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追放された悪役令嬢、異世界で三千億稼いで帰還したら浮気ヒーローの攻略を命じられたので、叩き潰して下僕にしました  作者: 此花サギリ


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4/4

第4話:帰還した社畜OL、地球で『最強ヒーロー』のテンプレクソ浮気男を物理と論理で叩き潰す


——ピコン!


『重大通知:【超上級神級AI】への昇格に伴い、システム全領域のオーバーホールが完了いたしました。これよりプレイヤー「水里由衣」の最終ミッションを執行します。目標:【現実世界(地球)における最強ヒーローとの真実の愛の成就】です』


「……は?」


異世界での悠々自適な社長生活、100トンのアイテムボックスに詰め込んだ金銀財宝、優秀な副社長シルヴィアとの南国リゾート社員旅行——その全てを堪能し、まさに「人生の勝者」として完璧な怠惰を極めていた水里由衣の脳内に、あまりにも不吉な機械音が響き渡った。


次の瞬間、強烈な浮遊感と眩暈が由衣を襲う。

視界が白く反転し、空間が捻じれ、次に目を開けた時——由衣は、見慣れた「あの場所」に立っていた。


「……え? ここ……?」


コンクリートの壁、漂う湿気とカビの匂い、そして足元に転がる『ダンボール箱』。

そこは、二年前(異世界体感時間)に彼女が過労死寸前で倒れた、あのブラックIT企業の雑居ビルの非常階段であった。


「嘘でしょ……!? ホントに地球に戻ってきちゃったの!?」


由衣は慌てて自分の身なりを確認した。

派手なドレスではなく、着慣れた地味なオフィスカジュアルのパンツスーツ。だが、胸元には異世界で取得した【空間魔法《アイテムボックス》】の起動鍵となる宝石のペンダントがしっかりと握られており、脳内のシステム画面も健在だった。


『はい! 約束通り、アイテムボックスの中身(金貨・宝石・魔法道具等、推定総額三千億円相当)を完備した状態での地球帰還が完了いたしました!』


「やったぁぁぁ! 三千億! 三千億の不労所得!! これで明日退職届を叩きつけて一生遊んで暮らせる——」


『ですが! 【神級AI】の規約改定により、地球における新たなメインミッションが開放されました!』


「……は?」


『地球は現在、異世界からの次元断層(ダンジョン)の出現により【ダンジョン&超能力覚醒時代】へと突入しております! プレイヤー水里由衣には、地球ランキング1位の「最強ヒーロー」と恋愛し、ハッピーエンドを迎える使命が与えられました!』


「嫌よ」


即答だった。


「何言ってるのバカじゃないの? 私の目標は『不労所得で一生ぐうたら過ごす』ことなの! なんで地球に戻ってまで面倒くさい恋愛イベント消化しなきゃいけないのよ! 拒否! 全力で拒否!!」


『あ、拒否権はありません。もしこのミッションを放棄した場合、ペナルティとしてアイテムボックスの中身が全額【差し押さえ】され、前世の残業代未払いブラック企業へと強制復職となります』


「な……ッ!!?? 差し押さえ!? 復職!?」


『はい。残業時間月200時間、休日出勤手当なし、上長からの毎日3時間の叱責コースへと逆戻りです』


「汚い! 人質(金塊)をとるなんて汚いぞシステムぅぅぅ!!」


『ふふん、神級AIとなった私に死角はありません! さあプレイヤー、これより現れる「最強ヒーロー」を攻略し、ラブラブなハッピーエンドを目指してください!』


由衣は歯噛みした。三千億円の不労所得を人質に取られては、従わざるを得ない。


(くっそぉぉ……! まあいいわ。チャチャッと攻略して、形だけの恋人になって、速攻で「熟年離婚(破局)」して三千億を持ち逃げしてやる……!)


