水の国編25話
あれから2,3日が経ちカグツチ達一行はクリオネッタ王国の城下町の入口へと到着した。
カグツチ達一同は馬車を停め街に降りる。
街には変わらず氷像となった住民たちが転々としており、兵士たちは一同深刻そうな、あるいは悲しそうな、あるいは同情の表情を浮かべる。
トリトンは深刻な表情を浮かべながら、氷像の一つとなってしまっている兵士の元に駆けつける。
そして自分の手を氷に当て念じる。
カグツチ達はその姿を見て息を呑む。
しかし氷像は変わらず氷像のままである。
「………ごめん。俺の魔法なら氷像溶かせると思ったけど………。」
カグツチ達はトリトンの魔法で、氷を水か水蒸気に変えることで事態の解決が図れないかと内心期待していたが、結果は有効ではなかった。
一同は少し落胆する。
「………いえ。ありがとうございます。試していただいて」
カグツチは顎に手を当てる。
(………この氷は火でも溶けず、水にも変わらなかった………。)
そんなやりとりをしていると、奥から近づいてくるものが一人。
ハッセルが何かを引きずりながらカグツチ達一行の方へと近づいてきていた。
ラムチはそれを見つけて手を振る。
そして近づいたところでカグツチが口を開く。
「ただいま爺さん。」
「あぁ。おかえり。」
ハッセルはカグツチに向けて優しく微笑む。
「あらお爺さん。そっちは大丈夫だった?」
ラムチの言葉の後に、ハッセルは無言で後ろを指さす。
すると後ろには盗賊が数人縄で縛られてげんなりとしていた。
「盗賊ごときに遅れは取らん。捕らえておいた」
「まぁ貴重な労働力」
「盗賊どもには身体で罪を償ってもらうとしよう。」
ハッセルはやり取りの最中、トリトン達に目線を向ける。
そしてトリトンが前へ出る。
「私はチューン王国騎士団特別作戦部隊のトリトン·チューンと申します。国王の名を受け我々特別作戦部隊は復興に向けて全力を注がせていただきます。」
トリトンは胸に手を当てて敬礼をする。
他の兵士たちもそれに合わせて胸に手を当てる。
「申し遅れてしまい申し訳ございません。クリオネッタ王国元騎士団長のハッセル·ホーテンシスと申します。この度は本当にありがとうございます。」
ハッセルは深く頭を下げる。
「いえ。頭をお上げください。同盟国として当然のことです。」
ハッセルは頭を上げる。
「トリトン様のことは耳に噂を挟んでおります。ロスカ姫の許嫁の」
「あっ。それは」
話している最中にアエリが勢いよく、車椅子を転がして前に出てくる。
「申し遅れました。特別作戦部隊副隊長のアエリ·ウーホスです。よろしくお願いします。」
アエリはハッセルを表情を変えないまま睨みつける。
「同盟国として御国を助けるのは当然の責務ですが、いきなり許嫁云々は不躾ではありませんか?」
「これは失礼しました。お詫び申し上げます。」
「あ………。いえ。お気になさらず………」
「爺さん。今の街の状況は?」
「あぁ。街については特に変わってない。野盗が数人来たがそいつらはいずれも捕らえておいた。」
トリトンが口を挟む。
「なるほど。街全体の警備についてはこの後詳しくお話をさせてください。」
「分かりました。ありがとうございます。」
ハッセルはカグツチの方を向く。
「そっちの状況は?」
カグツチは水の魔剣の争奪の事、ラグナロクという相手のことを一通り話した。
「………なる程な。魔剣を狙うラグナロクという組織………。女が最近魔剣を取ってきた?という情報から見ても、氷の魔女との接点はありそうだな。」
「うん」
「………そして水の魔剣では姫の状態は解除できなかったか。」
「すみません。力及ばず」
「いえ!魔剣の力をお貸しいただけること自体がもはやどれだけ感謝しても足りない事柄です。」
「ちなみに姫様。水の国のスイーツ食べたらにっこり笑顔になったのよ!」
「なるほどな。………何か魔法を解く手がかりが何処かにあるのかもしれないな………。とはいえ姫の手を触るとは………カグツチ………お前………」
