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十国十魔剣伝  作者: 禄之羽礼
水の国編
29/30

水の国編24話

トリトンは車椅子を確保後、チューン王国特別作戦部隊を緊急招集。

トリトンは部隊のメンバー達に氷の国の護衛任務を受けたことを伝え、明日有志を募って出発すること。

ずっと氷の国に常駐するわけではなく、交代制で氷の国にローテーションで滞在していくこと、また長期の任務が予想されるため事情がある場合は無理して同行する必要のない旨も伝えた。

部隊の者たちは急な要請に困惑するも、100名ほどの部隊の内、家庭の事情等があるものを除き、ほとんどのメンバーが氷の国への同行任務を同意。

そうした隊員たちに敬意と感謝を込めてトリトンは深く頭を下げた。

そしてその翌日90名程度の隊を引き連れてカグツチ達一行はチューン王国を離れ、クリオネッタ王国へとむかうことになった。

一行は多数の馬車に乗り、90名程度の大隊にてクリオネッタ王国へと出発する。

あぜ道を揺られながら馬車達は進む。

その一つの荷台の中でカグツチ、トリトン、ロスカ、ラムチ、アエリが入って座っていた。

ロスカとアエリは車椅子に乗っている。

トリトンの腰には鞘に入れられた水の魔剣が煌びやかに光って刺さっている。

「たぶん長旅になるね。」

「そうですね」

馬車は長い道のりを少しずつ進んでいく。

「カグツチ」

「はい」

「国に戻った後はどうする?」

「え?」

「クリオネッタ王国の皆さんは氷漬けにされてるんだよね?俺の魔法で、国の人達の氷を溶かせるかは試してみるけど、もしうまく解決しなかったら」

「………」

カグツチは顎に手を当てて考える。

(………水の魔剣だと姫の解除はできなかった………。もし王子の魔法でも溶けないとなると)

カグツチの脳裏に火の魔剣のイメージが浮かぶ。

「………火の魔剣があれば………?」

「火の魔剣?」

「………でも場所が分からないって………」

「………俺が知ってる言い伝えだと………魔剣はさ確か大国がそれぞれ1本持ってるって話。水の魔剣は水の国のチューンに、氷の魔剣は氷の国クリオネッタが持ってた。ってことはさ」

「………てことは?」

カグツチが固唾を呑む。

「火の国って言われてるマガハラに置いてあるんじゃないかなって思ってる。海を挟んだ島国の」

「!!」

ラムチがハッとした表情を浮かべる。

カグツチも驚いた表情を浮かべる。

「クリオネッタ王国に戻ったらすぐに火の国に向かいましょう!」

「ただ一つ難点があってさ」

食い入るようにトリトンの目を強く見つめるカグツチ。

その目線を気まずそうに見ていた。

「マガハラとチューンは国交を結んでないんだ。関わりがないから上手く協力してもらえるか………」

「そんな………。クリオネッタ王国は………」

「うーん。………ないわね。一旦今行くのは難しいんじゃないかしら?」

「そんな………」

ラムチの言葉にうつむくもすぐに顔を上げる。

「一人でも乗り込みます。居場所が分かったなら」

カグツチは立ち上がる。

カグツチの手をトリトンが掴む。

「ごめん。まだ確定してるわけじゃないから。確定してないのに伝えてごめん」

「可能性があるなら」

トリトンは立ち上がって、馬車の外に出ようとするカグツチの両肩を掴む。

「落ち着いて。まずは今伝えるのは早計だった。ごめん。姫の状態を一刻も早く戻したい気持ちは俺たちも同じ。でもここで乗り込んで何かあったら姫も悲しむと思うし、これは俺の推測だから間違ってるかもしれない。だからまずは魔剣の情報収集から始めよう。俺達も全力でサポートするから」

