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消えない時間

社会人2年目の秋。

仕事にも慣れてきて、後輩ができて、任される案件も増えた。


(……忙しいな)


毎日があっという間に過ぎていく。


ある日、後輩が言った。


「先輩、今日飲みに行きません?」


断る理由もなくて、そのまま居酒屋に行った。


仕事の愚痴を言い合って、

笑って、

気づけば終電近く。


帰り道、夜風が冷たかった。


(……あれ?)


ふと気づいた。


今日は一度も、アイツのこと探してなかったな。


それは、仕事に追われていたからじゃない。

ただ、心が少し疲れていただけだった。


(……こうやって、少しずつ薄れていくのかな)


胸の奥が、静かに沈んだ。



ある日、同期が昼休み中に言った。


「俺、彼女できたわ」


「え、マジで?いつの間に!?」


「まぁ、自然と」


自然と。

その言葉が胸に刺さった。


(……俺は、何してるんだろう)


恋をするわけでもなく、

忘れるわけでもなく、

ただ“止まったまま”。


その事実が、期待を少しずつ削っていった。


新しい家具を買った。

部屋のレイアウトも変えた。

仕事用のスーツも増えた。


生活は変わっていくのに、

心の奥の“あの場所”だけは

大学2年の夏のままだった。


(……なんでだよ)


自分でも分からなかった。


ある日、会社の帰りにコンビニで温かい缶コーヒーを買った。


レジ横のガラスに映る自分の顔を見て、ふと思った。


(……もう、会える訳ないよな)


その言葉が、初めて自然に胸に落ちた。


期待が薄れていくのは、悲しい瞬間じゃなかった。


ただ、静かに、ゆっくりと沈んでいく感じだった

。

でも――


(……それでも)


完全には消えなかった。


胸の奥のどこかで、小さな灯りがまだ残っていた。


(……会いたい)


その気持ちだけは、どうしても消えなかった。


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