↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
39/90

会議室の二人

業務改善のプロジェクトが軌道に乗り始めた頃。


その日のミーティングは、午後の外来が落ち着いたタイミングで行われる予定だった。



医局の会議室には数名の医師が集まり、ナオが資料を広げて準備を進めていた。



その時――



PHSが一斉に鳴り響いた。



急患コール。



「行ってきます!」


「香織先生、ミーティングお願い!」


「急患は俺たちで診るから!」



同僚の先生たちは慌ただしく白衣を翻し、次々と会議室を飛び出していく。



扉が閉まる音が響き、会議室には静寂が戻った。



残されたのは――



ナオと、私。



(……なんで、こんな時に2人に……)



胸の奥に小さなざわつきだけが残る。



☆☆☆



先生たちが出ていった後、ぼくは自然にミーティングを再開しようとした。



「じゃあ、続きですが――」



言いかけて、ふと手が止まった。



静かな会議室。


二人きり。


外の喧騒が遠くに聞こえる。



(……あれ……この感じ……)



胸の奥に、中学のあの夜の空気がふっと蘇る。



暗い教室。


二人きり。


ナレーションを作り直した、あの時間。



思わず口に出ていた。




「そういえば……こんな状況、二度目だな」



☆☆☆



その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が跳ねた。



(……え……二度目……?)



ナオの横顔。


静かな声。


二人きりの会議室。



その瞬間――


中学のあの夜が鮮明に蘇った。



暗い教室。


二人きり。


ナレーションを作り直した時間。


あの時の空気。


あの時の距離。


あの時の自分の想い。



(……なんで……なんで今、その話を……)



胸が苦しくなる。



夫の顔が胸に過る。


愛華の笑顔が浮かぶ。


そして――


ナオの声が重なる。



(……ほんとにだめ……これ以上……揺らさないで……)



でも、揺れてしまった心は、もう止められなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。