ハッセルの少し呆れた表情にカグツチはバツが悪そうな表情を浮かべつつも続ける。
「………それでさ。次の目的だけど」
「あぁ」
「トリトン王子とも話して、姫の魔法を解ける可能性が一番高いのは火の魔剣だと思うんだ。」
「………あぁ」
「………だから火の魔剣に関する情報を仕入れたい。多分マガハラ王国にあるんじゃないかって話してた。これからマガハラ王国の情報を探りたい」
ハッセルが少し表情を強張らせる。
「………マガハラ王国か。………東に存在する小さな島国。だがこの国のことは知らないものが多い。情報が少ないし、そもそもマガハラ自体が鎖国しているから。当然………クリオネッタ王国にも接点がない。」
ラムチも少し深刻そうな表情を浮かべている。
カグツチはただ黙って決意に満ちた目でハッセルを見つめていた。
その風景をトリトンたちは固唾を飲んで見ていた。
「………そもそもマガハラに火の魔剣があるとも限らん。ラムチの話を聞くに姫にも何か変化があると聞いた。まずはこの国の復興、そして次にまずは地道に魔剣の情報収集が先ではないか?焦る気持ちは分かるが。」
「………分かった」
カグツチは少しだけ落胆した表情を浮かべる。
「………それで次は?」
落胆しながらカグツチはハッセルに尋ねる。
周りの者たちも固唾を飲んで見守る。
「………そうだな。………ひとまずは護衛にも来て頂いて、防衛についてはひとまずは解決したと言っていいだろう。だから次は魔剣に対する情報収集だ。」
「情報収集?」
「あぁ。魔剣については各国分からないことが多すぎる。それに姫にかかった何かを解除するにはまずは魔剣の力の正体を知ることが重要だろう。」
「………なるほど」
「えっと………何処に情報収集を?」
トリトンが尋ねる。
「そうだな………。魔法の大国ヘリオローブまで」
カグツチとトリトンは納得したような表情を浮かべる。
「なるほど」
トリトンの部隊の一人が手を挙げて声を上げる。
「ヘリオローブとは何ですか?」
ハッセルが答える。
「魔法大国ヘリオローブ。世界一の魔法学校や研究施設を兼ね備えた、まさしく魔法大国だ。この世界で最も魔法が発展しているのがヘリオローブだろう。」
「なるほど。ありがとうございます。」
うむとハッセルは頷く。
「幸いヘリオローブはクリオネッタ王国とも親交がある。」
「あ、チューン王国もありますよ!」
トリトンが口を挟み、再びうむと発生するが頷く。
「私の旧友も魔法の研究をしている。そこに姫を連れていき、魔剣の情報収集と姫の魔法に関する見解を聞いてくる。あわよくば解除も狙う」
「………分かった。」
カグツチは決意に満ちた表情を浮かべる。
「少数精鋭で姫の護衛をしながらヘリオローブに向かう。トリトン王子。」
ハッセルがトリトンを見つめる。
「図々しいお願いで申し訳ありませんが、兵士を何名かこちらの任務に動員いただけないでしょうか?」
トリトンは笑う。
「もちろん!自分たちに出来ることなら!」
カグツチとハッセルが深く頭を下げる。
そしてハッセルは頭を上げる。
「よし。では作戦の実行時期だが」
「助けてくれー!!!」
叫びながら緑色の服に鎧を着た兵士が遠くから駆け寄ってくるため、ハッセルは言葉を止め、一同はその兵士に注目する。
そして一同警戒の体制をとる。
その男が近づいてくるもの、他の兵士に取り抑えられ動きが止まる。
「助けて!話を聞いてくれ!」
緑の兵士はもぞもぞと言葉を吐き出しながら抵抗している。
「一旦ストップ。離してあげて」
トリトンが命じると走ってきた男は解放され膝立ちになる。
そしてハアハアと息を整える。
トリトンは優しく声をかける。
「突然すみません。何かありましたか?」
話の中でも念のため一同は警戒を緩めることはなかった。
そして緑の兵士は息を整えながら衝撃的な言葉を発する。
「レアスサイドで謀反です!魔剣が!強奪されました!お助けください!」
一同に戦慄が走った。




