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十国十魔剣伝  作者: 禄之羽礼
水の国編
26/30

水の国編21話

洞窟に来たチューン王国軍により怪我をした者たちは救護をされる。

そして一同は洞窟を戻っていった。

突如として盗賊の大群に襲われたチューン王国だったが、国王や軍の迅速な対応により、騒ぎは僅か2時間ほどで収束。

一部捕らえきれなかったものの、大半の盗賊たちを拘束し、牢に入れることとなった。

多数のケガ人、および建物の被害は出たものの、死者は0人で今回の騒動は幕を下りた。

また洞窟での魔剣の保護任務についても、ゼストスを含む兵士たちは気を失ったものの、大きな怪我はなし。

洞窟に進んで防衛任務を実施した、アエリが足な骨折をするのみで人的被害はかなり少なく、

逆に洞窟近くの関所および、洞窟については壊滅的な被害を負う形となった。


チューン王国に戻り、一同は救護室へと運ばれた。

救護室はてんやわんやとしており、医者やケガ人を運ぶ人で喧騒に包まれている。

救護室の中には多数のベッドがあり、そこに多数の兵士たちが横たわっていて、そこにはゼストス、アエリ、カグツチもいた。

その近くにロスカ、クリオス、ラムチがいる。

アエリは右足を包帯でぐるぐるに固定された状態で横たわっている。

カグツチは体の各所を包帯で巻かれて、ベッドで起き上がっていた。

ゼストスも体の各所に包帯を巻かれて、ベッドで起き上がった状態で拳を握りしめて悔しそうな表情を浮かべる。

「………クソが………。」

「まぁまぁ兄さん。任務は成功したんだから。」

「そうよそうよ!みんなの力で任務成功なのよ!」

「ちッ!俺はもう治った!ベッドを空ける!」

そう言ってベッドから飛び起きてドスドスと救護室の外を歩いて出ていった。

「あ、兄さん!勝手に!」

クリオスもそれについて言って救護室を後にした。

「私もベッドを空けます。もう歩けますので」

そう言ってカグツチは立ち上がった。

そしてロスカの横まで歩いて進む。

「大変お元気なのですね。」

ベッドに横たわっているアエリが声をかける。

「アエリちゃんは大丈夫?」

「ちゃん付けはやめてください。………大変情けないことですが、一人だと歩けなさそうなので、しばらくはここにいます。」

「そうするのが一番よ!それだけ頑張ったのだから!」

「………あの」

「ん?どうしたの?」

「………あなた方が………いえ………今回はありがとうございました」

一瞬言いかけたことに首を傾けるが、ラムチはすぐさま笑顔になる。

「いーのよ!いーのよ!ねっ?カグツチ!」

「こちらこそ。クリオスさんに姫の護衛のお礼をしないとです。トリトン王子にも………そういえばトリトン王子はどちらに?」

「国王に今回の件の報告に行かれてのかと。」


チューン王国玉座の間。

そこに玉座に座るポセイドンと、その前に膝立ちのトリトンがいた。

トリトンは腰につけた魔剣を取り出し王に見せる。

「魔剣はこの通り保護いたしました。」

「はい。お疲れ様です。ありがとうございます。」

「しかし怪我を負った者が多数なのと、洞窟については崩れてなくなりました。」

「貴重な文化的遺産を失ったのは痛いですが、魔剣の保護ができただけよしとしましょうか。人的被害についても死者がいなければ、問題ないでしょう。他には?」

「敵が2人いました。彼らは自分たちをラグナロクと呼んでいました。恐らく氷の魔剣を奪ったものと同一組織の犯行かと。魔剣を集めているような事を言っていました。」

「ほう。それで?」

「私とカグツチでその2人を戦闘不能に追い込みましたが、敵の増援により連れ去られました。」

「ふむ。まあその状況で魔剣を保護できたのは褒めるべきかと思いますよ。他には?」

「………魔剣の力は絶大です。どうやらこの件は水を自由自在に操る力があるみたいです。ただ」

トリトンは脳裏にゴーレムが魔剣を手にしたが、水を出せなかったことを思い出す。

「一度敵が魔剣を手にしたのですが、敵には扱うことは出来ないようでした」

「なるほどです。結果的に一度手にされてしまったことは反省が必要ですが、防衛任務ご苦労様でした。まぁ魔剣のことは追々調査することにしましょう。今も学者の人に調査はしてもらっていますが、まだ目処は経っていませんので。」