アエリは冷ややかな目線でそのやりとりを見ている。

「……………」

カグツチは俯いて黙り、そしてその後再び腰を掛ける。

そしてしばらく黙った後に口を開く。

「………すみません。………取り乱しました。」

「いや。こちらこそごめん」

ラムチはそんなやり取りを見てホッと胸をなで下ろしいる。

「………爺さんは何で知らなかったんだろ?」

「………さぁ。あの爺さんのことだし、確定してないから伝えなかったんじゃないかしら?忘れてた可能性もありそうだけど」

「………そうですか」

トリトンは少し首を傾げた後に、話の話題を切り替えるようにパンと手を叩く。

「いやー。しかしクリオネッタ王国はまだ先だよね?」

「そうですねぇ。2、3日はかかるかと」

「じゃあさ。カグツチの尋問タイムだな」

俯いていたカグツチが顔を上げ、呆気にとられた表情を浮かべる。

「あら。いいですね。話してましたもんね。ロスカ姫とのエピソードを話してもらいましょう」

トリトンとラムチは悪い笑みを浮かべる。

アエリも遠くで小さく悪い笑みを浮かべている

「ロスカ姫との出会いとかどこに惹かれたとか、尋問タイム」

「え、えぇ?ひ、惹かれた………?………自分は普通の従者の一人ですよ」

「えぇ~?」

「ほんとに〜?」

トリトンとラムチの追求に、困った表情を浮かべるカグツチ。

「何かさ。ロスカ姫とのエピソードとかはないの?」

カグツチは物思いにふけ、ふと子供の頃を思い出す。




カグツチが8歳くらいの頃

ちょうど同年代くらいの友達がいなかった2人はいい遊び相手だった。

そんなある日カグツチはロスカと雪が積もった道を進んでいた。

この日は遊びではなく、あることをしようとしていた。

「確かこの辺を通ったて話だよね?」

「はい。そうですね」

カグツチは弱冠8歳にしてハッセルからの指導を受け、ロスカとすでに敬語で接していた。

「フーシュさんの結婚指輪探してあげたいね。」

時間は少し前に遡る。

この日いつものように街を散歩していた2人はフーシュという街の人が、何やら地面を探している姿を見て話しかける。

聞くところによると結婚指輪をなくしてしまったとのことであった。

そんな姿を見たロスカは探すことを快諾。

そんなロスカについていくことをすぐにカグツチも即決で了承した。

すでに町中は探したが、指輪は見つかっていない。

聞くところによると、町中はあまり雪が多くなく今通っている雪の積もった道を、先日通っていたとのことで、今回2人はここに出かけていたのである。

しかしそんな雪を見てカグツチが呟く。

「これは………なかなか凄い雪の量ですね。探すのも大変そうです。」

「………」

ロスカはじっと雪を見つめた後に、跪いて雪をかき分け地面を探し始めた。

「!?姫?」

ロスカは一生懸命雪をかき分けて指輪を探している。

「姫?風邪を引いてしまいます。」

「ありがとう。でも結婚指輪は一生よ愛の証だもん!絶対探してあげたい!」

そう言って雪の冷たさも鑑みずに地面を探し続ける。

そんな姿を見て心を打たれ、カグツチも探し始める。

「私が探しますので!姫は休んでいてください!」

「いい!2人で探そ!」

「………しかし」

「いいの!」

カグツチはそれ以上は制止せずに雪道を頑張って探し続けた。

そうして探し続けること15分程度、雪をかき分けていくと、キラリと銀色に輝く何かが見つかる。

「あっ!」

ロスカがそれに気づき拾い上げる。

カグツチは探す手を止めてロスカの方を見る。

「あったよ!これだ!」

ロスカの手には銀色に輝く指輪が乗っていた。

「おおお!」

思わずテンションが上がって喜ぶカグツチとロスカ。

「やったやった」

カグツチは立ち上がってロスカの近くへと寄っていく。

「流石は姫です。」

「じゃん!結婚指輪って憧れちゃうよね」

手のひらに乗せた結婚指輪を見せつけるロスカ。

その手を見てカグツチはあることに気づく。

手が寒さ真っ赤っ赤になっていたのである。

「姫!その手は!」

「あー。すっごく今日は寒いね」

はみかみながら答えるロスカ。

「手出して!温めて!」

「い、いえ!私の手も冷たいですし!」

手を開いて制止するジェスチャーをするが、それをお構いなしにロスカは手を絡めてくる。

「………あ、ちょっとだけ温かい。私冷たい?」

「………いえ。姫様は温かいです。」

「え?そうかな?」

カグツチの頬がちょっぴり赤くなる。

ロスカはちょっと嬉しそうに微笑んでいる。

そしてカグツチは物思いにふける。

(こんな手になってまで人助けを。本当に姫はお優しい。いつか騎士になって必ず姫のことを守る。そのために訓練を続けるし、魔法だって絶対習得する………でも)

ロスカは手を離す。

「温まった!ありがとね。」

「いえ」

「戻ろっか。フーシュさんに渡してあげないと」

「はい」

2人は雪道を戻っていく。

(今は………姫の手を温めてあげたい。誰よりも優しい姫の手を。俺の手だって冷たかった。きっと温まってない)

そう思っているとカグツチが躓いて、地面に手をつく。

「大丈夫!?」

「はい」

カグツチが躓いた先にはどんぐりが落ちていた。

カグツチはどんぐりを拾い上げる

「姫。樹の実が落ちているので足元には気をつけて。」

「うん!」

カグツチは拾い上げたどんぐりを見つめる。

(………どんぐり………)

ロスカは物思いにふけるカグツチを見て不思議そうな表情を浮かべる。

(………このどんぐりに火を起こして………姫の手を温めてあげたい。)

カグツチがそう願うと突如としてどんぐりから火が上がった。

カグツチとロスカは驚愕の表情を浮かべる。

「え!?火!?」

ロスカは困惑している。

カグツチも困惑をしていたが、深呼吸をして姫に手を差し出す。

「これで温まりませんか?」

ロスカはキョトンとした後に、ニパッと笑顔になって答える。

「うん!」




カグツチがそんな回想に浸っている中で、ニマニマしながらラムチとトリトンはそんなカグツチを見つめてヒソヒソと話していた。

考えてるなとかたくさんありそうですねといったひそひそ話が聞こえてくる。

カグツチはその視線に気づく。

「………すみません。特にエピソードの記憶はないです」

「ははーん。」

見透かしたような目線を向ける。

「まぁいつか気が向いたら教えてくれな!楽しみにしてる」

「………はい」

馬車は着々とクリオネッタ王国へと進んでいった。

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