由衣が黒い野望を燃やしていたその時——非常階段の扉がドカンと派手に吹き飛んだ。


◇ ◇ ◇


「ハハハ! 案ずるな市民よ! この俺が来たからには、もう安心だ!」


煙の中から現れたのは、眩しいほどの金髪(日本人なのに何故か金髪)をなびかせ、ピチピチの戦闘スーツに身を包んだイケメンだった。

背中には巨大な大剣を背負い、全身から「俺、カッコいいだろ?」という自己主張のオーラが溢れ出ている。


彼こそが、地球ランキング1位のSS級能力者【神城(かみしろ)レン】。

異世界からのモンスターを一人で全滅させたと謳われる「最強ヒーロー」であった。


レンは煙の中から現れると、非常階段にポツンと立っていた由衣を見下ろし、フッと不敵な笑みを浮かべて前髪をかき揚げた。


「やあ、怯えた子羊ちゃん。もう大丈夫だ。俺の超能力『光速の一撃』で、周辺のモンスターは全て討伐した。……フッ、君のような可憐な女性を怖がらせてしまったかな?」


(うわぁ……生で見るとすっごいキツい……何このナルシストバカ……)


由衣のドン引きした表情を、レンは「助けられた感動で絶句している」と都合よく解釈したらしい。レンはスッと由衣に近づくと、彼女の手を強引に握りしめ、顔を至近距離まで近づけてきた。


「大丈夫だ。これからは俺が君を守る。……なぜかって? フッ、俺の勘が言っているんだ。『俺が運命で愛するのは、君だけだ』とな」


(出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)


由衣の心の中で、警戒アラームが爆音で鳴り響いた。

初対面で、名前も知らない相手にいきなり「俺が一番愛するのはお前だけだ」と言い出す男。

異世界のアラン皇子と同じ、そして前世の数々の少女漫画やネット小説で腐るほど見た【テンプレクソヒーロー】の匂いがぷんぷん漂っている。


「あ、あの……神城様とおっしゃいましたか? 初対面でいきなり『一番愛してる』とか、少々距離感が近すぎるのでは——」


「ハハハ! 照れなくてもいい! 俺の愛は本物だ! さあ、俺のVIPマンションへ来るといい。君には俺の『特別な女』としての権利を与えよう!」


強引に腕を引こうとするレン。

由衣は心の中で(うわぁ……無理、マジで生理的に無理……)と悲鳴を上げつつも、金の差し押さえを回避するために「あ、はは……よろしくお願いします……」と引きつった笑みを浮かべるしかなかった。


◇ ◇ ◇


——そして、三日後。


神城レンの所有する超高層タワーマンションの最上階。


「……ねえシステム。私、そろそろアイツの頭をアイテムボックスから取り出した『隕石の欠片』で叩き割りそうなんだけど」


『落ち着いてくださいプレイヤー! 暴力はダメです! 悪役ポイントが減算されます!』


由衣は、広大なリビングのソファーでこめかみを青筋でピキピキと震わせていた。


この三日間、由衣はレンのマンションに「保護」という名の監禁に近い状態で置かれていたのだが……そこで目撃したレンの行動は、開いた口が塞がらないほどのクズっぷりであった。


リビングの豪華なイタリア製レザーソファー。

そこでレンは、フリフリのミニスカートを履いた可愛らしい小柄な少女と、密着するように抱き合っていた。


「ちょっとぉ〜レンく〜ん! このイチゴ、あ〜んしてぇ〜!」


「ハハハ! はい、あ〜ん、みゆき。相変わらずみゆきは甘えん坊だなあ」


「だってぇ〜! レンくんが他の女(由衣)をマンションに連れてくるから、みゆき嫉妬しちゃったんだもん〜!」


「バカだなあ、みゆき。あいつはただの保護対象……まあ、暇つぶしの玩具みたいなものさ。俺が本当に心を開いてイチャイチャできるのは、幼馴染の『お前だけ』に決まってるだろ?」


「本当ぉ〜? レンくん大好きぃ〜!」


チュッ、と軽い音を立てて幼馴染の少女・みゆきの頬にキスをするレン。


そして、その光景を部屋の隅のパイプ椅子(レンから『ここで大人しくしてろ』と指定された席)から冷ややかな目で見つめる由衣。


(「一番愛してる」って言った舌の根も乾かぬうちに、目の前で幼馴染とイチャコラ……。ワンパターン……! ワンパターンすぎるのよこのクソ展開!!)