「はい」

「魔剣をそこに置いたままにしてください。」

「はい。」

トリトンは魔剣を拾わずに立ち上がり、そそくさと去ろうとする。

「トリトン?戻ってきたらお話があると言いましたよね?」

ギクッとした表情を浮かべてゆっくりとバツが悪そうに振り向く。

「座ってください。」

ポセイドンの呼びかけに素直に従い腰をかける。

「トリトン。あなたは将来この国の王になります」

「………はい。」

「そうなった場合何かしらの決断をする時が必ず来ます。」

「はい。」

「1000万を超える国民の命運があなたに託されるのです。………その全員が納得する道は必ずしも取れません。むしろその道を取ることは難しいでしょう。時に誰かが犠牲を被るような選択も取る必要も出てきます。本日の任務前のグダグダについては要反省ですね。」

「………はい」

「何が正解で何が不正解か誰も分からない。選んで結果が出たところで正解かも分からない。そんな決断をあなたは将来することになります。それをよく肝に銘じておくように。」

「………俺もそう思ってます。でも………世の中には色んな考え方があると思います。………俺は可能な限り全員が得をする道を選びたい。そんな国王になりたい。」

「えぇ。それでいいと思いますよ。国王は思慮と決断の連続ですから」

ポセイドンは優しい笑みを浮かべる。

「今回は本当によく頑張りましたね。」

「あの」

トリトンは下を向く。

「チューン王国第一王子として一ついい?」

「えぇ。」

「………一つ決断をするよ」

「ほう?」

トリトンは立ち上がる。

「俺とロスカ姫とは結婚しない。」

決意の決まった表情でそう言い放つ。

ポセイドンはキョトンとした顔でトリトンを見つめる。

「………」

ポセイドンは吹き出す。

そして高笑いをする。

「別にまだ正式決定したわけではないですよ。候補の一人に入ってるだけですから。まぁ本人が望まないなら、私としても受けるつもりはありませんよ。」

「あぁ。良かった。ありがとう。」

トリトンは安堵の表情を浮かべる。

「そこまで安堵するということは何かあったんですか?」

「………別に何でも」

ポセイドンは楽しそうに話す。

「ハハハ。まぁ詮索はやめておきましょうか。」

ポセイドンは腕を前に組む。

「さてここで私も大きな決断をしましょう。」

トリトンは急な発言にキョトンとする。

「1つ水の魔剣はあなたに保持してもらいます。」

「………え?えぇぇぇぇぇ!?」

身振り手振りで焦りを表現する。

「いやいや。この国の国宝を!?そもそも魔剣の力は強大だし!しかるべきメンバーで防衛したほうが!」

「将来的にこの魔剣の奪い合いが発生すると思います。魔剣には魔剣を。魔剣使いが魔剣を奪いに来ることだって往々にしてあるはず。その場合魔剣使いが迎撃する方がいい。なので魔剣を利用可能なトリトンに持ってもらうのがよいかと。」

「でも………!父さんだって使えるかも!」

「全く。この老いぼれに戦わせるつもりですか?」

「いや。老いぼれって年じゃ」

「それに」

ポセイドンは立ち上がり魔剣に近づく。

そして魔剣を拾い上げてそれを軽く振る。

魔剣からは何も出なかった。

「ほーら。水出ない。ならトリトンが持ってたほうが確実でしょう?」

「いやしかし………」

「それでは2つ目」

ポセイドンはトリトンに近づき、魔剣を差し出すこと同時に肩を叩く。

そして真面目な表情を見せる。

「あなた方特別作戦部隊に、クリオネッタ王国の救援任務を任せます。あなたの決断のもと任務を遂行してください。」

「え?」

「同盟国の重大な危機ですので。……外を知ってさらなる成長に繋げてください。」

「いや!でも!魔剣!俺が持ってて外出ちゃったら!」

「大丈夫。敵は魔剣の強奪に失敗した。そして一度襲われた部分の警戒が強くなるのは世の道理。敵方も一度失敗した手前警戒して、そうそう襲ってきませんよ。」

「そもそも魔剣を持ち歩いちゃ」

「まぁ狙われるでしょうね。ただ狙ってきた相手を倒して情報を吐かせていけば、いずれラグナロクとやらの情報につながる可能性がある。そうすれば結果的に氷の国を襲った輩にも繋がり復興につながると思うのですが」

「いや。でも………」

「友人を助けたいのでしょう?」

トリトンはハッとした表情を浮かべる。

「この国は大丈夫ですよ。任せて。トリトンはその力を友人のために使って、たくさんいろんな経験を積んでこの国にまた戻ってきてください。」

「………分かった。」

意を決した表情を浮かべるトリトン

「うん。いい表情です。ではこれで私からは以上」

トリトンは一礼をして玉座の間を去っていた。

トリトンが去った後に再度玉座に座り、ポセイドンはぐっと伸びをする。

「あー。我ながら非合理な決断。」

そう言ってフフッと笑うポセイドンであった。

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