水の国編16話
カグツチたちは、洞窟の外でトリトンたちの帰還を待っている。
すると洞窟からドドドドドと何かか崩れる大きな音と砂煙が発生する。
一同は洞窟の方を向く。
洞窟の入口は崩れていない。
固唾を飲んで洞窟の方を見守っていた。
「すごい音………トリトン様…大丈夫かな?」
クリオスが不安そうな表情で落ち着かずオロオロと周囲を見渡す。
(………トリトン王子………大丈夫なのか?もし魔剣を取られたら太刀打ちは出来ない………。となれば………)
カグツチはぐるぐる巻きにされたコカトリスを見る。
(多分仲間のこいつを人質に取るか………)
その後馬車が置いてある方の方角を見る。
(それか………このまま姫とラムチさんと馬車で逃げる………?)
逃げの選択肢を思いついた後に、本日のトリトンとの馬車での会話などを思い出し、苦虫を噛み潰した表情を浮かべる。
そしてカグツチは思考の後、話しかける。
「………クリオスさん」
「………はい」
不安そうにカグツチの方を向くクリオス。
「トリトン王子は人間相手なら100%勝てるって言ってましたよね?」
「………はい」
「それはどういう仕組みで勝てるのですか?」
「それは………」
一方洞窟の中では洞窟の中の広間に大きな岩の山が出来上がっていた。
奥の方への道は開けているが、入り口の方角はすでに埋まってしまっていた。
奥の道からは変わらずドスンドスンと音が響いている。
また岩の塊の姿も近くにはなかった。
岩の山が動き、その中から土埃がついたトリトンが出てくる。
トリトンの体がズキズキと痛み、トリトンは少し顔を歪める。
その後トリトンは焦った表情を浮かべて周囲を見渡す。
「アエリ!?大丈夫!?」
アエリを探すが、周囲は岩の山があるばかりである。
「………トリトン王子。ご無事ですか?」
すると入り口方向の岩の山から声が聞こえる。
トリトンは入り口方向の岩の山へと駆け寄る。
「アエリ!?大丈夫!?」
トリトンは岩をどかそうとする。
しかし一部の岩の数倍はあるサイズとなっており、引っ張ってもびくともしない。
「アエリ!ちょっと待ってて!」
「先に行ってください。私はまだ余裕がありますので。どの道剣ではこの状況は突破できないでしょう。」
「でもこの瓦礫じゃ」
「私は大丈夫ですので。特にケガもしていません。ただ入り口にもそちらにも向かえなさそうです。どうするかは魔剣を保護してから考えましょう。」
「………でも」
「魔剣の保護が最優先です。私は大丈夫ですので」
「………分かった!ごめん。すぐ戻るから!」
トリトンは再び洞窟の奥へと向かっていった。
アエリは座った状態で自分の周囲を見る。
アエリの周囲にはかなり岩が散乱としており、右足が瓦礫に埋まって、動けない状態となっている。
「はぁ」
そんな足を見つめてアエリはため息をついてつぶやく。
「………もっと心配して欲しかったな」
アエリの右足がズキズキと痛み、少し眉を強張らせる。
「………痛い」
アエリは周囲を見渡す。
周囲はとうてい人の手では簡単にはどかせないほどに岩が転がって道をふさいでいる。
「この状況………」
アエリは服の中から銀色の蓋付きの筒と、白い粉を取り出し見つめる。
「これで瓦礫をうまく吹き飛ばせれば………。」
アエリの脳内に銀色の筒に白い粉を入れて、蓋をすると、銀色の筒がみるみる膨らみ破裂して、その衝撃で瓦礫が吹き飛ぶ姿のイメージが湧く。
そしてその爆発に巻き込まれ、アエリが大きく吹き飛ばされぼろぼろになるイメージも湧いてしまう。
「トリトン様の命に比べれば軽いものですが、私が死んだら………トリトン様はどんな表情をしてくれるのだろう?」
アエリは脳内にトリトンが、傷だらけになったアエリを抱きかかえて涙を流し、必死に声をかけている姿が思い浮かぶ。
「………トリトン様は………泣いてくれるかな?」
アエリは俯いてポツリと呟いた。
トリトンは焦りを抱えながら洞窟の奥側へと急いで走る。
(アエリ………ごめんすぐ戻るから………。)
トリトンは走りの最中思考を回す。
(奴に魔剣を奪われたら………魔剣の力次第では太刀打ちは難しいかもしれない………。水の魔剣の能力は分からない。でも氷の魔剣は何かを凍りつかせる力を持ってた。)
大量の水が洞窟内に流れるイメージがトリトンの脳内に湧く。
(もし水を大量に発生させる力であれば………俺の魔法で太刀打ち出来る………)
洞窟の奥への道は先ほどまでと同じく、広がってはいるが瓦礫で埋まっているようなことはなかった。
ドスンドスンという先ほどまで響いていた音はもう聞こえてこない。
(足音がない………?もしかして魔剣に辿り着いたのか!?)
