第五十六話
「高校生活最後の夏休みだぜ?どっか行かね?」
蝉の鳴き声が聞こえる教室で「あちぃ」とあちこちから聞こえてくる。それでいて、ザキは夏休みを目前にして浮かれてる。
「何でも最後最後って、高校生活なんかを惜しむなよなあ」
飴ちゃんがその様を笑う。きっと大学の指定校推薦かなんかで教師から太鼓判押されたんだろう。「大学生になればこの制服も着られなくなんだぜ?」「超嬉しいけどお?」なんて会話を聞きながら、スケジュールを開く。
「この日か、お盆期間とか、あとは最終日」
「休み少ねえな」
「お母さんが『夏期講習出ろ』って五月蝿くて」
成績はある程度落としてはないけど、伸びていないと言ったらそうで、別居している母の身からすれば、少しでも強制的に勉強する環境にいる方が安心するんだろう。
「馨ちゃんママおっそろしぃ」
「息子に勉強させるのが好きなだけだよ」
それが恐ろしいんだけど、って顔された。
「それじゃ、終業式の日にそのまま海でも行かね?」
「海行って、何すんのぉ?」
「花火とか?」
「いやいやあ、青春だろ」
ザキがドヤってる。真夏の海=青春、の方程式があるとでも言いたげだ。
「ダルっ!その青春ブーム早く散れ!」
青春が何かも分からない僕は青春が悪なのか善なのかすらも分からない。飴ちゃんには嫌悪する対象なんだろうけど。
「ひでえ」
「僕は何でも良いよ。一緒にいれば楽しいでしょ」
「あはっ、馨ちゃん天使モードだあ」
「天使??」
「ああ何か最近、馨が丸くなったなあって話してて」
「輪郭が??」
「違う、性格が!!」
「ふふっ、元来まあるい性格してると思うけど?」
「何かのジョウダンですか??」
飴ちゃんがカタコトで馬鹿にしてくる。本当にそんなに悪い性格してないと思ってたんだけど。
「何となく攻撃性が減ったよな」
「でもザキに以前、『鋏でちょん切るよ』って言ってたの馬鹿ウケた」
「ああアレ、ちゃんと意図受け取れたの?」
「は?いつの話?」
「テスト勉強中にザキがめっちゃ頭ひねらせてた時」
「何で鋏なのか分かった?」
「……近くにあったから??」
「あはっ、蟹ちゃんに今度こそ切られんよぉ?」
「蟹??」
「さるかに合戦で蟹が柿を育てたでしょ?それに倣って、柿崎も脅せば成長するかなって思って」
「バッカにしてんなあ!!」
とコショコショの刑に処される。
「あははっ、ごめんって!ただの悪ふざけ!」
「男同士でむさ苦しいわあ」
明らかに飴ちゃんとは違う声。こんな一瞬でシラケるような言葉、嫌がらせと言っても過言では無い。
「あ?何か言った?」
ザキが辺りをキョロキョロと見回す。
「たぶん、あいつら、茸平のグル」
飴ちゃんが耳打ちで教えてくれた。クラスの一部の陽キャがつるんでできている男女グル。
「どーでもよっ、ザキ、海行っても蟹殺しちゃダメだからね」
「わかった」
「馨ちゃん、あはっ、言葉のセンスよ」
また仲間内で話そうとすると、嫌味がまた聞こえてくる。
「砂糖 馨ってさあ、女くせえピアスとダセェ猫の髪飾りなんか付けて、自分のこと『可愛い猫ちゃん』とでも思ってんのかなあ??」
名指しかよ。
「……殺す」
「馨ちゃん!??」
「ダメダメダメ、馨、一旦落ち着け??」
とザキと飴に全力で止められたけど、僕はみかちゃんから貰った大切な宝物にケチつける奴は死んでも許さない。
「審美眼すらも持ち合わせていないあのバカの腐れ眼ん玉潰したところでどーせ生活レベルがクソから変わんないんだから良いじゃん!!寧ろ、痛い目見て他人に優しくなれんじゃね??」
飴ちゃんにタックルされるみたいに阻止されて、離してくれないから説得を試みた。向こうにも聞こえてるから苛立ちが見える。
「純粋に馨ちゃんの口が悪くなってる!?やっば!!」
「馨、あんなバカは無視しろ。蝉と同レベだって」
そのザキの声で少し落ち着きを取り戻した。
「あーあ、寿命も蝉と同じだったら良かったのになあ」
という愚痴をまた聞こえるように言った。
「てめえ、陰キャのくせにイキってんじゃねえよ!!」
やっと向こうから胸ぐら掴みにきた。
「そうゆう人間の見方しかできないんだあ、近視眼的で可哀想にぃ」
「あー、盛大に煽り散らかした」「馨ちゃん、人間をイラつかせる天才だもんね」というザキと飴ちゃんの会話が耳に入る。教室全体がシンとしたからだ。
「お前、女みてえな顔で教師に媚び売って優等生演じんのは楽しいか?中身がこんなクズなのに」
「は?何言ってんの?教師に媚びたことなんかないけど」
