ドライブその6(逃走)
ヒロ達は岬の先の灯台まで行くつもりだったが、カンナの先程の力に気づいたのか二組のカップルがスマホ片手にヒロ達をつけていた。
「‥‥‥青葉、後、気づいてる?‥‥」
ヒロが青葉に小声で言うと
「‥‥うん‥‥誰かにつけられてるみたい」
青葉が頷く。
「灯台の方まで行くつもだったけど‥‥ごめん‥‥今回は‥‥」
青葉に言うと
「ううん‥‥いいよ。それより‥‥」
頷きながら返事をして青葉は後ろに気を張る。
カンナはまだ自分が何したか理解してなく
「ねえ!ヒロ、次はどこいくの?」
と聞いてくる。
『はあ〜っ、このお気楽妖精さんは。今の状態になったのはあなたのせいですよ!』
と言いかけたが辞めた。そんなこと言うと
『なんで?いい事したのに』と聞いてきて注意しようものなら逆ギレして顔面右ストレートが炸裂するに違いないからである。
「直ぐそばに売店がある。そこに裏口があるからそこから出て駐車場の車まで」
ヒロはまた小声で青葉に言うと青葉は「うん」
と頷いた。
「じゃあ行くぞ‥‥‥‥せえーの」
の掛け声で売店までダッシュで駆け出す。
カンナは何故駆け出したかわからないでいたが
ヒロと青葉が駆け出したので一緒に駆け出した。売店に入ると直ぐに裏口から外に。そして一目散に車の所まで走った。
「はあ、はあ、はあ、どうかな?まいた?」
「はあ、はあ、う、うん。どうやな大丈夫みたい」
青葉はキョロキョロと車の影から見た。
先程の二組のカップルはやはりヒロ達を探しているみたいで、売店辺りを探していた。
幸いヒロの車の横に大型のワゴン車が停まっていてあの二組のカップルからはヒロの車が死角で見えなくすんなりと車に乗り込み気づかれずに駐車場から出る事が出来た。
「はあーつ」
ヒロはため息をした。安堵のため息とはまさにこの事だなと思いながら後ろの二人に、
「大丈夫かい?二人共?」
「えっ?あ、うん、大丈夫だよヒロ君」
「うん、私も‥‥けど何で逃げるの?」
カンナが聞いてきた。
「はあ?なんでって‥‥あ、あのな‥‥」
ヒロは言いかけたが今は運転中、こんな時にカンナの顔面パンチが飛ぼうものなら事故っしまう。ので、
「カンナ、その、なあ、力を使うのはいい。さっきのカンナの行動もいい事だと思う。けど、あれだけ人が居るとやはり驚く人も居ると思うんだよ」
ヒロが優しく言うと、
「う〜ん、わかるんだけど‥‥‥けど何故?ておもっちゃうの」
「あ‥‥カンナ‥‥それはだな‥‥」
ヒロが言いかけた時横に居た青葉が、
「うん、カンナの言いたい事はわかるわ。けどね‥‥私やヒロ君みたいにカンナの力を理解してそれを何かに利用しようとはしない、そんな人ならいいけど、さっき私達を追いかけて来た人達片手にスマホを握っていたの。この意味わかるかな?」
青葉はカンナの方を見て、
「ううん‥‥‥‥」
カンナは首を左右に振る。
「それはね、カンナの力をスマホに撮ってSMSにあげようとしたのよ。もしそうなればカンナの力は日本中いえ、世界中に知られてしまう。そしてカンナの力を悪い事に利用しようとする者まで出て来ると思うの」
「悪い事?」
「そう、悪い事。もしかしたらカンナの力で人を殺してしまおうとする者も‥‥‥」
「‥‥‥人を殺して‥‥」
カンナの顔が暗くなる。いや自分の力が人の命をと考えると急に震え出した。
「カンナ、さっきも言ったけど力を使うのは悪い事じゃないんだ。自分の事を守る時とか人の命を守る時とかは使っても構わない。けどさっきの時みたいに何でもない時に使うのは‥‥」
ヒロは付け加えて言うと
「つまり、無闇矢鱈に力は使わない‥‥」
カンナはまだショボンとしている。
「そう言う事。さすが星の妖精だけあるな。理解が早い!うん」
とヒロは最後はカンナを褒めた。
「えっ?そ、そうかな。えへへ」
と少しは明るくなったカンナ。
「なあ?そう思うよな青葉!」
ヒロは青葉に振った。
「えっ?あ!そうね。さすがだわ!」
「そうかな、えへへ〜っ」
「そうそう」
「えへへへへっ」
「そうよね〜っ」
「えへへへへ、じゃあ!ヒロ!今度はどこ行くの?ねえ、ねえ!」
運転席の後ろに居たカンナは運転席のシートにもたれるとシートを揺らし始めた。
「ちょっ、ちょっと!カンナ!カンナさん!シートを揺らさないで!運転が‥‥‥」
とパッと手を離すカンナ。
「えっ?あ!私とした事が、オホホホホ!」
「本当にこの妖精さんは‥‥調子に乗るとこれだよ、まったく‥‥」
とニコリとするヒロ。
「さあ〜て。次の場所に行きますか!」
車は次の場所へ。