レンは幼馴染のみゆきとデロデロに甘え合った後、ふと思い出したように由衣の方へ振り返り、腕を組んでドヤ顔を決めた。


「おい、由衣。見ただろう? 俺とみゆきの絆は深いが……安心しろ。俺の心の中の『一番スペシャルな場所』にいるのは、君だからな!」


「は?」


「みゆきは幼馴染だから可愛がってやっているだけだ。男にはそういう『癒やし』が必要なんだよ。君は俺の正妻候補なんだから、嫉妬して器の小さいところを見せるなよ? 俺を一番に愛しているなら、みゆきとも仲良くして、俺の世話を二人で焼くのが筋だろ?」


「……」


由衣はすっと立ち上がった。

無言で、レンとみゆきの前へと歩み寄る。


「レンくんぇ〜、あの女なんか怖い〜」

「安心しろみゆき、俺の威圧感に気圧されているだけだ。……どうした由衣? 俺の言葉に感動して涙でも出てきたか?」


レンは不敵な笑みを浮かべ、胸を張った。


由衣は、深く、深く溜め息をついた。


「ねえ、システム」


『は、はいプレイヤー……?』


「このクソ男、制裁してもいいわよね?」


『え……ええっと、ミッションの目標は『ハッピーエンド』ですが……この男の行動は読者層からの『胸糞ヘイト』が限界突破しております! むしろ叩き潰した方が【悪役ポイント】が暴騰いたします!』


「了解」


由衣の目が、前世のデスマーチでクライアントの無理難題を論破し、異世界で二つの国のバカ王子を叩き潰してきた『極悪社畜OL』の鋭い光を放った。


次の瞬間。


バッギィィィィィィンッ!!!!


「ぎゃあああああっ!!?!?」


レンの悲鳴がタワーマンションに響き渡った。


由衣はアイテムボックスから【超重量級・対モンスター用コンクリート破砕ハンマー(10t)】を瞬時に召喚し、レンの股間数ミリ手前のフローリングへと振り下ろしていた。


高級大理石の床が粉々に砕け散り、衝撃波でレンとみゆきがソファーごとひっくり返る。


「な……ななな、何をするんだ貴様ぁぁぁ!! 死ぬかと思ったぞ!!」


腰を抜かし、股間を押さえてガタガタと震えるレン。


由衣はハンマーを片手で軽々と担ぎ直し(異世界でのステータス強化済み)、冷酷な笑みを浮かべて二人を見下ろした。


◇ ◇ ◇


「ひ、ひえぇぇぇ……! 助けてレンくん! この女狂ってるぅぅぅ!」


みゆきがレンの背中にしがみついて悲鳴を上げる。


レンは慌てて立ち上がり、全身から黄金のオーラ(SS級超能力)を放出した。


「お、お前……! 助けてやった恩も忘れ、俺に危害を加える気か! 俺は地球1位の能力者だぞ! その気になれば、お前なんか一瞬で——」


「黙りなさい、クソ男」


ドオンッ!!


由衣が放った圧倒的な【威圧感(魔王級)】と、アイテムボックスから漏れ出た【異世界の神級魔力】が部屋中に満ちた。


レンの黄金のオーラが、まるでロウソクの火のように一瞬で吹き飛ぶ。


「ぐはっ……!? な、なんだこの圧は……!? 息が……できない……!?」


レンは膝をつき、両手を床について激しく喘いだ。SS級の彼ですら、異世界で神級AIと契約し、無数の魔法道具を所有する由衣の「絶対的な暴力(ステータス)」の前には、赤子同然だった。


由衣は優雅にパイプ椅子を引き寄せると、倒れたレンの目の前にドサリと腰掛けた。


「さあ、神城レンくん。これから『ロジックハラスメント(論理的説教)』の時間よ。一言でも言い訳したら、次はハンマーを股間に直撃させるから、そのつもりでね」


「ひっ……! は、はいぃぃ……!」


由衣は脚を組み、冷酷な目で二人を見下ろした。


「まず第一に。『俺が一番愛してるのはお前だ』と言いながら、他の女と密着してキスをする行動。これ、現代日本の法律および倫理観において何ていうか知ってる?」


「え……あ、アバンチュール……?」


「『浮気』『不貞行為』『誠実性の欠如』よバカ」


バシッ!!

由衣はアイテムボックスから取り出した【分厚い法六法全書(鈍器)】で、レンの頭をスパンッと叩いた。


「いってぇぇぇ!?」


「第二に。私を『正妻候補』などと宣い、パイプ椅子に放置して自分たちのイチャイチャを見せつける行為。これは何?」


「お、俺のモテっぷりをアピールして、優越感を与えようと……」


「『精神的ハラスメント(モラハラ)』および『侮辱罪』よバカ」


バシッ!!

