風の国編4話
一同はレアスサイドの城下町に到着した。
街の入口に馬車を停めて城へと歩いていく。
街には何やら暗いどんよりとした雰囲気が漂っていた。
辺りには露店のような建物はあるが、店番がいる露店が少なく、ほとんどお店等も開いているようには見えない。
また人も少なく、街を歩く人の半数以上が国の兵士と思わしき人で、商売の国とは思えないくらいには活気が見えない。
「普段だったら客引きがたくさんいるのですが」
ハワーがカグツチ達に説明する。
「国王が攫われたことは国民の方はご存知で?」
「えぇ。今は大臣が国を治めているのですが、国王が王子に攫われたことは大臣から連絡済みです。」
「なるほど。それで活気が?」
「えぇ。恐らくそうではないかと。」
「国王はかなり民から慕われていたのですか?」
「はい。かなり人気だったかと。」
「そうですか………」
「まずは城まで向かいましょう。そこで現在の状況と今後の作戦を話します。」
「兵士さん!」
ハワーの元に街の住民と思わしき人が近づく。
「どうか早く元の状況に戻してください!我々はもう限界です!」
「………我々も全力で探しておりますので………。」
「どうかお願いします!我々も生活がかかっているのです。」
「はい。善処します。」
縋り付く民を尻目にハワーは進んでいく。
「大丈夫です!我々が国王を連れ戻しますから!」
明るくトリトンが話し、民に一礼する。
そして先に進むハワーに追いつく。
「………凄く国王は人気なのですね。」
「はい。とても民から慕われているかと」
「そうですか」
カグツチ達は各々何か考え事をしながら街を進んでいく。
そして城に到着し、一同は大臣と謁見する。
玉座には大臣とその横に何名もの兵士が立っている。
大臣はヒゲを生やして、何だか細長い男だった。
「氷の国の方々!ようこそお越しくださいました!風の国へ!大臣のファサードです。」
ニマニマと大臣は満面の笑みを浮かべる。
ファサードの目線はトリトンの腰につけた魔剣に釘付けである。
「そのお腰の綺麗な剣をつけた方は?」
「はい。チューン王国軍特別作戦部隊隊長のトリトンです。」
ファサードは一瞬ん?という疑問の表情を浮かべる。
「あぁ~トリトンさん。本当にありがとうございます!ではこれが氷の魔剣で?チューン王国の方が何故水の魔剣を?」
トリトンも同じくん?と表情を浮かべるが気にせず続ける。
「いえ。実は」
トリトンはファサードに氷の国の事と水の魔剣のことを説明する。
「な、る、ほ、ど。氷の国の魔剣は奪われてしまい、それで水の魔剣の使い手に来てもらったと。」
ファサードはハワーの方を向く。
「君!よくやったね!褒めて使わすよ!」
「はい。ありがとうございます。」
「トリトンさんも本当にありがとうございます。では風の魔剣の奪還任務ですが」
「あの」
カグツチが声を上げる。
「この状況での発言で申し訳ございません。クリオネッタ王国騎士団 王女直属護衛隊隊長のカグツチです。」
「あぁ。それで?」
「この国には魔法の効果を打ち消す薬があると聞きました。そちらを提供いただくことは可能でしょうか?」
「んー。あー。えーっと君?」
ファサードはハワーの方を見る。
「その薬とやら確保してあげられるかな?」
「………はい。承知しました。すみません。カグツチさん。市場が現在あのような状況ですぐの確保は難しいかもです。」
ファサードはカグツチの前にいたロスカにも目線を向ける。
「………なんと美しい。私の妾にしてあげたいくらいです」
その目線に悪寒を感じ、カグツチはロスカの前に立つ。
「ロスカ姫は意思疎通が出来ない状態でしたよね?」
「………はい。」
「なんと可哀想な。君!ちょっとこっちに!」
ハワーに向けてこっちに来いとジェスチャーをして、ハワーに耳打ちをする。
その後周りにも聞こえるように声を出す。
「可能な限り早く薬を見つけて上げなさい」
そう言うとハワーは玉座の外へと出ていった。
「いやー。しかしロスカ姫は既に許嫁の方は?」
「………」
カグツチは少し表情に嫌悪感が出てしまう。
「聞こえてますか?」
「大臣」
近くに立っていた背の高い兵士が声をかける。
「任務のお話をした方がのよいかと」
