第3話:続編のバカカップル上陸と、放置された悪役令嬢のスカウト
帝国城の激震と皇太子アランの失脚から半年。
王都の裏通りに構えたメロン・フォン・パフの邸宅は、今や帝国で最も「近寄りがたく、しかし最も頼りになる」と噂される謎の聖域となっていた。
「あぁ〜……至福。やっぱり午後の紅茶は、茶葉の蒸らし時間が命よねぇ」
日差しが心地よく降り注ぐサンルームで、メロン(水里由衣)は猫のように体を丸めてソファーに埋もれていた。
膝の上には、ショップの最新ラインナップで追加された【超高機能もこもこ膝掛け(温熱ヒーター内蔵)】。手元には、全自動エスプレッソマシンの紅茶抽出モードで淹れた極上のダージリン。
社畜時代、午前三時に冷めきった缶コーヒーをすすりながらバグと戦っていた日々が、もはや前世のさらに前世の記憶のように遠い。
——ピコン!
『プレイヤー、お寛ぎのところ大変恐縮ですが、重大なシナリオイベントの発生を検知いたしました』
脳内に響くシステムの声。最近ではすっかり『上級管理AI』としての風格(と、メロンに対する過保護な秘書感)が板についてきた。
(んー? シナリオイベント? アランとマリアはもう田舎の領地に追放されて、毎日畑耕しながら互いに擦り付け合いの喧嘩してるんでしょ? これ以上何かあるの?)
『はい。実は本作『聖なる乙女は愛を紡ぐ』には、原作読者の間で「駄作」「胸糞展開」「前作主人公以上の害悪」と大炎上した【続編(シーズン2)】が存在します』
(続編……? ゲッ、あの作者、調子に乗って続編作ってたの?)
『はい。そして本日、隣国の「ルナリア王国」から、続編のメインヒーローである第ニ王子【リュシアン・ルナリア】と、続編ヒロインの【クロエ・ド・ラ・ヴァリエール】が、帝国への公式訪問という名目でやってまいりました』
システムの提示したウィンドウに、二人の人物の立体映像が浮かび上がる。
一人目は、白銀の髪に氷のような青い目をした美しい青年。一見するとクールな美男子だが、眉間に刻まれた深すぎるシワと、漂う「俺の考えこそが世界の正義」感が隠しきれていない。
そして二人目は、ふわふわとした金髪に小悪魔的な笑みを浮かべた少女。派手なドレスを身にまとい、視線は常に計算高く周囲を探っている。
(うわぁ……見るからに面倒くさそうなタイプ。で、その続編のストーリーは?)
『はい。この続編の概要は以下の通りです。
ルナリア王国の優秀な悪役令嬢【シルヴィア・フォン・ルナリア】公爵令嬢は、国の財政再建や外交を完璧にこなす超有能な女性でした。
しかし、第ニ王子リュシアンは、男勝りで隙のないシルヴィアを煙たがり、甘え上手で男を転がすのが上手い男爵令嬢クロエに心移り。
リュシアンはクロエの嘘の告発を真に受け、シルヴィアに「冷酷無比な悪女」「私の愛するクロエを嫉妬から陥れようとした」と濡れ衣を着せ、今回の帝国訪問の場で【公開婚約破棄】を突きつけ、彼女を隣国(帝国)の劣悪な強制労働施設へ追放しようと画策しています』
(……待って。それ、どっかで聞いたことある展開なんだけど?)
『はい。第一話のアラン&マリアの劣化コピー……いえ、さらにタチの悪いバージョンです。リュシアン王子はアラン以上にプライドが高く「自分は絶対に正しい」と思い込んでおり、ヒロインのクロエはマリア以上に計算高く「有能な女を蹴落として自分が王妃の座に収まる」ことを企んでいます』
(胸糞悪いわねぇ……。で、その被害者になる悪役令嬢のシルヴィアちゃんは?)
