水の国編22話
救護室は変わらず喧騒に包まれており、人が絶え間なく出たり入ったりしている。
カグツチたち4人はその場で待機をしていた。
そこにトリトンが入ってくる。
トリトンは救護室に入ると、周りを見渡す。
そしてアエリを見つけ、早歩きで近づいてくる。
「遅くなってごめん。」
「おかえりなさい」
ラムチが手を振って応える。
トリトンは4人を見渡す。
「あれ?ゼストスとクリオスは」
「出ていきました。恐らく救護等に協力されてるのでは?」
「怪我してるだろうに。元気だ。」
トリトンは少しの間の後、頭を深く下げる。
「改めて今回の件本当にありがとう。みんなのおかげで魔剣の保護が出来た。」
「いえ。トリトン王子達に魔剣の保護をいただいたからこそです。こちらこそありがとうございました」
カグツチも深く頭を下げる。
「ありがとう。………ここで重大な報告が2つある。」
唐突な申し出に困惑する一同。
トリトンはそう言って腰から魔剣を取り出した。
「俺。魔剣の所有者になっちゃった。」
カグツチとラムチは驚いて止まっており、アエリはさも当然だという顔をして頷いていた。
「チューン王国の第一王子ですから。トリトン様が持つのは妥当と言えるでしょう。」
少しして状況を2人は飲み込み、同時に2人の脳裏にロスカの元気な姿がよぎった。
「………えっと王子」
「ん?どした?」
「すみません。………一つお願いしてもよろしいでしょうか?」
「あ、うん。何個でも」
「その魔剣で姫の魔法が解けるか試してもらってもいいですか?」
「あ、確かに。魔剣の力には魔剣で対応ってね。ちょっと待っててね。」
トリトンはロスカの方に魔剣を向ける。
「………姫の氷を水で溶かしてくれ」
トリトンはそう言うと、勢いよく水が飛び出し、それが姫に直撃する。
「ぶっ!」
「姫えええええ!!!!」
カグツチがロスカに駆け寄る。
トリトンは顔を青くして唖然としており、アエリは吹き出した後に口を押さえて小刻みに震えている。
「姫!?お怪我は!?」
カグツチはおろおろと姫のことを見ている。
ロスカは水浸しとなり、髪も服も全体的にびしょ濡れになっている。
「あらまぁ。タオルならこちらに」
ラムチもどこからかタオルを取り出し、体を拭こうとする。
「申し訳ない!」
トリトンがそう言うと、ロスカに着いた水は一瞬で蒸発した。
カグツチとトリトンは俯き、一同を沈黙が包む。
「………ごめん」
「………いえ。………そういえば魔剣についてわかったことはありましたか?」
「………魔剣についてはまだ学者の方で調査中。だけど今日始めたばかりだから調査の目処は立ってない。昔のことだから調査には結構時間はかかりそうかな。」
「そうですか。ありがとうございます。」
カグツチは顎に手を当てる。
「水の魔剣だと、姫の魔法は解決できなさそう………。となるとやはり………」
そして聞こえるか聞こえないかくらいの大きさでつぶやき続ける。
ラムチはそんなカグツチにツンツンとした後に、トリトンに質問をする。
「それでトリトン王子?2つ目の重大発表は?」
「あ、ごめんなさい。2つ目は………クリオネッタ王国の救援は俺たち特別作戦部隊が全面バックアップすします。俺含めてクリオネッタ王国に向かいます。」
困惑するラムチとカグツチ。
アエリも吹き出しが収まり、ポカンとする。
「え………あの………大変ありがたいのですけれど………魔剣は………?」
「あ、持ってくよ」
「えっと………水の国の防衛は………?」
「魔剣なしでも大丈夫って国王の判断」
「………あ、ありがとうございます。」
カグツチはトリトンのコメントに少し困惑し不安を残しつつも感謝を伝える。
「大丈夫!丁度クリオネッタ王国でこの魔剣使って貢献できることも多分多数あると思うからさ」
