風の国編7話
トリトンはパーズとシューの戦いを眺めていた。
(王と姫の護衛についてはフロマがついてれば大丈夫。となるとこの戦い………)
「トリトン様。手をお貸しください。」
パーズが戦いながらトリトンに助けを求める。
シューもトリトンの同行を気にしていた。
(………自分の推測が正しければ………。でも違う場合、取り返しが付かなくなる………。)
トリトンは頭を掻きむしる。
(分からない。全く)
トリトンは地面に置いてある魔剣を手に取った。
(ひとまずパーズさんと協力してシュー王子を無力化。その後国王と姫の話も聞いて総合的に判断するのが吉な気がする。)
そしてトリトンは空気中の水の温度を変えて雨を降らせる。
シューはその雨を風で上方向に吹き飛ばして全く濡れていない。
一方パーズは雨が直撃しずぶ濡れになる。
その後パーズの服が凍る。
やべっと失態の表情を浮かべるトリトン。
その光景を見てほほ~と感心するシュー。
「ちっ」
「ごめんなさいパーズさん!」
トリトンが氷を解除しようとする矢先、その服の氷が少しずつであるが溶けていっている。
またトリトンの額にも汗が流れる。
涼しかった塔の温度がかなり上昇している。
「なんか暑い?」
パーズはシャドーボクシングをする。
服の氷はみるみる溶けていく。
トリトンはパーズの隣に立つ。
「ごめんなさいパーズさん。」
「気をつけてください。相手は魔剣使いです。」
「分かってます!」
トリトンは魔剣を振るって水の塊をシューに向けて発射する。
シューに到達する寸前水の塊が氷となるが、しかしその塊は突風ではね返されてトリトンたちの方をめがけて進んでくる。
その塊を2人は右に避けて交わす。
その後シューは再び突風を2人に向けて流すが、トリトンは自分とパーズの目の前に水の壁を出現させそれをすぐさま凍らせ、風避けとする。
風は氷の壁に直撃し、その力は左右に分散される。
シューはトリトンの手に持った剣に目をやる。
「トリトンさーん!」
戦闘中なのにテンションを特に変えずに話しかける。
「それってもしかして水の魔剣だったり?」
「え………?はい。」
「ふーん。気をつけてねー。」
「………何が?」
「背中」
突如トリトンとパーズの後ろから突風が吹き荒れ、2人は氷の壁に押し付けられる。
「くっ」
トリトンはすかさず、自分とパーズの後ろに氷の壁を生成し、風避けを作る。
そして横からも上からもモグラ叩きのようにいろんな方向から風が吹いたり止んだりるため、トリトンは四方に氷の壁を生み出し四角い家のような空間を作り出す。
外からは突風の音が絶え間なく広がっている。
「これじゃジリ貧か。」
「じゃお先ー」
シューの声が聞こえてくる。
そしてカツンカツンと足音がうっすら聞こえる。
「トリトン様。魔法の解除を。すぐに追います。」
「はい!」
トリトンは氷を水に変えて、壁を解除する。
すると頭上にシューがいた。
「なーんて」
シューはパーズに剣を振るう。
「速」
パーズはそれをナイフで咄嗟に受け止める。
「速いな」
「そう?」
シューは剣を振り抜きパーズは後ろに飛ばされる。
着地の体制を取るがパーズは何かに違和感を感じる。
「!?」
速度が減速することなくむしろ加速していっている。
パーズの進行方向に突風が吹いていた。
「ではでは」
シューがそう言うとパーズは塔の壁に突風と共に叩きつけられ、あまりの勢いに砂煙が舞う。
「パーズさん!」
「じゃあトリトンさんも」
トリトンの体が上に浮き上がる。
そして突風とともに後ろに大きく吹き飛ばされる。
「くっ」
壁に激突する寸前、壁に水の塊を出現させる。
トリトンはその水に叩きつけられクッションのかわりになる。
トリトンは直ぐ様水を解除して地面に着地する。
「やば。近づくのもままならない。」
「ふふふ。」
トリトンは思考を回す。
「ひとまず」
トリトンは周囲に雨を降らせる。
