水の国編20話
龍のような水龍は形を失い、雨となって河に振り注ぐ。
そして空中にいるトリトンは氷のサーフボードにしゃがんだ状態で落下し、川に着地する。
川から大きな水しぶきが上がる。
その後ジャンプして川岸へと渡り、カグツチ達と対面する。
その後氷のサーフボードは水となって川と同化した。
トリトンは担いでいたゴーレムを優しく降ろす。
縄に縛られたゴーレムは芋虫のような体勢で、歯を食いしばり悔しそうな表情を浮かべていた。
「わりいコカトリス………」
悔しそうに呟いた。
コカトリスは唖然として放心している。
そしてカグツチ達一同は駆け寄った。
「ごめん。お待たせ。」
「トリトン様!お疲れ様です!」
「うん。ありがとう。」
「あらアエリさん!」
ラムチはアエリの足の怪我を見つける。
「足にケガが!すぐ治療してするからね!」
ラムチはトリトンの背中に向かい、お姫様抱っこの体勢でアエリの体をつかむ。
「よく頑張ったね。もう大丈夫だから。」
ラムチはアエリを引き取ろうとするが、アエリは剥がれようとしない。
「………アエリさん?あっ」
ラムチは何かに気づいたような表情を浮かべる。
「………アエリ?」
「………」
トリトンの呼びかけを受けて、アエリは不服そうに手を離しラムチのお姫様抱っこを受け入れる。
「重っ!」
ラムチはアエリの体重がかかり、体勢を下に崩しかけるがすぐに立て直す。
そしてアエリは不服そうに何かを言いたげにラムチを見ている。
「ごめんなさいね。すぐ治療するからねー」
トリトンはアエリを抱えたラムチにお辞儀をする。
「ありがとうございます。」
「いいのよ!」
ラムチは兵たちが眠っている近くまでアエリを運んで降ろした。
そして一同にはアエリの顔が見えないように、アエリの縦となってしゃがむ。
ラムチがアエリに小声で耳打ちをする。
「ごめんなさいね。折角の時間を邪魔しちゃって。おばさん気を使うべきだったわね」
「ーーーっ!」
アエリは頬を真っ赤にして恥ずかしがる。
「そんなんじゃ!」
そして大きな声で反論しようとする。
「あー。ごめんね。やっぱり痛いよね。すぐ治療するからね。」
ラムチは懐から包帯などを取り出してアエリに応急処置を施していく。
トリトンはその治療を眺めた後にカグツチたちの方を向く。
「魔剣は無事確保した」
トリトンは一段にわかるように魔剣を持ち上げる。
青く綺麗な水の魔剣に、太陽が反射しさらに美しく輝いた。
おー!とクリオスが拍手をする。
「他の皆は?」
トリトンは倒れているゼストスを含む兵士たちの方を向く。
「今は気を失っですが、命に別状はありません。」
「はぁー。良かった」
クリオスの報告にトリトンは胸を撫で下ろす。
カグツチはヨロヨロと立ち上がる。
「あの」
そしてトリトンに声をかける。
「魔剣の保護………。本当にありがとうございました。」
深々とお辞儀をする。
「頭上げて!みんなの成果!あっちのやつはカグツチが倒してくれたんだよな?」
トリトンは傷だらけのカグツチの体を見る。
その問いかけにカグツチは言葉に詰まる。
「そーなのよ!カグツチ本当に頑張ったの!ね!クリオスさん?」
「は、はい!」
「だろ?」
トリトンは拳を突き出す。
「お礼が言いたいのはこっちの方だよ。本当にありがとう」
ニカッと笑う。
「………はい」
「………拳当ててくれないか」
少し苦笑して気まずそうに話すトリトン。
「あ、すみません。失礼します。」
カグツチも拳を握ってトリトンの拳に優しく当てる。
「へへへ!」
トリトンが嬉しそうにニカッと笑う。
その姿を見てカグツチも少し頬を緩める。
トリトンはクリオスの方を向く。
「クリオスもサンキューな!」
クシャクシャの笑顔のままクリオスに拳をつきだし、クリオスも照れくさそうに拳を当てた。
その後ゼストスを始めとした水の国の兵士たちのもとに走っていき、走りながら順番にその手に拳を当てていった。
「みんなもありがとう!」
そして今度はラムチの方に走っていった。
「ラムチさんも治療ありがとうございます!」
拳を突き出す。
「お!私も!?いえーい!」
ラムチはノリノリで治療をしながら、空いた右拳をトリトンの拳にぶつける。
そして今度はしゃがんで優しい笑顔でアエリに話しかける。
「アエリもありがとうね。」
仰向けのアエリの手の近くに拳を作る。
「………はい」
アエリは拳を握ってゆっくりとその拳に拳を当てた。
「さて」
トリトンはコカトリスとゴーレムがいる方向を向く。
「お前たちにもいろいろと聞かないとな。」