「あぁ。そうしましょうか。ではトリトン様。任務の話をさせてください。」
「………はい。」
「では説明は私から。まずは名乗りますね。レアスサイド師団団長のオクシジーン」
大臣の近くにいた背の高い男がそう名乗る
「ハワーからも話はあったかと思いますが、1週間前に第一王子のシュー王子が、国王と王女を誘拐してどこかに逃げていってしまいました。その際に魔剣も一緒に持っていかれたみたいです。以来国を上げて国王と魔剣の捜索を行っています。」
「なるほど。」
「任務の達成条件は魔剣と魔剣の保護が第一優先です。続けて国王と王女の保護。その次に謀反者シュー王子の捕縛です。」
「………国王の命が第一優先ではないのですか?」
「魔剣が奪われた際は命よりも、国の命運がかかる魔剣を優先するようにとお達しを受けておりますので」
「………なるほど」
「トリトン様にやっていただきたいことは1つ。シュー王子と対峙して捕縛を試みてもらいたい。」
「なるほど。」
「魔剣の力は強大と聞きます。なので魔剣使いであるトリトン様に対峙していただきたいのです」
「なるほど。分かりました」
「ちょっと待ってください。」
アエリが口を挟む。
「あなたは?」
「特別作戦部隊副隊長の者です。トリトン様があまりにも危険ではないかと」
「我々レアスサイド師団もサポートしますので」
「シュー王子の実力は?魔法は?魔剣の力は?」
「………分かりません」
「?分からない?分からない場所に他国の王子を危険にさらすような真似を?」
「!?あなた王子だったの?」
ファサードが驚く。
「はい。まぁ」
「どうりで煌びやかなお顔なわけだ。えーっとあなた?大丈夫ですよ。レアスサイド師団は実力者揃いですから。サポートしますよ」
「まぁまぁアエリ。俺は大丈夫だからさ。」
「実はシュー王子は普段から出歩かれてばかりで魔法や剣の練習をしている姿を見たことがありません。普段から城下町で遊び呆けていますので。強さの秘訣は鍛錬あるのみです。なので軍の隊長を務められているほどの実力であれば大丈夫かと。」
「だったらあなた方だけで行けばいいのでは?実力がないと見込んでいるのであればあなた方でも救えますよね?トリトン王子が負けるとは微塵も思いませんけど、わざわざ危険な場にトリトン様を行かせようとする魂胆が気に入りません」
「アエリ。一旦ストップ」
「魔剣の力は未知数です。どうか同じ魔剣使いのお力をお貸しいただけないでしょうか?我々も全力でサポートいたします。」
オクシジーンが頭を下げる。
「頭を上げてください。自分は大丈夫ですから。アエリも心配ありがとうね」
アエリは不服そうにそっぽを向いた。
「それで場所はわかっているのですか?」
「はい。ここから南西に大きな塔があり、そこに潜伏している可能性があることを突き止めました。」
「早速で恐縮ですが、本日塔に向かう予定ですのでご同行いただけないかと。」
「はい。分かりました。」
「いやー。トリトン王子すみませんね!よろしくお願いしますね!ところで」
ファサードは再びロスカの方を見る。
「ロスカ姫が戦場に行くのは危険かと思いますのでどうでしょう?任務の間、お城内に残っては?我々の団長も残るので安心ですよ」
「………いえ。大丈夫です」
カグツチはすぐに断りの連絡を入れる。
「おや?大丈夫ですか?戦場は危険ですよ?」
「大丈夫です」
「本当ですか?そもそもあなたは護衛なのに何故姫はそんな状態に?」
「それは………」
ラムチが話に割り込む。
「姫って結構おてんばで旅とかが好きなんですよー!ねっ!カグツチ?景色とかを見せてあげればもしかしたら戻るかもしれないし!」
カグツチにウィンクして、話を合わせるようにとジェスチャーする
トリトンも話に入る。
「氷の国が魔剣によってヤバい状況になってるので、多分それを気にしてるんだと思います!魔剣使いが近くにいた方がより安心ってことだよね?」
同じくカグツチにウィンクして、話を合わせるようにとジェスチャーする。
「………はい。そう言った理由で姫には同行いただこうかと」
「ふーん。まぁいいか。了解です。よろしくお願いしますね」
「では皆様これから塔に向けて出発いたしますので」
風の国の兵士の呼びかけとともに一同は風の塔へと向かっていった。