「訂正するのはそっちなんだね」「馨はクズじゃねえ」なんだ、この野次馬たち。めっちゃ呑気じゃん。
「証拠の写真もあるけど?」
と耳打ちされて、チラッとスマホ画面を見してきた。……粥川、お前まじ、ぷふっ、笑わせんなって。
「あはっ、おっさん相手に色目遣って点数稼ぎとは、ご苦労なこったあ」
「で??僕の何が気に食わないの??」
内心で笑わせてもらって機嫌直ったわあ。少し微笑みながら、優しくカウンセリングした。
「全部だよ!!お前の全てが気に入らねえ!!!」
「は?もっと具体的に言えよ」
「何でお前みたいなクズが優等生気取ってんだって言ってんの!!協調性の欠片もない、自己中のバカが!!実力では俺よりも下なくせに教師に媚び売ってんのが、心底目障りで気色悪ぃんだよ!!」
え?待って、定期テスト勝ってるよね??あ、そっか、媚び売って成績上げてもらってるって思われてんだ。
「そんな僕が媚び売ってんのがムカつくならさ、平等にお前もやれば良いじゃん」
「はあ?嫌だよ気持ち悪ぃ、俺は生憎お前みたいに誰にでも尻尾ふる駄犬じゃねえから」
「あ、まさか自分がブスなのを気に病んでる??」
「コレ顔面つよつよの馨ちゃんに言われたら俺一生病むぅ」「霰には言ってないだろ」「そーだけどさ、破壊力エグすぎん??」「まあね」
「ざけんな、日本語通じないのか??もうお前が視界に入るだけで目障りだから死んでくれ」
自分は媚び売りたくないけど、周囲に媚び売ってることで不当な評価を与えられている奴がいると気に食わない。そんなプライドの高さ。公平性を掲げて、正義を行使してくる。でもそれ以前に自分のプライドを守りたいならもっと実力で物言わせてみろよ、って思うのは違うのでしょうか。
「ごめん、僕の大切な人が僕が生きていることを望むんだわ。まあどっちでもいいけど、僕が教師に媚び売ろうが売らまいが僕の自由だから、一切口出ししてこないでね」
「コレ、ばら撒いても良いのか?」
最後の切り札みたいに言うの笑える。お粥さんとロマンスごっこしてたギャグ写真なのに。
「どーぞ、ご勝手に。ノーダメだから」
と疲れたあ、と席に戻って座ると、なんかニコニコしながらこっちを見つめてくる教師がいた。待って、いつから居たの??
「喧嘩は良くないね、仲直りはできた??」
「はい、ちゃーんとしましたよ♡」
と優等生スマイル貼り付けて返事した。
「媚び売るなよ、馨ぅ」
ザキ、いじってくんなあ。
「まあ、評価には一切影響しないよ。それができないと教師失格だからね」
みかちゃんだいぶ話の流れ聞いてたなあ。恥っず!!もうアイツの頭、シナプスじゃなくて頭頂部が光るようになって欲しい。
「じゃあ、先生にちゅーしても悪い評価にはならないってこと??」
馬鹿みたく質問した。
「それは生活態度の方を改める必要があるんじゃないかな?通知表に書いちゃうよ?」
それは、可愛いいい♡♡
「あははっ、馨ちゃん通知表にキス魔って書かれるんじゃん??」
「書かれても良いからちゅーして良い??」
「バッカ!!すいません、こいつストレス溜まると自棄になって変なこと言い出すんですよお」
とザキに空手チョップ受けてフォローされた。
「冗談に決まってんじゃん、真剣み出すなよなあ」
「ふふっ、君には恋人がいるんじゃなかったっけ?冗談でも恋人が悲しむようなこと言っちゃダメだよね?」
目の前の貴方が僕の恋人ですけどー!!!うわっ、可愛すぎる♡♡優しい口調の小悪魔教師が怒ってくれたあ、
「はーい、分かりました。先生っ♡」
僕の愉快な昼休みが終了した。
「英語のおじいちゃん、ちょっと腰やっちゃって、代わりに私がこの授業を見させて頂きますね」
挨拶が終わった後、そう言ってみかちゃんは何ページから?どうやっていつも進めてる?というのを聞きながら教壇に立っている。僕は一生懸命にみかちゃんのフォローに入った。
「ここ日本語訳してくれる人ー?」
全力で手を挙げた。
「それじゃあ砂糖、お願いします」
そうやって柔らかく微笑みながら指名する貴方に僕はこころまで引き寄せられてしまうみたいだ。
There was a large crowd around us, and every face in it looked happy. We had little opportunity to talk until we reached the woods, where there were no flowers and no people.