再び六法全書がレンの頭にクリーンヒットする。


「第三に。そこの幼馴染のみゆきさん」


「ひっ……! わた、私は関係ありません! レンくんが勝手に私を抱きしめてきただけで——」


「嘘おっしゃい」


由衣はアイテムボックスから【読心・過去視のスクロール】を取り出し、破り捨てた。


空中に半透明の映像が浮かび上がる。

そこには、レンが留守の間、みゆきがレンの部屋で「へへっ、あの女(由衣)を追い出して、レンくんのカードで買い物しまくってやる〜♪」と悪代官のような顔で計算している姿がバッチリと映し出されていた。


「な……ッ!? なにその映像!? 盗撮!? 違反よ!!」


みゆきが顔を青くして叫ぶ。


「不法侵入および横領の計画証拠(エビデンス)よ。貴女、レンくんの幼馴染という立場を利用して、彼のカードで毎月数百万円のブランド品を買い漁り、他の男たちと遊び回っていたわね?」


「な……何だと……!? みゆき、それは本当なのか……!?」


レンが驚愕の表情でみゆきを見る。


「ち、違うのレンくん! これはハッキングよ! この女が作った捏造映像よぉぉぉ!」


「捏造なわけないでしょ。ほら、これが貴女の裏アカウントのSNSのスクリーンショット。……『今日もバカなレン(地球1位笑)を適当におだててエルメスのバッグ買わせたわ〜www』ってバッチリ書いてあるわよ?」


ドーン! と拡大されたSNSの画面が浮遊する。


みゆきは「あ……あう……」と白目を剥いて、その場に崩れ落ちた。


『ピコン! 【幼馴染の腹黒本性を露出】:悪役ポイント+10000pt!』

『ピコン! 【テンプレクソヒーローを正論でボコボコにする】:悪役ポイント+20000pt!』


頭の中でポイントが加算される快音が鳴り響く。


「さあ、神城レンくん」


由衣はレンの顎をヒールでグイッと持ち上げた。


「お前が『俺の癒やし』だと思って甘やかしていた幼馴染は、お前をただの『動くATM』としか思っていなかったわけだが……感想は?」


「あ……あぁぁ……俺の……俺の純情が……」


レンはショックのあまり、ボロボロと涙をこぼし始めた。


「そして、お前が『一番愛してる』などと調子のいい嘘をついてキープしようとしていた私は……」


由衣はニッコリと、悪魔のような笑みを浮かべた。


「資産三千億円以上の不労所得確定・異世界帰り・魔法道具無限所有の超絶ハイスペック女よ。……お前ごときの『地球1位(笑)』の財力や能力など、私の足元にも及ばないの。分かった?」


「は……はい……申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!」


レンは床に頭をこすりつけ、土下座(スライディング土下座)を決めた。


◇ ◇ ◇


「……ふぅ。スッキリしたわ」


由衣はハンマーと六法全書をアイテムボックスに仕舞うと、手袋をポンポンと叩いた。


『お見事ですプレイヤー! 完璧な『無能ヒーロー&腹黒幼馴染へのザマァ』が完了いたしました! 掲示板が「メロン様……じゃなくて由衣様かっこよすぎる!」「テンプレクソ男が土下座したー!」と大喝采です!』


「当然よ。社畜時代から『浮気・横領・言い逃れ』の三拍子が揃った人間は徹底的に叩き潰すのが私のポリシーなの」


由衣は土下座したまま泣いているレンを見下ろした。


「さて、神城レンくん。私はこれからこのマンションを出て、自分の三千億円で買った超高級大邸宅でスローライフを送るわ。二度と私の前に姿を現さないでね」


「ま……待ってください由衣さん!!」


レンが必死の顔で由衣の足にしがみついた。


「お、俺が悪かった! 俺がバカだった! 幼馴染の嘘も見抜けず、君に調子に乗った態度をとって……! お願いです、俺を捨てないでください! 君の足舐めでも何でもします! 俺を君の『下僕』として側に置いてください!!」


(うわぁ……。正論でボコボコに叩きのめされたら速攻でマゾ落ちするタイプだこのヒーロー……)


由衣は引き気味に脚を振り払った。


「気持ち悪いから寄らないで。下僕なんて要らないわ。私には異世界でスカウトした優秀な副社長(シルヴィア)がいるんだから」


「そんなぁぁぁぁ!!」


絶叫するレンを放置し、由衣は颯爽とマンションの玄関へと向かった。


その時——


——ピコン!