『シルヴィア様は現在、リュシアン王子の従者として帝国に同行させられていますが、連日の不当な扱いと無理難題な書類仕事の押し付けにより、精神的にも肉体的にも限界を迎えています。本日夕方に行われる帝国主催の歓迎パーティにて、冤罪による婚約破棄と追放が言い渡される予定です』
(……ハァ)
メロンは深く、深〜く溜め息をついた。
「有能な女性に面倒な仕事を全部押し付けておいて、自分は男のプライドを満たしてくれるおバカな女に走り、用が済んだら『冷酷な悪女』ってラベルを貼ってクビにする……」
カチャリ、と紅茶のカップをソーサーに置く音が、静かなサンルームに響いた。
「デジャヴどころか、前世のブラック企業の典型的なクソ上司と、ゴマすりだけで出世した泥棒社員そのものじゃないの」
『プレイヤーの怒りメーターの上昇を確認。……いかがいたしますか?』
「決まってるでしょ」
メロンはソファーから立ち上がると、ドレスの裾をふわりと揺らした。
「続編のヒーローとヒロインのバカ言動を邪魔して、その有能な悪役令嬢ちゃんを救い出すわ。……ついでに、うちの会社の『副社長』としてスカウトしてあげる」
『副社長!?』
「当然でしょ! 私、これ以上自分で書類仕事したくないの! 優秀な実務経験者が向こうから転がり込んできたなら、高給とホワイトな労働環境で引き抜くのが優秀な経営者(元社畜)の務めよ!」
——ピコン! 【ミッション発生:続編の悪夢を打ち砕き、真の有能者を救出せよ!】
『読者層から「メロン様のザマァ補正が続編にも発動!?」「シルヴィアちゃんを救ってくれぇぇぇ!」と期待の声が殺到しています! 成功報酬悪役ポイント:50,000pt!』
「五万ポイント! よし、気合い入れるわよ! アイテムボックスから一番高価でド派手なドレスを出しなさい!」
◇ ◇ ◇
その日の夕刻。帝国城の大広間。
ルナリア王国からの使節団を歓迎する夜会が開かれていた。
会場の黄金のシャンデリアの下には、両国の貴族たちが集まり、絢爛豪華な雰囲気が漂っている。
だが、その中央にできた不自然な人集りの中では、冷ややかな緊張感が張り詰めていた。
「——シルヴィア・フォン・ルナリア! 貴様の悪行、もはや見過ごすことはできん!」
氷のような声を張り上げたのは、ルナリア王国第ニ王子リュシアンであった。
その隣には、可憐なピンクの薔薇を模したドレスを着たクロエが、怯えたようにリュシアンの腕にしがみついている。
「リュシアン殿下……一体何のお話でしょうか?」
リュシアンの前に立っていたのは、美しい銀髪を一つに束ねた気品あふれる女性——シルヴィア・フォン・ルナリアであった。
しかし、その顔色は真っ青で、目の下にはうっすらとクマが浮かび、痩せた体は今にも倒れそうだ。
「白々しい! 貴様は我が国と帝国との貿易協定の書類に、偽りの数値を記載し、ルナリア王国の国益を損ねようとした! さらに、それを指摘したクロエに対して『身分を弁えよ』と罵倒し、陰で嫌がらせを繰り返したな!」
「そんな……! 貿易協定の書類は、殿下が『修正しろ』とおっしゃった通りに数値を変更しただけです! それに、クロエ様には公式な書類の取り扱いルールをご説明しただけで……っ!」
「黙れ! 自分の保身のために嘘を重ねるか! どこまで醜い女なのだ貴様は!」
リュシアンは蔑むような視線をシルヴィアに向け、冷酷に言い放った。
「もはや貴様との婚約など維持できん! 本日この場をもって婚約を破棄する! さらに、貴様のような危険な罪人はルナリア王国へ連れ戻す価値もない。帝国の最北端にある鉱山施設へ永久追放とし、死ぬまで反省するがいい!」
「鉱山……へ追放……!?」
シルヴィアの視界が絶望で真っ暗になった。
今まで、国のために、そしてこの無能な婚約者のために、自分の睡眠時間を削ってまで公務を片付けてきた。それなのに、最後の報いがこれなのか。
