第4話 十万の魔王軍
森を抜けた先の平原で、ヒロは足を止めた。
街道を埋め尽くすように、黒い鎧の兵士たちが並んでいる。空には翼を持つ魔族、地上には騎兵と魔法兵。先頭の魔族の将が丘を見上げた。
「ここより先は魔王陛下の領土だ。武器を捨て、ひざまずけ」
ヒロは聖剣へ手を伸ばした。
「我らは十万だ。聖剣一本で相手をするつもりか?」
ヒロは平原を見渡した。敵の数、配置、逃げ道を静かに確認する。
少し考えてから、口を開いた。
**「俺一人迎えるのに、それだけ集めた努力は認めてやるよ」**
魔族の将が顔を歪めた。
「……殺せ!」
軍勢が動いた。
最初に迫った騎兵の槍を、ヒロは身体を滑らせてかわした。先頭の腕を斬り、続く馬の脚を刃の腹で打つ。隊列が崩れた隙間へ踏み込むと、聖剣が黒い鎧を次々と砕いた。
背後から火球が飛ぶ。ヒロは倒れた兵士の盾を拾って受け、爆風に乗って魔法兵の列へ走った。
敵は多すぎる。だが、味方が密集しているため、一斉に攻撃できない。ヒロはその混乱を利用し、敵陣の薄い場所を選んで進んでいく。
やがて軍勢の中央に裂け目が生まれた。
ヒロはそこを抜けた。
「待て! まだ包囲は終わっていない!」
背後で魔族の将が叫んでいる。兵士たちは倒れ、隊列は崩れ、魔法の光が平原のあちこちで弾けていた。
ヒロは振り返らない。
聖剣を鞘に収め、魔王城へ続く荒野を歩いていく。




