはあの傭兵達の」
「指示に従ってくださいよぉ!」
ハワーは背負っていた中央に丸い穴が空いた立方体の箱を取り出した。
そして箱の側面を叩く。
カグツチは咄嗟にロスカの前に立ち、剣を抜く。
しばらく何も起きなかったが少しした後にカグツチの腹の付近に衝撃が走り鈍痛が響く。
「!?」
カグツチは急に出た攻撃に驚く。
ラムチも何々!?と状況を掴めずにいる。
「早く来てくださいよ!何でこんな分かりやすい指示をしているのに!従えないんですか!?私の評価が!」
リズムよく箱を叩いていくと、その少し後にカグツチのあらゆる箇所に先ほどと同じく衝撃と鈍痛が来る。
「くっ!」
「早く戻らないと私の評価が下がるじゃないですか!」
攻撃は続き、カグツチは少しずつダメージを負っていく。
「ちょっとハワーさん!一旦落ち着いて話しましょ!ね?」
「任務を遂行しないと私の評価が下がるんですよ!僕はいつも真面目に頑張ってるのに!何で何で!」
話が通じないハワーに唖然としている。
「ハワーさんは毎日頑張ってて本当に偉いですよ!」
「うるさい!昨日出会ったやつに何がわかりますか!」
カグツチは後ろのロスカとラムチを気にする。
(相手の魔法は遠距離魔法。だとすると姫から離れるわけには行かない。………であれば)
「ラムチさん」
ハワーに聞こえない程度の小声で話しかける。
「なぁに?」
「姫を押して塔の中に避難してください。」
「りょうかい!」
ラムチはロスカの車椅子を押して塔へと走る。
「早く来てくださいってば!」
ハワーは車椅子を押すラムチめがけて空気砲を発射するが、カグツチはその前に立って身体で空気を受け止めて庇う。
空気砲を連打するが全て庇ってカグツチは受け切った。
そうしている内にラムチたちは塔の中に避難することができた。
「くそ!何でいつも!」
「ハワーさん。どうして撤退を急ぐのですか?魔剣なしの相手ならトリトン王子と協力してシュー王子の確保もできるじゃいですか」
「皆さん撤退しましたよ!?集団行動で一部だけ別行動取ってたら悪目立ちするじゃないですか!リーダーが撤退と判断したら撤退なんです!それに私には他にも重大任務があるんです!」
「………他の任務?」
「それにトリトン王子はもうこの世にいないですよ!」
「………は?足止めしてるって」
「………あ、真面目な私としたことが。」
カグツチはその言葉を聞いて表情を少ししかめる。
「………どういうことですか?何か隠し事がありますよね。」
「あ、しまった。」
口に手のひらを当てるハワー。
「まぁいいか。どうせ口止めで葬るつもりではありましたし。後でも先でも結論は同じでしょう。」
ハワーは空気砲を片手で持って、もう片方の手で剣を抜く。
「申し訳ありませんが、知られたからには皆さんには死んでいただきます。馬車に乗らなかった皆さんが悪いんですよ。」
カグツチは全容を何も掴めていなかった。
しかし姫の危険を感じ取り直ぐ様臨戦態勢になる。
「姫に危害を加えるのであれば、必ず排除します。」