周囲の帝国貴族たちは、関わり合いを恐れて静観している。
クロエはリュシアンの陰で、勝ち誇ったような歪んだ笑みをシルヴィアに向けていた。
(ああ……私、ここで終わるのね……。誰も……誰も私を助けてはくれない……)
シルヴィアが絶望に目を閉じ、膝を折ろうとした——その時だった。
「——ちょっと待ちなさいな、そこのバカ王子」
静まり返った大広間に、透き通るような、しかし恐ろしくドスの利いた女性の声が響き渡った。
◇ ◇ ◇
カツン、カツン、と大理石の床を鳴らすヒールの音。
集まった貴族たちが蜘蛛の子を散らすように道を空ける。
そこに現れたのは、夜空を切り取ったかのような深い群青色のドレスに身を包んだ女性——メロン・フォン・パフであった。
その圧倒的なオーラと美しさに、誰もが息を呑む。
今や帝国において「皇帝すら一目置く陰の支配者」と呼ばれるメロンの登場に、会場がざわめいた。
「な、なんだ貴様は!? 私たちの神聖な儀式の邪魔をする気か!」
リュシアンが不快そうに眉をひそめる。隣のクロエも「な、なんですのこの人……」と不快感露わにメロンを睨みつけた。
メロンは二人を完全に無視し、床にへたり込みそうになっていたシルヴィアの元へ歩み寄ると、すっと手を差し伸べた。
「大丈夫かしら、シルヴィア様。……ずいぶんと酷い顔色ね。何日徹夜させられたの?」
「え……? あ、あなたは……メロン様……? 私は……ここ三日ほど、ほとんど眠っておらず……」
「三日徹夜!? うわぁ……労基(労働基準監督署)があったら一発で営業停止レベルじゃない」
メロンは顔を顰めると、シルヴィアの細い肩を抱き引き上げた。
「良し良し、頑張ったわね。もういいわよ。あんなバカ男のためにこれ以上一秒たりとも働く必要はないわ」
「な……バ、バカ男だと!? 無礼者! 私はルナリア王国の第ニ王子、リュシアン・ルナリアだぞ!」
リュシアンが顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
メロンはゆっくりと振り返ると、ゴミを見るような冷ややかな視線をリュシアンに向けた。
「知っていますわよ、ルナリア王国のバカ王子殿下。……それで? 先ほど『貿易協定の書類に偽りの数値を記載した』とおっしゃいましたわね?」
「そうだ! シルヴィアが国益を損ねるために数値を書き換えたのだ!」
「ふふっ、おかしいですわねぇ」
メロンはくすりと笑うと、パチンと優雅に指を鳴らした。
すると、メロンの脇に控えていた侍従(ショップで購入した最高級人工知能執事)が、一冊の分厚い羊皮紙のファイルを出した。
「こちらは、ルナリア王国使節団が昨日帝国政府に提出した貿易協定の『修正前』と『修正後』の控え書類ですの。……リュシアン殿下、貴方がシルヴィア様に命じて修正させたという部分、私が一分前に暗算で計算し直しましたけれど」
メロンはスッと書類の一ページを指差し、大広間全体に聞こえる声で言い放った。
「修正前の数値のままだと、ルナリア王国は帝国の関税改定に対応できず、年間で金貨五万枚の『赤字』が出ることになっておりましたわよ?」
「……な、何だと!?」
「シルヴィア様が数値を変更したおかげで、その赤字が相殺され、むしろルナリア王国側に年間金貨二万枚の『黒字』が出る計算になっております。……殿下、貴方はご自分が数字を読めないおバカさんだからという理由で、国を救った命の恩人に罪をなすりつけようとしたのですか?」
「〜〜〜〜っ!??!?」
リュシアンの顔が、赤から紫へと変色した。
大広間の貴族たちから「えっ……じゃあ、シルヴィア様の方が正しかったの……?」「王子様、計算ができなかったの……?」「恥ずかしすぎる……」というヒソヒソ声が漏れ出す。
『ピコン! 【続編ヒーローの無能を暴露】:悪役ポイント+5000pt!』
(よしっ! 続編のポイント単価、前作より高いわね!)