『緊急通知:【地球編ミッションの判定】が行われました』


「ん? 何の判定?」


『プレイヤー水里由衣が「最強ヒーロー神城レン」を圧倒的力とロジックで屈服させ、完全な「主従関係(下僕化)」を確立したことにより……『地球編:悪役女帝ハッピーエンド』が達成されました!』


「……はい?」


『神級AIの判定:「このヒーローには甘やかす愛ではなく、冷酷な支配こそが最高のハッピーエンドである」と結論づけられました! ミッションコンプリートです!』


「待ちなさいよ!! それハッピーエンドって言えるの!? 単にクソ男を奴隷にしただけじゃない!!」


『はい! 読者満足度99.9%ですので問題ありません! 報酬として、アイテムボックスの差し押さえは完全に解除され、地球におけるすべての税金・法的正当性が免除(隠蔽)されます!』


「マジで!? 税金かからないの!?」


『はい! 三千億円、丸々あなたの使い放題です!』


由衣の目がキランと光った。


(税金がかからない三千億円……! 完全な不労所得……! 誰にも邪魔されない、本当の最高のスローライフ……!!)


「……よし、許すわ神級AI! アンタ最高のシステムよ!」


『ふふん、感謝してください!』


◇ ◇ ◇


数ヶ月後。


地球・都内の一等地に建つ、広大な日本庭園と現代魔法技術が融合した大邸宅。


「社長ー! 異世界と地球を繋ぐ『次元ポータル』の開通工事、完了いたしましたわ!」


ビシッとスーツを着こなしたシルヴィアが、笑顔で書類を持ってきた。

彼女はメロン(由衣)のスカウトに応じ、次元を越えて地球の『パフ・ホールディングス地球本社』の副社長として就任していたのだ。


「ありがとシルヴィア! これで異世界の美味しいフルーツや宝石も、地球の最新アニメや美味しいラーメンも、行き来し放題ね!」


「ええ! 本当に社長のおかげで、毎日が刺激的で最高にホワイトな職場ですわ!」


二人がテラスで優雅に最高級のエスプレッソを楽しんでいると、庭のほうから威勢の良い声が聞こえてきた。


「メロン様ぁぁぁ! 庭の草むしりと、敷地内のダンジョンモンスターの雑用討伐、完了いたしましたぁぁぁ!!」


見れば、そこには体操着姿で汗だくになりながら、庭の雑草を刈り取っている地球1位の能力者・神城レンの姿があった。


彼は由衣に完膚なきまでに叩きのめされて以降、すっかり毒気が抜け、「由衣(メロン)様の役に立ちたい」という一心で、雑用係兼警備員として勝手に庭に住み着いているのだ。


「はいはい、お疲れ様レンくん。そこに置いてある冷えた麦茶でも飲んでいいわよ」


「はいっ! ありがとうございますメロン様ぁぁぁ!!」


麦茶一杯で泣いて喜ぶ元・最強ヒーロー。

ちなみに幼馴染のみゆきは、横領の罪で逮捕され、現在は刑務所で反省の日々を送っているという。


「あぁ〜……平和ねぇ……」


由衣はふかふかのリクライニングチェアに深々と腰掛け、青空を見上げた。


前世では過労死寸前の社畜OL。

転生先では第一話で追放される悪女(笑)。

そして地球に戻ってからは、クソヒーローを成敗した「悪役女帝」。


色々と波乱万丈すぎる道のりだったが……今、彼女の手には三千億円の不労所得と、信頼できる仲間(シルヴィア)、使い勝手のいい雑用係(レン)、そして無限の自由が握られている。


——ピコン!


『プレイヤー、現在の生活の満足度は何%ですか?』


頭の中で問いかけてくるシステムに、水里由衣は最高の笑顔で答えた。


「1000000000%よ! もう二度と働かないわ!!」


こうして、元社畜OLの「最強の不労所得スローライフ」は、異世界と地球の双方において、永遠に続いていくのであった。


(完結)

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