「この!」
コカトリスが声を上げて、トリトンが手に持っている魔剣を見る。
しかし魔剣は石にはならず、何も変わらない。
「石に変わらないでいし!?」
「やめろ。」
コカトリスはゴーレムの方を向く。
「兄貴!せめて魔剣を!」
「俺達の負けだ。足掻くのはやめよう。おい王子!」
「?」
「こいつは。コカトリスは許してやってくれないか?」
ゴーレムはコカトリスの方に顔を何回かクイックイッ向ける。
「兄貴………」
「こいつには俺が指示しただけ。何も悪くない。魔法も重宝すると思う」
「兄貴………!兄貴の魔法だって岩を自在に操る魔法!重宝するでいし」
「うーん。2人とも無罪放免って訳には行かないかな」
ゴーレムとコカトリスは固唾を飲んでトリトンを見つめる。
「しっかりと反省をしていること!国王や国民に謝って許しをもらうこと!それらを達成したうえで俺の下でこの国に貢献すること!これならどうかな?」
「いや!トリトン様!」
アエリが声を上げる。
「流石にこいつらは野蛮の域を超えてます!反省なんてする訳ないです!」
「氷の魔女の情報を。そもそもお前らは仲間なのか?」
「あーどもども。」
場の収集が付かなくなる前に頭上から声が聞こえる。
カグツチは頭上を見上げてすぐさまふらつきながらロスカの前に仁王立ちをする。
トリトン達の頭上から声が聞こえる。
するとそこには腕を羽のかわりにして、鳥のように跳んでいるローブの者と、その足に掴まれてぶら下がっているローブの男がいた。
「全く。作戦を立てずに無謀に突っ込むなんて野蛮の極みやで。」
2人は少しずつ高度を下げて降りてくる。
トリトンは剣を構えて臨戦態勢を取る。
クリオスも怪我をした水の国の兵士たちの前に立ち剣を抜く。
「あー。安心しい。流石に魔剣使いは今やるんわリスキーや、奪う気も戦う気もあらへゆ。ワイ達のミッションはさ」
鳥のような男は、もう一人の男を離す。
もう一人の男が地面へ着地する。
「フォ!」
そして鳥のような男がそう言うと、ローブの中に手を入れた後に手をラムチとアエリの方へ振り、そこに小さな鳥の羽のような者が猛スピードでとんでくる。
それに気づいてトリトンは魔剣を振り、水を発生させてそれを止める。
「フォーっ!」
鳥のような男は空中を進み、トリトンへ接近し足で蹴るように連続攻撃を仕掛ける。
それを難なく捌いていく。
そして攻撃を捌いている間に、トリトンは鳥男ともう一人の上から雨を降らせる。
そしてその雨はすぐに凍り、ローブも凍ってしまう。
「うわ。ちょっと凍った。めんどいなぁ。」
そう言うともう一人の男が両手を伸ばす。
するとその手からタコの触手のような物が伸びる
ゴーレムとコカトリスはその触手に掴まれ、みるみる内に縄と同じくらいに巻き付いていく。
「よし固定完了!グリちゃん!行くで!」
「フォッ!」
タコ男が言うと、鳥男は戦闘を中断し、ローブのなかに手を入れアエリ、ロスカ、水の国の兵士たちの方に合計3回手を振り、再度羽根のような物を投げる。
トリトンは遠くから水を放ってその攻撃を止める。。
またカグツチ、クリオスの2人は剣を振るいその攻撃を防ぐ。
そこ隙を着いて。猛スピードでタコ男に近づく。
そしてそのスピードのまま狩りを鷲の如く、その肩を掴み飛び去っていく。
鳥男とたこ男、そしてその触手に掴まれたゴーレムとコカトリスが飛び去っていく。
「くっ!」
トリトンは魔剣を振って水の飛ばすが、タコ男は別のところから触手を出して、それを高速回転させて水を防ぐ。
「今日のところは堪忍な!ほなまた!」
遠くから大声で伝える。
そう言って4人は遠くへ遠くへと飛び去っていき、やがて見えなくなっていった。
一同は状況が飲み込めないまま放心する。
「………いったい何だったんだ………」
トリトンが小さく悔しがる。
アエリとクリオスも少し俯いて悔しそうにする。
「………氷の魔女のことを………」
カグツチも小さく悔しがる。
「まぁまぁみんな無事だったので一旦良しとしましょうよ!」
ラムチは全員を励ますなかで、中ラムチはふと耳を澄ます。
遠くから馬が走る音が聞こえる。
それも1体ではなく、かなり多くの馬が走る音である。
その音は少ししたら止み、今度は人が走ってくる音が聞こえてくる。
「あら今度は何かしら?」
その正体はすぐさま明らかになった。
すぐに大勢の青色の鎧を身に纏った大勢の人物が、こちらへと走ってきた。
「暴徒の鎮圧は完了した!増援に来た!」
一同はつかの間の安堵を迎えた。