「ひ、ひどいですわ!!」
ここで、リュシアンの隣にいたクロエが甲高い声を上げて割り込んできた。
「貴女は何者か知りませんけれど、リュシアン殿下を侮辱するなんて許せませんわ! 完璧な殿下が計算を間違えるはずがありません! シルヴィア様が何か怪しい魔法で数値を誤魔化しているに決まっていますわ!」
(うわぁ……根拠ゼロの陰謀論に走ったわよ、このヒロイン)
メロンは呆れたように肩をすくめた。
「あら、クロエ様とおっしゃったかしら? 貴女、自分は『完璧な殿下を支える可憐なヒロイン』のつもりでしょうけれど……そのドレス、どこで仕入れたものかしら?」
「え……? こ、これはルナリア王国の最高級仕立屋で作らせたものですわ!」
「あら、おかしいですわね。そのドレスに使われている生地、帝国で今年『毒性のある安価な染料が使われている』として流通が禁止されたB級品の生地ですのよ?」
「……えっ!?」
「おそらく、貴女が高級仕立屋の威光を借りて、裏で業者と口裏を合わせて安物を高く買い叩き、浮いた差額を自分のポケットマネー(懐)に入れたのでしょう? 帳簿を見れば一目瞭然ですわ」
「なっ……! ななな、なにを根拠にそんなデタラメを――!?」
クロエの顔から一気に血の気が引き、滝のような汗が吹き出した。
前世で数々の不正経理や領収書の誤魔化しを見抜いてきた元社畜OLの眼力は、ファンタジー世界の安易な横領など一瞬で見破るのだ。
「ちなみにクロエ様。その生地の染料、体温で温まると皮膚に強い痒みを引き起こす成分が含まれておりますの。……あと三分もすれば、体中が痒くてたまらなくなりますわよ?」
「ひえっ!? あ、あかい……! 皮膚が赤くなって……! か、痒い! 痒いですわぁぁぁぁ!!」
クロエは上品な態度も投げ捨て、大勢の貴族の前で自分の腕や首元をポリポリと激しく掻きむしり始めた。悲惨極まりない光景である。
『ピコン! 【続編ヒロインの横領を暴露&自滅】:悪役ポイント+10000pt!』
「ク、クロエ……!? お前、私を騙して公金を横領していたのか……!?」
リュシアンがショックを受けた顔でクロエから距離を取る。
しかし、メロンの追撃は止まらない。
「リュシアン殿下。他人を責めている場合ではありませんわよ?」
「な、何だ……! 私にまだ何か落ち度があるというのか!?」
「ええ。貴方が先ほど『シルヴィア様を最北端の鉱山へ追放する』とおっしゃった件ですけれど……。あいにく、帝国の領地内にある施設への罪人の受け入れは、帝国の許可が必要ですの。そして……」
メロンは優雅に微笑み、胸を張った。
「現在の帝国最北端の鉱山施設は、私——メロン・フォン・パフが皇帝陛下より一括買い取りし、私有地(プライベートリゾート開発地)として管理しておりますの」
「な……何だと……!?」
「つまり、私の許可なく他国の罪人を足踏みさせることすらできません。……そして当然ですが、私は貴方の不当な追放要求を【全否定】いたしますわ!」
メロンの宣言に、大広間から大きな拍手が巻き起こった。
「そうだ! メロン様の言う通りだ!」
「ルナリア王国の王子は勝手すぎるぞ!」
「計算もできない癖に、有能な令嬢を追放しようとするなんて!」
両国の貴族たちからの冷ややかな視線と非難の声が、嵐のようにリュシアンとクロエに降り注ぐ。
「くっ……! おぼえていろ……! ルナリア王国に戻ったら、タダでは済まさんぞ……!」
リュシアンは痒みで転げ回るクロエの襟首を掴み、逃げるように大広間から走り去っていった。
◇ ◇ ◇
『ピコン! 【続編のバカカップルを完全論破&撃退】:悪役ポイント+2500pt!』
『ミッションクリア! 報酬【50,000pt】を獲得しました!』
頭の中でファンファーレが鳴り響く中、メロンは満足気に向き直った。
大広間の隅で、シルヴィアが呆然とした様子でメロンを見つめていた。