「僕らを取り巻く群衆はみな幸せそうに見えた。人も花もない森の中まで、僕達が話す機会はなかった」
"Is there really guilt in loving?" I asked suddenly.
「『恋は罪悪ですか?』と僕は突然尋ねた」
"Yes, surely," Sensei said. He seemed as certain as he did before.
「『そうだね、確かに』と先生が言う。彼は以前と同様に確信した様子だった」
"Why?"
「何故ですか?」
"You will soon find out. In fact, you ought to know already. Your heart has been made restless by love for quite some time now."
「すぐに分かるよ。実際、もう君は分かっているはずだ。ずっと前から君の心は恋でそわそわしているからね」
Vainly, I searched my heart for an answer.
「勘違いして、僕は自分の心の中に答えを探してみた」
"But there is no one whom you might call the object of my love," I said. "I have not hidden anything from you, Sensei."
「『でも僕には貴方が言う恋の目的物のようなものはありませんよ。僕は貴方に何も隠していません、先生』と僕は言いました」
"You are restless because your love has no object. If you could fall in love with some particular person, you wouldn't be so restless."
「目的物がないから君は落ち着きがないんだよ。もし君が特定の誰かに恋をすることができたのならば、君がそんな落ち着きを失うこともなかっただろうね」
"But I am not so restless now."
「僕は今、落ち着いていますけど」
"Did you not come to me because you felt there was something lacking?"
「君は何かが欠けてると感じたから俺のところに来たんじゃないの?」
"Yes. But my going to you was not the same thing as wanting to fall in love."
「まあ。けど僕のは恋を求めるのとは違います」
"But it was a step in your life towards love. The friendship that you sought in me is in reality a preparation for the love that you will seek in a woman."
「これは君の人生が恋に向かう段階の手順なんだよ。君が俺に求めた友情は実際、君が女性に求めるだろう恋の準備にすぎない」
"I think that the two things are totally different."
「僕はその二つは全くの別物だと思いますけどね」
"No, they are not. But being the kind of man that I am, I cannot help you to rid your heart of that feeling of want. Moreover, peculiar circumstances have made me even more useless than I might have been as a friend. I am truly very sorry. That you will eventually go elsewhere for consolation is a fact I must accept. Indeed, I even hope that you will. But...."
「そんなことないよ。俺は君が恋に望む感覚を取り除くことはできないし、そうゆう男なんだ。それに普通じゃない事情があって、例え、友達だったとしても役に立たないだろう。本当に申し訳ない。君が最終的に疲れて何処かへ行ってしまうとしても俺はその事実を受け入れるはずだし。本当、君がそうしてくれることを期待さえしている、けど……」
I began to feel a strange kind of sorrow.
「僕は悲痛のような奇妙な気分がしてきた」
"Sensei, if you really think that I shall drift away from you, there is nothing I can do about it. But such a thought has so far never crossed my mind."
「先生、貴方が本当に僕に離れて欲しいと思うのならば、それは仕方ないことです。が、そんな考えが脳裏を過ぎったことは今まで一切ありませんよ」
Sensei did not listen to me.
