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水の国編8話

突然の出来事に訓練場内はざわつく。

困惑するもの、顔が青ざめるもの、怒りの表情を浮かべるもの反応は人によって多種多様だったが、そこにいる誰もが危機感を覚えていた。


カグツチは転んでいたところをすぐに立ち上がり、ロスカの方へ目線を向ける。

そしてロスカとラムチが未だいることに安堵し、2人に近づいていった。


トリトンは真剣な表情を浮かべ、あごに手を当てて考え事をする。

アエリもトリトンの元へと駆け寄ってくる。


「トリトン様。作戦会議をしますか?」


その言葉のすぐ後に、ある兵士が声を上げる。


「グズグズしてられねぇ!早く行くぞ!」


その声を受けてオー!という掛け声とともに兵士達は一斉に訓練上の外まで走り出す。


そして先頭の男が訓練上の出口へと差し掛かる。

そこでトリトンは手から顎を離し、大きく息を吸った。


「ちゅうもーく!」


一同は止まってトリトンの方を見る。


「今から指示出す!第一優先はチューン王国の防衛!伝令の人!」


そう言って息を整えている入り口付近の兵士に声を掛ける。

声をかけられ、伝令のものの背筋がピンと伸びる。


「防衛の指揮は誰が取ってる?」


「国王様です!城の前で現在指揮を取られてます。」


「OKありがと。ゼストス、クリオス、アエリ、それとカグツチたちはここに残って!それ以外の者は国王の指示に従い防衛任務に当たること!」


「おー!!!」


一同は大声を上げて走って訓練上の外に出ていった。

伝令の者もその軍勢についていった。


人が少なくなった訓練場内は静寂に包まれた。

外からは人の叫び声などが聞こえてくる。


「トリトン部隊長様。」


赤メッシュの少年がズケズケと近づいてくる。

クリオスも後に続いて恐る恐る近づいてくる。


「自分たちも行きましょうか。」 


カグツチ一行も訓練場の中央に集まる。

赤メッシュの少年ははトリトンの近くに来て止まり、腕を組む。


「で。我々は何をすれば?」


クリオスは恐る恐るトリトンと赤メッシュの少年を見ている。


「本来であれば混ざって街の防衛任務に徹するのが適切かと思いますが。」


アエリも口を挟む。


「ゼストスもアエリもありがとう。………魔剣の保護任務に行こうと思って。」


周囲がざわつく。

アエリが驚きの表情を浮かべ、少しだけ落ち着かない口調で話す。


「今このタイミングでですか?盗賊の対処が今は最優先ではないでしょうか?」


うーんと少し悩み


「………俺の杞憂ならいいんだけどさ。ここ最近盗賊が増えて、軍のリソースを警備に割いてるじゃん?」


「………もしかして敵の狙いは警備の薄くなった国を襲うこと?」


「いや。リソースが割かれてるとはいえ、ただの賊がこの国を落とせる可能性は低いと思う。何かしら強大な力がなければそれは難しい。」


カグツチ達は中央に到着し呟く。


「………魔剣?」


トリトンが頷く。


「うん。俺の推測なんだけど、相手は混乱に乗じて魔剣を奪うつもりなんじゃないかな?魔剣の力は強大だって聞くから。魔剣を使って………この国を転覆させようとか思ってるんじゃないかなって」


アエリが口に手を当てて考える。

そして口を開く。


「………しかし魔剣の在処を賊どもが知っているでしょうか?魔剣の在処は一部のものしか知りません。それに魔剣の警備は厳重です。」


トリトンは腕を組んで唸る。


「うーん………。そうだね。俺の杞憂だったら万事OK。だから少人数で取り急ぎ監視に行こうと思う。急いで向かって、もし何もなければすぐに防衛任務に入ろう。」


クリオスが口を開く。


「あ、あの!すぐに馬の準備をして参ります!」


そう言って外に出ていった。

ゼストスもクリオスについて行き外へ出た。

アエリは俯く。


「………分かりました。………ただカグツチさんはどうされるおつもりですか?もし魔剣の任務に同行させるというのなら私は反対です。」


カグツチも俯く。

カグツチは内心葛藤していた。


(………本来水の国の防衛任務に入るか任務にも協力すべき………だけど)


ロスカに目線を向ける。


(この状況でロスカ姫とラムチさんの傍を離れるわけにはいかない………)


「部外者に魔剣の在処を知られるなんてありえません。ここは街の防衛任務に当たってもらうのが適切かと。」


「………カグツチはきっとそんなことしないと思う。それに」


アエリは眉を上げて恨めしい表情を浮かべ大声を上げる。


「どうしてロスカ姫の肩ばかり持つのですか!?どうしてロスカ姫のことばかり信用するのですか!?まだ出会って少ししか立っていないのに!何でそんなに信用できるのですか!?許嫁とはそんなに重要なものなのですか!?私のことは全然信用していただけないのですか!?」 