「あ……あの……メロン様……。なぜ、私のような者を助けてくださったのですか……? 私はもう、婚約者も、国での立場も失って……行き場がないのです……」
ポロポロと涙をこぼすシルヴィア。
メロンは優しく彼女の手を握りしめ、前世の敏腕スカウトマンのような熱い眼差しを向けた。
「行き場がないなら、私のところに来ないかしら、シルヴィア様?」
「え……? メロン様の……ところ?」
「ええ! 私が経営するコンサルティング会社『パフ・スローライフホールディングス』の【副社長】として、貴女をスカウトしたいの!」
「ふ、副社長……!?」
「条件は最高よ! 年俸は金貨一万枚(前職の五倍)! 完全週休二日制! 有給休暇消化率100%保証! 深夜残業・休日出勤は一切禁止! 美味しいスイーツと温かい紅茶が飲み放題で、個室のフットマッサージャー付きよ!」
シルヴィアは目を丸くした。
「そんな……そんな夢のような労働環境、この世に存在するのですか……!? 私は……本当にただ、書類を整理して、みんなが困らないように働きたいだけなのです……」
「存在するわ! 私が作ったからね!」
メロンはニッコリと微笑んだ。
「貴女のその素晴らしい処理能力と誠実さ、無能な男のために使い潰されるなんて勿体なさすぎるわ。私と一緒に、この帝国で『世界一ホワイトな会社』を作りましょう!」
シルヴィアの瞳に、生気が、そして感動の光が戻ってきた。
「はい……! はいっ! ぜひ働かせてください、メロン社長……!!」
固く握手を交わす二人。
こうして、続編の悪役令嬢シルヴィアは無事に救出され、メロンの最強の右腕(というか、メロンの代わりに実務を全部片付けてくれる神社員)として迎え入れられたのだった。
◇ ◇ ◇
数ヶ月後。
メロンの大邸宅のオフィス。
「社長ー、ルナリア王国からの追加のコンサルティング依頼案件、すべて処理が終わりましたわ♪」
すっかり顔色も良くなり、ピシッとした高級スーツドレスに身を包んだシルヴィア副社長が、笑顔で書類の束を提出してきた。
「あら、もう終わったの!? 早いわねぇシルヴィア!」
「ふふ、社長が導入してくださった『自動書類作成魔法』と『タスク管理ツール』のおかげですわ! これなら定時の三時間前に業務が終わってしまいますわね」
「素晴らしすぎる……! よし、今日の午後は二人で新作のパフェでも食べに行きましょう!」
「はいっ! 喜んで!」
二人で仲良くおしゃべりをしていると、脳内でシステムが報告を入れてきた。
『プレイヤー、後日談の報告です。
ルナリア王国へ戻ったリュシアン王子とクロエですが、シルヴィア様を失ったことで王国の財政が完全に破綻。激怒した国王により、リュシアン王子は王位継承権を完全に剥奪され、廃嫡となりました。
また、クロエは公金横領の罪で投獄され、二人揃って悲惨な末路を辿っております』
(自業自得ね。優秀な担当者を大切にしない組織は倒産する……それが世の常よ)
『現在の悪役ポイントは【180,000pt】を突破! システムレベルは【超上級神級AI】へと進化いたしました!』
(神級AIって何よ……。まあいいわ。ショップの品揃えは?)
『はい! 現代の『プライベートビーチ付き南国リゾート権利』や『不老長寿の秘薬』などが解放されております!』
(最高じゃない。シルヴィアとの社員旅行は南国リゾートに決定ね!)
メロンはふかふかの社長椅子に深く腰掛け、心地よい達成感に包まれていた。
第一話で追放された悪女(笑)メロン・フォン・パフ。
続編のヒーローとヒロインを叩きのめし、傷ついた悪役令嬢を救い出した彼女は、今や両国から崇められる「伝説の経営者」となっていた。
「さあシルヴィア、定時前だけど『直帰』扱いにしちゃいましょう! 社長命令よ!」
「ふふっ、了解いたしました、メロン社長!」
爽やかな秋晴れの下、元社畜OLと元・追放悪役令嬢の、どこまでも自由でホワイトな快進撃は、これからも続いていくのであった。




