風の国編1話
ここまでのお話を読んでいただいた方、
またこのお話を偶然開いていただいた方も本当にありがとうございます。
ここまでの簡単なあらすじを転記しますので、もしお時間等よろしければこのお話から読んでいただければ嬉しいです。
(ここまでの話のネタバレを含みます。)
氷の国クリオネッタを魔女が襲い、氷の国は滅亡寸前、姫のロスカも氷の魔剣によって物言わぬ人形となる。
そこで姫の幼馴染で護衛騎士のカグツチは姫と国を救うため、ひとまず同盟国の水の国チューンに救援を頼みに行くことに。
水の国に着いた矢先、水の国の魔剣が奪われそうになっていたので、それを阻止。
水の魔剣の使い手トリトンを仲間に加えて、氷の国に戻り次は何をするかを考えていたところ、風の国の魔剣が奪われたと連絡が来ました。
風の国レアスサイド。
国土の大半が草原と砂漠と小さな丘で、常に心地のよい風が吹いている。
その広大な土地を多くの遊牧民たちが日夜進んでおり、国土には転々とテントが張られている。
また大国の中でも最も自由な国である。
人々の商いも自由かつ多種多様で盛ん。
様々な種類の行商人は国中の至る所に転々といることから付いたあだ名が商売と自由の国。
また多種多様で自由な商売をしていることから、各国との関わりも最も深い国と言われている。
緑の制服を着た男はハァハァ吐息を切らしている。
一同は状況を呑み込めず戦慄していた。
ハッセルが口を開く。
「失礼ながらあなたはどちら様で?」
緑色の服を着た七三分けの男は勢いよく敬礼をする。
「申し遅れました!レアスサイド師団ハワー·マドファです!」
「なるほど。私はクリオネッタ王国のハッセルと申します。状況を詳しくお聞かせ願えますか?」
「はい。レアスサイドの国宝である風の魔剣が奪われました。その奪還に各国のお力をお貸しいただきたく。」
「………なるほど。謀反とおっしゃいましたが何があったのですか?」
「レアスサイド第一王子のシュー王子が、魔剣を持ち出し、国王と王女を誘拐されていってしまったのです。」
「………なるほど。………その理由は?」
「………分かりません。ただ風の魔剣を持ち出されたということは国の危機です。国王不在時ですので大臣が緊急事態と判断され、今魔剣の奪取の任務が始まっています。」
トリトンが怪訝な表情を浮かべて問いかける。
「………家族を誘拐するなんて、そんなに仲が悪かったのですか?」
「………すみません。私はあまり王族の方とは関連がなく………。」
「そうですか。失礼しました。」
ハッセルが顎に手を当て考える。
「なるほど。それで我々に増援を頼みたいと」
「はい。魔剣の力は強大です。………なので………魔剣の力をお貸しいただきたく………。」
ハッセルが複雑な表情を浮かべる。
ハワーはまちの周りを見渡す。
そこには変わらず氷漬けにされた者たちが転々と存在していた。
「………もしかして………クリオネッタ王国も一大事ですか?」
「………」
ハッセルは少し複雑な表情を浮かべた後に口を開く。
「………はい。実は我々も最近魔剣を奪われてしまい………」
「………なるほど。………そうですか」
「もし俺でよければ」
「トリトン様!!!」
トリトンが喋りかけるも、アエリが大声をあげる。
一同がびっくりしてアエリの方を向く。
「イマイチ信用なりませんね。混乱に乗じて魔剣を奪おうとしている可能性もあるかと」
ハワーはアワアワと困っている。
「アエリ。落ち着こう」
「そもそも一国の王子がなぜ自分の身内を誘拐などする必要があるのですか?国の転覆が目的ならすぐさま魔剣の力を使って征服できるではないですか」
「そ、それは………」
「まぁまぁ。いったん落ち着こう。理由はおいおい確認してさ」
「………王女ですか?」
「………え?」
状況が飲み込めずトリトンは聞き返す。
「………誘拐された王女を助けて、いい関係になろうとしてるのですか?」
「………え?」
全く状況が飲み込めずトリトンは首をかしげる。
「一夫多妻制でも目指してるのですか!?すでに許婚がいらっしゃるのに!防衛任務をほっぽり出して!他の女に会おうとする!副隊長である私の意見も聞かずに!」
「なんかごめん!落ち着いて!」
車椅子に座りながら怒るアエリをトリトンが必死になだめる。
そのやりとりを尻目で見ながらハッセルが話す。
「………大変申し訳ありません。………今はお力になることができず」
「そうですか………。」
ハワーががっくしと肩を落とした後に、トリトンの方を向き、その腰にかけられた剣に目線を向ける。
「そちらの………トリトン王子?は魔剣使いの方なのですか?」
揉めているトリトンがハワーの方に顔を向ける。
「え?はい。一応」
「トリトン様!」
そしてハワーは車椅子に乗ったロスカを見つめる。
その視線を感じ取りカグツチがロスカの前に仁王立ちする。
「………そちらは氷の国の王女様ですか?」
「………」
カグツチは警戒する。
「王女様にも何かが起きているのですか?」
「………」
「………我々なら力になれるかもしれません。もしよければ教えていだけませんか?」
