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十国十魔剣伝  作者: 禄之羽礼
水の国編
15/30

水の国編10話

一同は馬車を急いで駐屯所の前まで進ませて止まる。

馬車を止めると川の流れる音と、また遠くから何やら爆発音のようなものも聞こえる。

「人命救助を最優先に。状況を確認しよう!」

トリトンが大声で指揮をする。

カグツチはその中で葛藤していた。

(王子には申し訳ないけど、………姫を残して進むのは駄目だ。ロスカ姫を一緒につれていくのも危険が伴い過ぎてあり得ない………。)

そして脳裏に1つの案が浮かぶ。

(………馬車を守るために3人で残る。これが一番安全だ。)

カグツチが口を開こうとしたところで、ラムチもロスカの車椅子を押して外に出ようとする。

「!!」

驚きの表情を浮かべてカグツチはラムチを制止する。

「ラムチさん!姫を連れて行くおつもりですか!?」

「ちょっとは傷の手当てとかできるから。私達だけ待ってるわけにはいかないよ!ね!姫様」

ラムチはロスカ姫に語りかけるように話す。

「外は危険です!これだけは譲れません!」

「カグツチが傍で守ってくれれば安心よ!ね!」

「しかし!自分から戦地に入っていくなど!」

馬車の中で小競り合いが続く。

同時刻アエリ、ゼストス、クリオスの3人は馬から降り、周囲を見渡していた。

アエリは何やら異変に気づく。

石の礫が洞窟がある方角からこちらへと向かって降ってきている。

アエリは剣を抜きその石の礫を弾き返すが、続け様に石の礫が降り注ぐ。

ゼストスとクリオスも腰の剣を抜く。

「攻撃です!すぐに馬車から出て!」

その声聞き一同は急いで、カグツチはロスカの側について馬車から出る。

馬車から出てすぐ石の礫が馬車の荷台に直撃し、荷台に穴が空いた。

「すみません!捌ききれませんでした!」

「アエリ?状況は?」

「分かりませんが洞窟の方角から石が降り注いでます。敵の攻撃かと。」

「ありがとう!洞窟へ向かおう!」

トリトン達は洞窟へ向けて走っていった。

石は変わらず降ってきている。

カグツチはロスカの前に立ち、剣を抜く。

そして石を弾きつつ、周囲を見渡して考えていた。

(何処か安全な場所は………物陰は?)

周囲を見渡すも建物自体が壊れており、石を隠れられるような場所はなかった。

(複数人いる以上ついて行った方が安全か?いやしかし戦地に行くなど。やはり3人で馬車の近くに残るのが)

しかし車椅子を押して走ってついて行くラムチを見てカグツチも走り出す。

「ラムちさん!いけません!」

「姫様がいないと行かないでしょ!だから行くの!」

「しかし!」

「少しでも多くの戦闘員が必要!カグツチの力が必要!姫様だってきっとこう言う!」

「でも!」

「直属の護衛隊長でしょ!」

「姫を危険な目に合わせないのが護衛の役目!わざわざ戦地に行くなど!」

走りながら声を荒げ、ラムチと並走するカグツチ。

「カグツチが守ってくれれば危険じゃない!姫様も望んでる!」

「おーい!カグツチ!大丈夫かー!?」

やり取りの最中トリトンが引き返して走ってくる。

「遅れてるから心配したよ!」

「トリトン王子………」

「本当に申し訳ない!危険な戦いに巻き込んで!」

「………」

少しのトリトンへの申し訳なさと、大きなロスカ姫を守りたい意思がカグツチの中でぐるぐる回る。

トリトンはそんなカグツチの様子に気づく。

「………俺達4人も全力でロスカ姫とラムチさんの護衛に当たる!今は攻撃の主を倒しに行こう!」

「!………」

カグツチは葛藤する。

(本来戦地に行くなんて。でも1人より5人の方が。安全地帯もない。………姫………申し訳ございません。愚かな護衛をお許しください。)

