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バスターミナルの別れ

バスが動き出した瞬間、胸の奥が締め付けられた。


アイツの姿が、夕方の光の中でゆっくり遠ざかっていく。


さっきまですぐそこにいたのに、

もう手を伸ばしても届かない距離になっていく。


(……行っちゃった)


言葉にしたら、胸の奥がもっと痛くなりそうで、口には出せなかった。


ぼくは、しばらくその場に立ち尽くしていた。


夕方の風が吹いて、さっきまでアイツが座っていたベンチの方へ流れていく。


その風に、アイツの声の余韻が混ざっている気がした。


「男子に呼び止められた時……本当は、ナオを探しとったんよ。」


胸の奥がまた熱くなる。


(……なんで、今なんだよ)


嬉しいのに、

苦しい。


苦しいのに、

嬉しい。


感情がぐちゃぐちゃになって、うまく呼吸ができなかった。


気づいたら、ぼくはゆっくり歩き出していた。


ターミナルのアスファルトはまだ熱を残していて、靴底越しにじんわり伝わってくる。


夕方の空はオレンジ色で、街全体が少しだけ寂しげに見えた。


(……だって、の続き)


どうしても頭から離れなかった。


アイツは言いかけた。

ぼくは聞きたかった。

でも聞けなかった。


胸の奥に、言葉の“欠片”だけが残っている。


それが、痛いほど重かった。


(……好きだ)


あの口パクは、アイツに届いたんだろうか。


届いていない気がする。

でも、届いていてほしいとも思う。


ぼくは普段、こんなふうに感情を表に出すタイプじゃない。


でも、あの瞬間だけはどうしても言いたかった。


声に出せなかったのが悔しい。


(……もっと、話したかった)


アイツの声を聞いて、

アイツの表情を見て、

胸の奥がずっとざわついていた。


本当は、もっと聞きたいことがあった。


もっと言いたいことがあった。


でも全部、バスに持っていかれた。


ぼくはゆっくり歩きながら、空を見上げた。


オレンジ色の空が、少しずつ夜に溶けていく。


その色が、今日の気持ちと重なって見えた。


寂しいのに、

温かい。


温かいのに、

苦しい。


(……また会えるんかな)


答えは分からない。


でも、今日の再会でぼくの心に宿った一つの思い。


アイツもぼくの事――


そこまで考えたところで、胸の奥がまた熱くなった。


ぼくは小さく息を吐いて、バス乗り場へ向かった。


夕方の風が、少しだけ優しく吹いた。



☆☆☆



バスが動き出した瞬間、胸の奥が痛い位に締め付けられた。


窓の外で、ナオがゆっくり小さくなっていく。


さっきまで、すぐそこにいたのに。

手を伸ばしたら届きそうだったのに。


(……大好き)


声にしたら、胸がもっと痛くなりそうで、言葉にはできなかった。


私は窓に額を寄せて、夕方の光に染まる街をぼんやり眺めた。


ナオの顔。

ナオの声。

ナオの驚いた目。

ナオの、少し照れた笑顔。


全部が胸の奥に押し寄せてくる。


(……なんで、いつもこうなんよ)


言いたいことが言えない。

伝えたいことが伝わらない。


会いたいと思っても、会える時にはいつも“時間”が邪魔をする。


卒業式の日も。

今日も。


どうしてこんなにすれ違うんだろう。


胸の奥が痛くて、気づいたら涙がこぼれていた。


(なんで……)


私は袖でそっと目元を拭った。


神様はどうして、

こんなタイミングで再会させて、

こんなタイミングで引き離すんだろう。


ほんの少しでいいから、あと数分だけでも時間が止まってくれたら。


そしたら私は、ちゃんと最後まで言えたのに。


バスが動き出す直前、ナオが何かを口パクした。


(……好きだ)


そう見えた。


違っててもいい。

見間違いでもいい。


でも――

胸の奥が一気に熱くなった。


(……私も)


なんで言えなかったんだろう。


あの瞬間、私の口も動きかけたのに。


声にならなかった。

私は唇を噛んだ。

座席に深く沈み込んで、胸の奥に手を当てた。


痛いのに、

温かい。


温かいのに、

苦しい。


ナオの口パクが、何度も何度も頭の中で繰り返される。


(……また会いたい)


その想いjだけが、胸の奥に静かに残った。


バスは夕方の街を抜けて走っていく。


私の涙の跡が、窓に反射して薄く残っていた。


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