トリトンが目を瞑ると、トリトンに掛からないように後ろから雨が降り注ぐ。
そして降り注いだ雨は直ぐ様氷となって、トリトンが進んだ跡の道に氷の道が出来上がる。
トリトンは走る。
そうして走り続ける中で、周囲に転がる岩もかなり多くなってきており、地面も何やらタイルのようなもので装飾がされるようになってきた。
遠くから何か高笑いをするような声が聞こえてくる。
そうして進んでいくと、そこには今その手に青色に輝く剣を持った、ローブの男がいた。
ローブを着た男は剣を持ち上げ、それを見つめて高笑いをしている。
「ハハハハハ!これが魔剣!これで俺たちもあの女と同じように!」
トリトンが剣を男の方角へと向ける。
ローブの男の周囲に豪雨が降り注ぎ、それはすぐに氷となる。
「あ?」
男はゆっくりと振り返る。
「おう。王子様か。よくあの崩落を防いだな。だがこれでチェックメイトだ。」
ローブの男はそれ見よがしに魔剣を見せつける。
「しかしここは寒いな。全部吹き飛びしたくなるような寒さだ。だが全部崩落させちまうと帰るのが大変だからな。」
「お前は何者だ。お前は街を襲っている奴の仲間か?」
「あ?」
ギロリとトリトンを睨みつける。
「まぁいいや。どうせ俺の勝ちだ。」
掌をで魔剣の側面をぽんぽんと叩く。
「町網漁と火事場漁のやつらだろ?後は村網漁、城網漁、空き巣漁。あいつら色々な文化を持ってるんだぜ。面白いよな。」
「やはりお前も盗賊か。魔剣を奪ってこの国へ復讐。それが目的だな。」
「いや。違う。」
「?じゃあお前たちは何者だ。」
「あ?あー」
ポリポリと頭をかくローブの男。
「どうせ俺の勝ちだしまぁいいか。俺達は魔剣を集めてるんだよ。あの女が魔剣を持ち帰ってきてから、みるみる地位が上がっていきやがったぁ。だから俺達も魔剣を奪って地位を上げるんだよぉ!だから俺達2人も地位を上げるんだ」
「?」
臨戦態勢を取りながら疑問の顔を浮かべるトリトン。
「あー。うちには魔剣の情報が………豊富だからな。そこで他の国の中で1番ここが一番保管が緩いことを知った。………洞窟…に放置だからな。」
やたらと間をあげながら男は話し続ける。
「だが一つ進める上で………欠点もある。洞窟と…国が近いことだあ。」
「それでどうしたんだ?」
「それでな。思いついたんだよ。この国の各地で………ヤバいことを起こせば兵………警備が割かれてな、魔剣を………取るのが………簡単になるんじゃねえかってなあ。」
トリトンは険しい表情を浮かべる。
「それで。盗賊達はお前らの仲間か?」
「あ?あー。あいつらは………漁師って言ってたぜえ」
「あんなのは漁師じゃない。漁師の方を侮辱するな。」
ガハハハと豪快に笑う男。
「そこで………ひとまず水の国を………観察に来たときに………町網漁の奴らと出会ったんだ。」
「………それで?」
「あいつらはずっと………酷い目にあってるって言ってたぜ。伝統的な奴らなのにな。」
「………ふざけるな」
静かな怒りを見せるトリトン。
「いいじゃねえか。………伝統上等。………伝統には………ありがとうを持つべきだ。昔からある伝統漁だぜ。俺はあいつらのことをずっと………うんうん。それは水の国が悪いって言い続けたんだよ。泣いて喜ばれたんだぜ。分かってくれたのはあなただけだってな!」
「………それで?」
「それでな。アイツラこの国に………復讐してやるんだって言ってたから話したんだ。魔剣のことをな。」
「!?」
「あいつら言ってたぜ。ゴーレムさんは………凄いって。泣きもしてたなあ。俺の名前はゴーレムって言うんだ。………あだ名だけどな。」
「………それで?」
「町網漁の奴ら、俺たちの………時代が来るんだって喜んじまってな。そこで俺も乗ったわけだ。みんなでこの水の国を………倒そうって。作戦を伝えたら………OKして協力してくれた。あとは待ち網漁は………敵対する複数の流派………えっと………火事場漁とかがあるらしいが、そいつらにも協力してもらって超凄い………チームが出来たってわけだ。それで今起きてる………アレを起こしたってわけだ。それでこうして俺は魔剣を手に入れたと。」
「………そうか。」
ゴーレムは体をギュッと締め、歯をガクガクと鳴らし、唇をぶるぶると揺らす。
「アイツラには………ありがとうしないとなあ。これで水の魔剣士の………誕生だぜ!あーはっはっ!」
「外にいたやつはお前の仲間か?」
「あぁ?コカトリスのことかぁ?あいつはなぁ………へっくし」
ゴーレムは突然くしゃみをする。
そして体をギュッと締め、歯をガクガクと鳴らし、唇をぶるぶると揺らす。
「あー。さみい。悪いが喋らせようって手には載らせない。情報は何一つ渡さないぜ。………それでそろそろ喋りが過ぎちまったからな」
ゴーレムは唐突に魔剣をトリトンに向ける。
「さて。お喋りが過ぎちまったが、これで終わりだあ。水の魔剣よ。コイツラを洗い流せ!!!」
ゴーレムの大声が洞窟内を響いた。