顔にうっすらと涙を浮かべてトリトンを見つめる。

トリトンは悲しそうにアエリを見つめる

ラムチもその表情を見て、眉を落としている。


「アエリ。俺はさアエリのことを一番信用してる」


「………嘘ですね。私の意見を今日は聞いてくださらないじゃないですか。」


恨めしそうにトリトンを見つめる。


「そんなことないよ。いつもアエリにはすごく助けられてるし、一番信用してるからこそ副隊長に任命してる。今日はアエリの意見のおかげでこうして冷静になれてる。いつもありがとう。………アエリは俺のこと信用できない?」


真剣な表情を浮かべる。

それは卑怯ですよと聞こえないくらいの声でつぶやき、前髪をくるくるといじるアエリ。


「………それで………何ですか?」


「1個お願いがあるんだ。………城で」


ドカンと大きな音が聞こえる。

どうやら爆発によって訓練場の壁が壊され、中に大量の青いタオルを頭に巻いたをした盗賊が入ってきた。


「火事場漁じゃ!大漁祈願!」


「リーダー!あそこに兵士がいますよ!」


「よし!漁開始じゃ!」


釣り竿のようなものを持って軍勢が押し寄せてくる。


「ちっ!ここにいるのも危ないのか!?」


「わっ!」


そう言ってトリトンはラムチを抱え上げる。


「カグツチはロスカ姫を!」


カグツチは慌てて車椅子に座っているロスカを抱きかかえて、お姫様抱っこする。


「一旦逃げるぞ!」


一同は訓練場の外を出て、廊下を走る。

カグツチはロスカに謝罪する。


「本当にすみません!争いに巻き込んですみません!必ず守りますから!絶対守りますから!」


「城の中もちょっとやばいかもな。取り敢えず城の外に出る!」


「おらー追い込みじゃ!ん?」


ポツリと何かが落ち、冷たい水滴がリーダーの頬に当たる。

盗賊の軍勢が見上げると上空から大雨が降っていた。

そして雨がやみ、床が氷の床へと変貌した。


「おーっとと」


一同は氷の床で滑りそうになり止まる態勢をとる。

リーダーの男はかろうじて止まるが他の者は止まりきれずに激突し、一同は一斉に転んでしまう。


「よし!もうすぐ外だぜ!」


通路を抜け、大きなエントランスも駆け抜ける。

エントランスを抜けると玄関の前には複数の兵士たちが、そして天幕を張ってポセイドンが足を一直線にして立ち、陣頭指揮を執っていた。


玄関を抜ける一行を見て、兵士たちは驚きの表情を浮かべポセイドンも振り返る。


「父さん!」


トリトンが声を掛ける。


「トリトン隊長ですか」


「城の中にも入られてる。状況は?」


「人的被害はゼロです。が賊どもは盗みをメインでやっているそうです。盗んでは逃げを繰り返していて、兵たちも手を焼いています。」


「そうですか。………我々はこれから魔剣の防衛に当たります。」


「分かりました。丁度一部の兵を寄越そうと考えていましたが、トリトン隊長に任せます。」


「はい!」


トリトンはアエリの方を向く。


「アエリ。さっきの件だけど、アエリはお城に残ってロスカ姫とラムチさんの護衛を任せてもいいかな?」


カグツチとアエリの2人は驚きの表情を浮かべる。


「な!?何故私が!?」


「………相手が水魔法に対する対策を立ててたらって考えると、火の魔法が使えるカグツチも付いてきてほしい。」


「しかし…………」


「もし俺が帰って来なかったら」


「!!!縁起でもないこと言わないでください!私は副隊長である前にトリトン様の側近です!お傍であなたを守らせてください。」


(こんな危険な状況で姫を連れ出すわけには行かない)


声を荒げるアエリを横目にカグツチはロスカのそばを離れたくない一心で声を上げる。


「先ほどのウーホスさんのコメントの通り、私は部外者です。魔剣の在処を知るのはマズイのではないでしょうか?それと私も護衛としてロスカ姫の元を離れるわけには行きません」


そんな言い合いのなかでポセイドンは淡々と言葉を発する。


「国王命令です。トリトン、アエリ、カグツチさんはロスカ姫とラムチさんを護衛しながら、魔剣の偵察任務に向かうこと。」


ラムチはえ?私も?と自分に指をさしている。


「な!」


カグツチがポセイドンの方を向く。


「あの」


「護衛騎士たるものどのような状況でも守るのが義務です。それにこの街にいるのも偵察任務に行くのも危険度的には変わらないでしょう。」


「しかし」


「我々チューン王国はリスクを負って力をお貸ししましたよ。今度はそちらが力を貸していただけませんか?同盟国ですから有事の際はお力を貸していただけますよね?」


ポセイドンはにこりと笑い圧力をかける。


「おい父さん。」


「………分かり…ました」


俯き葛藤の末了承する。


「アエリ副隊長もそれなら良いですね?」


「………はい。」


ポセイドンはくるりと足を一直線にしたまま、トリトンの方角を向く。


「トリトン隊長。戻ってきたらお話が。」


「………分かりました。」


「ト、トリトン様!馬車の用意が整いました!」


そう言ってクリオスとゼストスは1台の馬車と2台の馬を連れてきた。


「………よし!魔剣の防衛任務に行くぞ!」


トリトンたちは馬と馬車に乗り込み、魔剣のありかへと向かった。

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