異変
同棲して2年。
生活は落ち着き、
愛華も5歳になった。
愛華はすっかりパパっ子になって、
三人で過ごす毎日は穏やかだった。
——そのはずだった。
ある朝、
シャワーを浴びていた時だった。
(……ん?)
胸の横を洗った瞬間、
指先に“いつもと違う感触”が触れた。
小さな、硬いもの。
(……え……?)
もう一度触る。
やっぱりある。
小さな“しこり”のようなものが。
(……気のせい……?
いや……でも……)
胸がざわつく。
心臓が早くなる。
シャワーの音がやけに大きく聞こえた。
(……なんで……?
なんでこんなところに……)
怖くて、
息が浅くなる。
その時、
脱衣所の向こうから尚文の声がした。
「香織ー?タオル取ってこようか?」
「っ……! だ、大丈夫……!」
声が震えた。
尚文は気づいていない。
いつも通りの優しい声。
(……言えない……
こんなこと……言えない……)
シャワーを止めて、鏡の前に立つ。
濡れた髪のまま、
胸にそっと触れる。
やっぱり——ある。
小さいけれど、
確かにそこにある。
(……どうしよう……)
怖い。
でも、もっと怖いのは——
(……もし……
もしこれが“あれ”だったら……)
尚文の顔が浮かぶ。
愛華の笑顔が浮かぶ。
胸がぎゅっと痛くなる。
(……まだ言えない……
確定したわけじゃない。
まだ……)
私はタオルで胸を隠し、
深呼吸をした。
(……大丈夫。
きっと大丈夫……)
そう自分に言い聞かせながら、震える手でドアノブを握った。