その雨をシューは風を使って当たらないようにし、シューの周り以外だけが濡れていく。
「これでどうだ」
その中で魔剣を使って水の塊を再び飛ばす。
その塊をシューは吹き飛ばさずに避けて躱した。
避けたところでシューは踏ん張るが、地面の濡れている箇所が凍っていることに気づく。
その拍子にシューは躓いてしまう。
「やべっ」
トリトンはその隙を見逃さずに、床の氷を解除した後に接近する。
(多分。あの風は一方向にしか飛ばせないんだと思う。なら)
雨は降り続けているがシューは濡れていない。
風で今もなお濡れないように防いでいる。
トリトンはシューの眼前まで迫り剣を振るう。
しかしシューはそれを剣で防ぐ。
「雨が振るのも魔剣?の力」
「え?」
戦闘中もお構いなしで話してくるシューに調子が崩される。
そしてシューは話している中で、かなり速いスピードで剣を振るう。
それを咄嗟に防ぐトリトン。
続けて2撃目で最短距離で剣がトリトンに届きそうになるが、それもトリトンが防ぐ。
「速い」
剣の速さに驚くトリトン。
「風の国はねー。速いんだよ。」
目にも留まらぬ剣劇でトリトンを攻撃する。
トリトンはそれをなんとか防いでいる。
(この人剣の腕も凄い!遊び呆けてるんじゃないんか)
額に汗を流し焦って表情を浮かべる。
(でも)
トリトンは攻撃の中で突きを繰り出しカウンターをするも、シューは後ろに下がってかわす。
その後シューの四方八方に水を出現させてそれが猛スピードでシューの方へ向かう。
「これで!」
シューの下から上にかけて突風が上がっていき、雨ももろとも噴水のように水が上に飛ばされる。
そして水が地面にバシャバシャと音を立てて落下する。
シューが離れた位置からトリトンを見つめる。
「トリトンさんすっごくつよいねー」
「シュー王子もすごく」
「いやー。それほどでもー」
トリトンは話しながら考える。
(上方向に風の壁を作れば、当たる前に上に行くから攻撃が当たらないのか。ヤバ。無敵じゃね?)
トリトンは考え続ける。
(………このまま雨を降らし続けてれば決着はつかないで足止めは出来る。となるとこのまま国王と姫を上から連れ出してくるまで足止めをしておくのが先決か。それか………)
トリトンはパーズが吹き飛ばされた方向を向こうとする。
(パーズさんが起きれば2対1になるからそれで接近戦をやるほうが………)
しかし砂煙を上がっていた方角を見ても、壁の損傷はあれどパーズの姿はそこにはなかった。
(あれ………?いない………?)
方角が間違ってたかと他の方向を無効とするが、先に金属音がする。
その方角を見るとシューが魔剣を下に置いていた。
魔剣を置いた後も雨は降り続けているが、変わらずトリトンには当たっていない。
「?」
「トリトンさんの真似ー」
「???」
シューは話し続ける。
「トリトン王子がいい人と見込んでます。」
「え?」
「多分このまま決着付かないと思うんだよね。」
「えーっと?」
「あの傭兵2人は信用ならんしー。だから2人で上に行っちゃはない?」
トリトンは一旦雨を止める。
「やっぱり優しい」
そして考える。
(………元々王と姫の言うことを聞いて判断するつもりだったし、もし何かあっても足止めは出来る。それにこの人はそんなに悪い人には見えない。)
トリトンは魔剣を同じく地面に置いて手を挙げる。
「分かりました。一旦2人で上に向かいましょう」
「おっけー。さっすがー。じゃあ行こうか」
進もうとしたところで地面の下に魔剣があることに気づく。
「………魔剣放置はマズいかも。」
「………そうですね」
2人は魔剣を拾い上げる。
そして階段へ向かいます階段を登り始める。
「よーし。行こう行こう!」
トリトンたちの後ろから風が吹く。
「おおっ!?」
トリトンは驚くがその風のおかげで早く進むことができる。
「向かい風向かい風!さぁ急ごー!」
2人は塔をかけ登っていく。




