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十国十魔剣伝  作者: 禄之羽礼
水の国編
19/30

水の国編14話

辺りには川の流れる音が響き渡っている。

カグツチはそんな中で意識を取り戻す。

(あれ?俺今何を)

カグツチは自分の下に砂利のような硬い感触を感じていた。

(ここは………?)

まだまどろんでいる中で、カグツチは自分の右手が何やら小さく温かいものに包まれていることに気づく。

(なんか安心する。何だろう?)

カグツチは静かに目を開ける。

カグツチの真上からラムチが表情をのぞき込んでいた。

「わぁ!」

思わず声を上げてカグツチは起き上がる。

カグツチの体には傷口に包帯が巻かれていた。

起き上がった拍子に少し傷が痛む。

「いたい………」

「まだ起き上がらないほうがいいわよ!それにしてもカグツチ!よく頑張ったね!ハッセルも空から見守ってたわよ!」

(あれ?俺何をしてたんだっけ?)

カグツチは辺りを見渡す。

左にはコカトリスはロープで厳重に何重にも縛り付けられていた。

コカトリスの服は一部が燃え焦げており、今は気を完全に失っている。

そんなコカトリスをクリオスが見張っている。

「石の人は縛って拘束してるから。クリオスが見張っててくれてる」

クリオスがコクリと頷いた。

そしてゼストスを含む傷ついた兵士たちも包帯で巻かれて寝転されている。

彼らも同じく気を失っております動かない。

「傷ついた彼らは私が取り敢えず応急処置しといたから安心して!」

(そうか。俺戦ってたんだ………姫は!?)

カグツチは勢いよく逆方向を向く。

そこに車椅子からロスカが降ろされ、体育座りをしていた。

そしてロスカはカグツチの手をぎゅっと握っていた。

一瞬のの間の後カグツチの頬がみるみる赤くなる。

「な、な、姫!?」

軽く手を引っ張って外そうとするがなかなか外れない。

ラムチがニヤけながら話す。

「姫のパワーで元気出た?」

「ちょ!勝手に姫を!」

「あら。私は姫の手をカグツチの手に近づけただけよ。そしたら姫が握ったの。だから姫の意思よ」

「………そうですか………意思………あれ?いし………?」

カグツチはふと先ほどの戦いで見た石にされて、そしてコカトリスに砕かれたロスカを思い出した。

「………あ………ここは天国………?」

「あらあら、姫に手握ってもらえて至福?」

「そうじゃなくて………姫石にされて、それで………」

カグツチの表情が曇り、絶望に濁っていく。

「申し訳ございません!あなたをまたお守りすることが出来なかった!姫に合わせる顔もありません!」

カグツチはロスカの手を離して、正座をし、すぐさま頭を地面に擦り付けた。

そんな様子を遠くからクリオスが疑問の表情を浮かべてポカんと見ていた。

「えっと………寝ぼけてる?」

カグツチは近くにおいてあって剣を手に取る。

「腹を切ってお詫びします。」

「ちょ!」

ラムチはすかさず剣を持った手を掴む。

クリオスも焦った表情をしてこちらへと駆け寄ってきた。

「何してるんですか!」

クリオスも剣を掴んで止める。

「離してください!」

手を振り払おうとするカグツチを抑えながら、クリオスは自分の服についた布袋に手を入れる。

そして多量の茶色い小さい豆を取り出した。

「落ち着いて!」

クリオスがそういうと手から茶色い豆が消える。

するとカグツチがゴホゴホと咳込み、えずきだした。

その隙にクリオスは剣を取り上げて少し遠くに投げる。

「一旦落ち着いてください!急にどうしたんですか?」

「何をした?」

カグツチは恨みのこもった目でクリオスを睨み、クリオスはその迫力に押され後退りする。

「…ぼ、僕の魔法はこの茶色い豆と水分を融合させられるんです。苦くて茶色くて、飲むと目が覚める冷たい液体になります。で、でもミルクをいれるとまろやかになっておいしいんですよ。」

絶えずカグツチは睨み続けつつ、遠くに転がった剣を見据えている。

クリオスはさらに後退りする。

「い、今あなたの唾液と茶色い豆を融合させました。ね、寝ぼけてるなら一旦目を覚ましてください!」

「そうよ!姫は無事だし、石にもされてないわよ。ほら!姫様見て深呼吸よ!」

ラムチはロスカを指差す。

カグツチは姫の姿を見る。

風にたなびく綺麗な銀髪、太陽を反射するサファイアのような美しい瞳、そして多くのひとが魅了されるであろう端正な顔立ち。

姫の変わらず美しい姿を見てカグツチの表情が少しずつや柔らかくなっていく。

「それに、もしここが天国なら姫にかかってる魔法だって多分解けるんじゃないかしら?」

「………すみません。取り乱しました。クリオスさんもラムチさんもすみません。」

「いーのいーの」

ラムチはニカッと笑顔で返答する。

「い、いえ」

対称にクリオスは少し引いた何か言いたげな表情を浮かべて返答する。

そしてクリオスはコカトリスに焦って目を向ける。

コカトリスは変わらず気絶したままだった。

「一回倒れた後に目を覚まして、そのままあいつを倒したんだよ!本当にすごい子だよ!」

バンバンとカグツチの肩を叩く。

「………そうですか………」

カグツチは目を瞑って、下を向きしばらく黙り込む。

ラムチはそんなカグツチを優しく見守っている。

「もっと強くならないと」

カグツチが呟く。

「フフ。頑張りなさいな。護衛騎士様!今回も姫の護衛が無事出来たわね!」

「あ」

護衛という言葉を聞いて顔を上げる。

そして洞窟の方へ目線を向ける。

「そうだ。洞窟の中にもう一人!」

カグツチが立ち上がろうとする。

「うっ」

しかし立ち上がろうとした拍子によろけて躓いてしまう。

「ちょっと!その傷じゃ無茶よ?」

「クリオスさん!すぐに!」

「だ、大丈夫ですよ」

カグツチはクリオスのほうを向くがカグツチが話し終わる前にクリオスが声を掛ける。

「ト、トリトン様は凄くお強いです。」

「確かに私素人だからよく分からないけど、凄そうたわね。」

「そ、それにアエリさんも実力者ですし、魔剣を防衛して帰ってきてくれますよ」

そしてクリオスは川の水を見つめる。

「ト、トリトン様は相手が人間である限り、ほぼ負けない裏技があります。怪我人もいらっしゃいますすし、カグツチさんもしばらく動けないかと思いますから………ここは………トリトン様たちにお任せしませんか?」

「そうよ!それにカグツチもトリトン王子にこいつは俺が倒すって言ったでしょ?カグツチはカグツチの役目を一旦果たしたってことで休憩しましょ!」

2人からの言葉を受けてカグツチはロスカを見つめる。

そして目を強く瞑る。

「………分かりました。すみません。」

カグツチは洞窟の方角を見つめる。

カグツチはトリトンの姿を思い浮かべる

(王子………頼みます………)

洞窟の中から岩がぶつかり合うかのような大きな音が、辺りに響き渡った。

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