風の国編8話
トリトンとシューの2人は塔を登っていきそして最上階に到着する。
最上階には着くと扉があり、その扉を勢いよく開ける。
するとそこには傭兵の2人とフロマとそのすぐ近くにそれなりに年のいった人と少女がはいた。
特に切羽が詰まったとかそういうこともなく和やかな雰囲気になっていた。
「父さんにテーちゃんも無事?」
「兄様!」
「あぁ。」
「ひとまず無事そうでよかった!」
「パーズさん!ご無事だったんで?」
パーズがいることに驚くトリトン。
パーズの身体には幾つか傷がついていた。
「はい。戦闘が続いておりましたので先に頂上に。すみません。」
「いえ。ご無事で何よりです。すぐ救護に行けずすみません。」
傭兵たちを意に介さずシューが話を続ける。
「あー。紹介が遅れちゃったー。この人がレアスサイドの王様。お父さん。こっちが妹のテーちゃん」
シューは父と少女と指差し話す。
「皆さん始めまして。レアスサイド国王のアトゥムです。」
「レアスサイド第一王女のテフヌトです」
「チューン王国第一王子のトリトンです。よろしくお願いします。」
トリトンは丁寧に一礼する。
「ポセイドン王のところの!いつもお世話になっております。今後とも外交ではご贔屓に。それでチューン王国の王様がどうしてこちらに?」
「はい。シュー王子に魔剣と国王と姫が拉致されたと聞き、そちらの奪還に伺いました………って………ん?」
トリトンの頭の中に疑問が浮かぶ。
シューと国王と姫、そして傭兵たちが普通に部屋にいることである。
「シュー!やはり国に戻ろう!きっとお前の考えすぎだ!」
「えー?でも普通に計画話してたよー?」
「えーっと。謀反って聞いたのですけど、普通にお話しされてるんですね。もしよろしければ事情を伺っても?」
「あー。実は………」
アトゥムが語り始める。
「少し前の夜に急に魔剣を持ったシューが寝室に来たんです。父さんの命が狙われてるって。」
「そーだよ?だって言ってたし?」
「兄様がそんな嘘をつくとは思えませんよ。お父様」
「しかしだな。シューの聞き間違いということはないのか?傭兵の方にも来てもらってチューン王国の方にも来てもらったとなるとかなり混乱していそうだし。」
「絶対駄目。危ない。しばらくここに潜伏するけど、いずれは他の国に亡命するから。」
普通に親子の会話が繰り広げられるのをシュー一家以外の面々はポカンと見ていた。
そのやりとりでトリトンの警戒心はすっかり削がれてしまうのか少し口元が緊張から解放され緩む。。
「あの国危ないよ。特に大臣。ここかもっと遠いところで家族で過ごそー?」
「そうは行かない。我々は王族だ。あの国を治める義務がある。いざという時は大臣に凌いでもらう契りではある。元に短期間で劇的に変わるものではないが、それも一時的なものだ。早く戻らなくては。」
「だめ。俺は国より家族が大事。」
「………シュー王子。」
「………何傭兵さん」
「魔剣は返していただけませんか?そうすれば大臣もあなた方のことは襲いにならないかと。」
「やーだ。絶対駄目。」
トリトンが会話に入り込む。
「ま、まあでもともかくひとまずは無事な状態で何よりです。」
フロマも話に入る。
「シュー王子のご意見としては国に謀反を起こす奴らがいるから危険だという意見ですよね」
「うん。そーだよ。」
「それはどなたがお話しされてたのですが?」
「大臣。間違いなく聞いた。」
「ファサードが?奴はそんな事をする奴ではない!」
「あいつヤバイ奴だと思うよ。」
「私もあの方は嫌いです」
「あー。すみません。口を挟みます。………なるほど。ではこういうのはどうですか?その事実を元に調査を行い、何も問題がなければ国に戻っていただく。問題があればその問題を排除した後に戻っていただく。民たちにこの理由を発信すれば少しは混乱も落ち着くでしょうし。まぁ暗殺を企ててる者がいるとなっては余計な混乱を生むかもですが。」