「………姫は今意思疎通ができない状態です。ただ稀に何か反応を示すことがあります。多分………美味しいものを食べたりとか」
「………なるほど。………レアスサイドは貿易国家です。世界各国から色んなものが集まります。………魔法の力を打ち消す薬も売っていた記憶です。人がいる分色々な情報も………。お力になれるかと」
カグツチ達が驚きの表情を浮かべ、そしてカグツチが食い気味に質問する。
「それは魔剣の力にも対抗しうるものですか?」
「それはわかりません。しかし………もし魔剣の力をお貸しいただけるのであれば、我々も王女様の魔法解除に最大限協力させていただきます。」
カグツチはトリトンの方を見つめる。
トリトンはうーんと、顎に手を当て熟考する。
「……………分かりました。力をお貸ししましょう。」
「〜〜〜っ!!!」
トリトンの回答に対して、アエリが歯を食いしばる。
「またその女にっ!」
言いかけてアエリは止まり、しばらく考える。
そして怒りの表情が収まっていく。
その表情の変化を恐る恐るトリトンが見ていた。
「………よろしいのですか?」
カグツチがトリトンに尋ねる。
「うん。………防衛はほかの皆にお願いしよう。」
「………本当にありがとうございます」
カグツチは深く頭を下げる。
「って勝手に決めてごめんなさい。ハッセルさん。それで大丈夫でしょうか?防衛には穴を空けないようにしますので」
「………」
ハッセルも怪訝な表情を浮かべて、熟考していた。
そしてハワーに尋ねる。
「今の国の状態は?国王不在で治安等はいかがでしょうか?」
「はい。………普段から大臣は有事に備えておりますゆえ、安定はしております。が国民はやはり不安な状態ですね。」
「シュー王子が国を襲う可能性は?」
「………襲うのであれば魔剣を奪った時に襲っていると思いますので、恐らく可能性は低いかと」
「魔法の薬はいつ準備は頂けますでしょうか?」
「………それはもう早急に」
「………そうですか。」
ハッセルはカグツチとラムチを見る。
「カグツチ!ラムチ!風の国に同行してくれ。ロスカ姫を連れてな。」
「え?また旅行?やったわね」
ラムチがロスカに楽しそうに話しかける。
「旅行ではない。少しでも早く姫を元に戻す努力をせねばならん。それに協力する人員は多いほうがよいだろう」
カグツチは俯き、そして考える。
(今風の国は不安定な状態だ。そんな中で姫を連れていっていいのだろうか………?でも………)
カグツチはロスカの方を見つめる。
(………ロスカ姫が………もし意思表示が出来ないだけで意識があるのだとしたら………。人とのお話しを誰よりも好む姫にとってそれはあまりにも………。一刻も早く姫を元に戻さないと………。)
ずっと考え込んで動かないカグツチを一同が見つめる。
そんなカグツチの肩をトリトンが叩く。
「大丈夫。俺もついてるからさ」
トリトンがニコリと笑う。
アエリが再び不機嫌そうな表情を浮かべる。
「………分かりました。姫は必ず私がお守りします。」
カグツチは同行を了承した。
「よし。トリトン王子。そちらでよろしいですか?」
「ありがとうございます。兵士たちも何人か同行させます。」
「ありがとうございます!」
ハワーも頭を下げる。
アエリ!」
「………はい」
機嫌が戻り、アエリは自分が同行すると信じ、少しだけ嬉しそうな表情を浮かべる。
「防衛の指揮はしばらくお願いしてもいいかな?」
「………?」
状況が飲み込めずぽかんとした後に、アエリがプルプルと震える。
「………私に同行するなと?」
ラムチが痴話喧嘩を見るようなニヤニヤした表情を浮かべる。
そしてアエリが爆発する前にラムチが助け舟を出す。
「やっぱり王子のお目付け役も必要ではないですか?」
「!!!」
アエリは目をキラつかせ意外そうな表情を浮かべラムチに目線を送った。
「そうです。副隊長として、お目付け役として、チューン王国の王子に相応しい行動をしているか私は見る必要がありますから。」
「そ。そっか。了解。じゃあ防衛は………マヴロ!」
「はい。トリトン様」
トリトンが話すと、優雅な雰囲気をまとったロン毛の青年が前に出てくる。
「防衛任務の指揮は任せてもいいかな?」
「はい。何なりとお任せください。」
「ありがとう。後は………」
トリトンは兵士たちを見渡す。
「………フロマ」
「へーい!」
狐のような顔をした怪しい糸目の青年が近づいてきた。
「風の国に同行をお願いしてもいいかな?」
「へーい。喜んで」
「ありがとう。てなわけでハワーさん!お力をお貸ししますよ!」
「ありがとうございます!明日には出発させていただければと思います!それで加えて恐縮なのですが………」
ハワーが気まずそうに話す。
「寝床をご提供いただけないでしょうか?」
クリオネッタ王国はかなり気温は低く、野宿をすると風邪は引いてしまうか、それ以上のことにもなりかねない。
「あ、すみません。我々もお貸しいただけますと幸いです」
「はい。それは当然ご用意しております。立ち話もあれですし、城の中に兵士用の宿舎もあります。そちらで今後の作戦も話していきましょう。」
一同は城へと向かっていった。