「………あ、本当にありがとうございます。なんとお礼を言っていいのやら………」
カグツチとラムチはお礼をして一礼をした後に、恐る恐るアエリの方角を見る。
2人は今回の防衛任務前のアエリの激昂を思い出す。
((魔剣の防衛であれだけ揉めたし、きっとここでも………))
アエリがその後口火を切る。
「………あの………トリトン様………出発はいつですか?」
「あー。うーん。………先遣隊は有志募ってもう向かってもらって。俺はカグツチと一緒に行こうかな」
「我々は………目的は概ね果たせましたので、もう1日ほどしたら氷の国に戻ろうと思います。」
「………私は?骨折しています。」
話に割り込みトリトンをジトッとした冷たい目線で見るアエリ。
「あー。ごめん。安心して。アエリは怪我してるから、ゆっくり怪我を直してから来て欲しいかな。」
「ーーーは」
アエリはプルプルと震える。
トリトンはそれに気付かず話し続ける。
「あっ。ごめんカグツチもう一個カグツチ向けに重大発表があった。」
「………はい。何でしょうか?」
「俺とロスカ姫のこ………」
トリトンが言い終わる前にアエリは感情は爆発した。
「わ!」
アエリの急な大声に一同はビクッと驚いた後に、アエリの方を向く。
「私がいないと駄目とおっしゃられましたよね!?洞窟で!!私のことはやっぱり不要なのですが?ずっと一緒にやってきた私の力は不要で?活躍されたカグツチさんの方がいいんですか?やっぱりそうですか?洞窟で怪我をした私の力なんて全く不要ですか?副隊長の私にも相談しないなんて私はやっぱり不要ってことですか!?」
トリトンはオロオロとし、両手を前に出してなだめるポーズをとる。
「あー。ごめん。落ち着いて!」
「トリトンさまは私のことは不要なのですよね。クリオネッタ王国に行くということはそこの姫と一緒に過ごしたいということですよね。」
「ごめんね。そんなことないよ。アエリは必要な存在だよ。だからこそ骨折した状態で万が一何かがあったら困るからさ。だからケガを直して万全の状態で氷の国に来てほしい。」
「………」
アエリはすねてそっぽを向いている。
「いいですよ。役立たずはここで待ってますので。どうぞお好きなように」
トリトンはそんなアエリに目線を合わせるように膝立ちになる。
そして真面目な表情で話す。
「いつも怒らせてばかりで本当にごめん。でもアエリにはしっかりと直してから合流してほしい。アエリは頑張り屋だからさ。無理して怪我が悪化しちゃうのが怖いんだ。」
「………」
「お願い。アエリ。氷の国に来てほしい。アエリの力が必要なんだ。」
アエリはため息をつき、ロスカの方を見る。
「………この国って車椅子ありますよね。」
「あ、うん。あると思うよ」
「………付いていきますよ。車椅子で。………そこの姫と同じように………戦闘に参加しなければよいのですよね。」
「え?」
提案に困惑するトリトン。
「それとも何ですか?私はやはり不要でお邪魔ですか?」
「いや。そんなことないよ。ただ怪我が心配」
「治るまでは戦闘には参加しません。しばらくは作戦参謀のみです。それならば文句はありませんよね」
「………わかった。お願いしてもいいかな?怪我してる中申し訳ない。」
「分かりました。同行します。」
こうして同行が決まり、ラムチは苦笑い、カグツチはただその光景を見つめていた。
「よし。これで重大発表は完了したし、後は部隊への呼びかけか。ごめん。アエリ今日から動ける?」
「………おんぶをしてもらえれば
「ごめん。自分では動けないよね。まずは車椅子を探してくるから。」
そうしてトリトンはまた走って救護室を出ていった。
アエリはちょっと嬉しそうにその後ろ姿を眺めていた。