「お、フロマナイスアイデア。チューン王国の我々が調査させていただければ中立性としては担保できるのではないかと。」
「うーん。」
シューは腕を組んで悩む。
「間違いの可能性が高い。………が疑念が生まれているのであればその担保は必要でしょう。………申し訳ありませんがトリトン王子それでお願いできますか?」
「はい喜んで。じゃあ一旦レアスサイドに戻って状況の報告と作戦会議しますか。パーズさんとヒーポさん一旦戻りましょうか。じゃあシュー王子また後で。」
トリトンとフロマは戻ろうとするが、傭兵2人は反応しない。
それに気づくトリトン。
「あれ。一旦戻って作戦会議を」
「申し訳ありませんがそれには従えません。」
パーズが近くにいたアトゥムとテフヌトに手刀をかまして失神させる。
そしてヒーポもその太い足でフロマに不意打ちのハイキックをお見舞いして、フロマは倒れ込む。
「な!?」
直ぐ様トリトンとシューは剣を抜いて臨戦態勢を取る。
「何を」
シューはすぐ様パーズを魔法で吹き飛ばそうとするが、おっとと手を制止するように前に出す。
そして盾にする様にパーズはアトゥムとテフヌトを、ヒーポはフロマを抱きかかえる。
「魔法を使ったらこの3人の命はないですよ。人質です。」
パーズはアトゥムにナイフを突き立てる。
「そもそもあなたがたの魔法じゃ彼らを巻き込まずに攻撃することは不可能でしょうし」
シューの魔法もトリトンの魔法も強力であるが、攻撃範囲を器用に調整することはできない。
すなわち人質等がいる状態では戦えないということである。
「パーズさん?何を?」
「おーっとパーズは偽名です。正しくはパズズなのでお見知りおきを」
「ほとんど変わんな」
呆れたようにシューが吐き捨てる。
「パズズさん。あなたは何を」
「魔剣を今すぐその場に置け。さもなくばこいつらの命はない。」
トリトンは驚愕する。
「いつ言うのがいいかずっと迷ってたんですよ。大臣から事情は聞いてたので。」
「………大臣の回し者」
「おっと早く魔剣を置いてください。ナイフが刺さっちゃいますよ。」
国王の腕にナイフが軽く刺さり、少量の血が流れる。
くっと言う表情を浮かべて、2人は魔剣を地面に置く。
「ヒッポグリフ。魔剣を取ってこい。」
「ポッポ!」
先ほどまでヒーポと呼ばれていたヒッポグリフという男はひとまず人質のフロマを魔剣の元まで走り、魔剣を取った後にパズズの下へ戻る。
「ポッポー!まっけん!まっけん!」
魔剣を2本持って喜びの舞を踊っている。
「我々の目的は魔剣。これでミッションコンプリート。魔剣を2本もとなれば我々の序列も一桁に行く」
「序列………魔剣………まさか。」
トリトンが驚愕する。
「おや?ご存じですか?ラグナロクです。私は序列83位パズズ。」
「くっ」
「ラグナロクって?」
「魔剣を集めてる組織です」
「………魔剣は渡した。人質の解放は?」
「ん?誰が魔剣を渡したら人質の解放をするなんていいました?」
「なっ!?」
トリトンは驚き、シューはパズズとヒッポグリフに対して冷ややかな目線を向けている。
「我々はこの国の行く末なんてどうでもいいんですけどね。まぁあの大臣との約束なんですよね。この国を治めたいかわりに魔剣をいただく。」
ヒッポグリフは魔剣を持った状態で近づく。
「まぁ大臣からすれば王族が残ってると自分が指揮取れなくなるので殺すもりなのでしょう。この気持ち分かるんです。」
にやりと悪い笑みを浮かべる。
「魔剣使いも同じ。魔剣の使い手は残しておくと非常に危険ですからねぇ」
ヒッポグリフが魔剣を振り上げる。
そして魔剣を振り下ろす。
2人の体から赤い液体が噴水のように噴き出て、2人はそこで倒れた。