「………分かりました」

こうして4人は崩れた駐屯所の間を進んでいく。

壊滅という言葉が似合うほどに駐屯所は壊れているが、幸い今のところ倒れている人は見当たらない。

駐屯所の先には石の河川敷が広がっている。

河川敷の先には大きな流れの速い川があり、その先に洞窟が存在した。

ただ洞窟の入口には川の流れを阻むように、大きな岩が川を塞いでいた。

川の河川敷の手前まで来たところで、アエリ達3人が立ち止まっていた。

河川敷には5名の兵士が傷だらけになって倒れている姿。

そしてその中央に手で石をジャグリングのように回して遊んでいる、真っ黒なローブ人物。

深いフードを被っており顔を確認することはできない。

彼の手前には石が積み上げられ山のようになっていた。

カグツチはラムチとロスカに庇うように立つ。

男は顔を上げる。

「お?来たでいしね」

平べったい鼻と口がフードから見える。

兵士の一人が這いつくばって近づいてくる。

「………ト、トリトン王子………………?」

トリトンが駆け寄る。

「………申し訳ありません。………2人組に襲撃を受け………。1人が洞窟に………。駐屯隊として不甲斐ない………」

涙が流れ落ちる。

「大丈夫。俺達に任せろ」

「………あいつらの魔法は………」

トリトンは何かに気づき剣を抜く。

ゴツンという鈍い音とともに、ドサッと兵士が倒れる。

付近には拳ぐらいの大きさの石が転がっていた。

「はい。アウトでいし。」

「………」

トリトンはじっと睨みつける。

「怖いでいしよ?王子様?ん?何故王子様がこんな所に?」

「………」

「まぁいいでいし。僕は足止めを果たすでいし」

トリトンは手を後ろに回し、指で丸を作って後ろの物に見せる。

アエリが小声でカグツチに話す。

「あなたはロスカ姫をお守りください。ここは我々特別作戦部隊で片付けます。」

カグツチはコクリと頷く。

フードを被った男はジロジロとこちらを見渡す。

「可愛い女の子が2人もいるでいし。眼福でいしねぇ。」

トリトンは手で銃のポーズを作り後ろに見せる。

そうするとゼストス、クリオス、アエリの3人は一斉に河川敷に走り出す。

「始まるでいしね」

フードの男は石の山から石を複数個掴んで、サイドスローで投げる。

かなりのスピードで4人に近づいてくるが、剣で問題なく捌く。

フードの男は再び石を掴んで投げる。

顔面に向けて一直線に飛んでくるが、やはり4人は難なく捌く。

ゼストスがまずはフードの男まで迫る。

ゼストスが剣を振るうが、尖った石を手に取り攻撃を防ぐフードの男。

「接近戦には尖った石でいし」

ゼストスは下がり、他の3人はフードの男を包囲する形で周りに立ち、剣を構えている。

ゼストスは腰につけた布袋に手を突っ込む。

「!?あっつ!それににっが!」

急に咳き込むフードの男。

布袋から小さい何かを取り出し上に放り投げてキャッチする。

よく見るとそれはコーヒー豆であった。

「お前の唾液を、暑くて苦い液体に変えた。後ちょっと目が覚めるぜ。クリオス!」

「うん!」

クリオスとゼストスはその隙を見逃さずに透かさず剣を振るって攻撃を加える。

フードの男はフードを外しながら、2人に向けて唾を吐き出す。

そして目が光る。

唾は空中で石へと変化し、2人へ向かう。

ギリギリ立ち止まって躱すも、2人の腹部を手で持っている石を突きのように押し出して攻撃する。

攻撃がモロに入り、2人は後ろへと下がる。

フードを外したその姿は坊主姿で、目は薄開き、鼻と口が平ら少年であった。

ゲホゲホとクリオスが疼いて少しつらそうな表情をしている。

「ちっ!クリオス!あれやるぞ!」

ゼストスは布袋に再度手を掛ける。

しかし布袋の中まで手を入れることができない。

「!?固い!?石?」

「!!こっちも!?」

クリオスとゼストスの腰に付けた布袋は何故か石となっていた。

「隙ありでいし!」

フードの男は素早く地面の石を掴んで、ゼストスとクリオスの顔面目掛けて投げる。

石は2人の顔面に直撃し、剣を持ったまま、膝をついて顔を押さえる。

ゼストスは顔を抑えながら、フードの男を見る。

「意外と楽勝かもいし」

「くっ!てめぇ!!!」

「さぁまだまだ始まったばかりでいしよ」

フードの男は不敵な笑みを浮かべていた。

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