「先生は僕の言葉に耳を貸さなかった」
「砂糖くん、ありがとうございます。とても素晴らしい日本語訳でしたね。ここでのポイントは……」
黒板に訳しにくいところを抜き出して、何故そのような訳になるのかを解説していく。みかちゃんって案外英語できたんだなって、新たな一面が見られてワクワクした。
「それにしても、みなさんは"恋は罪悪"だと考えますか?」
という突然の問題提起にクラスのみんなが戸惑い、蝉の鳴き声だけがよく響いた。
「分かりました、例え話でもしましょう」
例えば、自分のことを馬鹿にされても怒らない人間が、恋人のことを馬鹿にされたら突如怒り出してしまう。これって、僕の例じゃん。これは罪悪か神聖か。
「恋人のことを大切にしたいという意思が見えるから神聖じゃない??」「でも恋をしなければこの人は怒ることもないじゃんね。だから、恋は罪悪じゃん??」
「じゃあ次の例、もし恋人のことを束縛しすぎた結果、自殺に追い込んだとしたら?これは罪悪?」
これ、お粥さんの例!!みかちゃんも知ってたんだ。罪悪の方が多そうだけど、僕はお粥さんの事情を知ってるから神聖だと思う。
「これは絶対に罪悪だよ!!だって恋人を死なせてるんだよ??」「でもさ、束縛って恋人のことを大切にしすぎたからそうなったんじゃない??神聖さも感じるけどなあ」
「最後、この小説で出てくるお話。好きな子がいるんだけど、親友もその子が好きで相談された。それで自分は親友に諦めるように伝えて、その子と付き合った。これは?」
この親友、小説では自殺するんだよなあ。そこまでいくと、罪悪の方が勝りそうだけど。
「酷い!!自分勝手だよ!!」「だって好きな人は譲れないじゃん!!」「諦めるように伝えるのは無し、お互いに好きで丸く収まんなかったのかな??」
様々な意見が飛び交う。それを眺めて塩先生は満足感に浸ってる。議論する生徒の姿が見たくて、この質問をしたんだろう。
「先生は、どう思いますか?」
逆手にとって、議論の渦に飲み込んだ。抵抗する暇もない。なんて、僕はただ純粋にみかちゃんの回答が聞きたいだけだ。
「私は、罪悪だと思うかな??」
「どうして?」
「友人を騙すのはやっぱり良くないし、自分がその子と付き合ったところで幸せにできるのかって聞かれたら、自信がなくて首を横に振っちゃうと思うし、それだったら私のことは良いかなって、諦めがつくんだよ」
悲しそうな笑顔、みかちゃんはそんな恋愛ばっか繰り返してきたのかな?じんわりとつらくなって、それと同時に、僕の立ち位置が不安になってきて、みかちゃんにまた質問した。
「何としても一生を添い遂げたい相手だったとしたら??」
「んー、私も普通じゃない事情を抱えていてね。私自身、あまり惚れられるのが好きではなかったんだよ」
過去形、で答えられた。今はそうじゃないってこと。普通じゃない事情、みかちゃんのこころを蝕む闇だ。
「うっわ、言ってみてえそんな台詞」
ザキが伸びをしながら、くつろいで聞いている。
「そーゆーザキは??」
「俺は、好きな子には惚れられたいし、付き合いたいけど、誰かを出し抜くのは気に入らない。正々堂々と自身の魅力を磨いて、勝負するしかないと思ってる」
「良いじゃん、ザキ。男前で」
「そうゆう点では馨は策士だろうな」
「だって人生なんて、如何に自分の幸福度を上げるかが勝負でしょ??他人に遠慮なんかしてらんないよ」
「それで俺や霰が傷付いたとしても、お前はそれで良いのか?」
「それはまあ、傷付けないようにはするけどさ。恋情なんて一時的なものだし、それ以上に罪悪感の原因は作りたくはないからね。んー、二人は僕のことを応援してくれないの?」
「するよする!!例え同じ子を好きになったとしても、んーーー、馨ちゃんに勝てる気がしないんだけどぉ、あはは」
「それで霰は僕の悪いところを言う??」
「言わないよぉ、馨ちゃんに悪いところなんてないしぃ。勝ち目ない勝負なんて挑まないからぁ」
「はい、そこまでにしてください。みなさん沢山議論して頂いてありがとうございます。この質問に正解はありません、恋は罪悪であり神聖であり表裏一体であると私は思います。みなさんの意見が分かれたのは、事例に共感できるか否か、でしょうか。情状の酌量というものにも似ています。どちらでもあってどちらでもないのですから、人間は無意識のうちに自分が傷付かない解釈をしているのかもしれませんね」
罪悪の中にも神聖なものを感じて、神聖だと信じていたものも罪悪が微かに色を強めた。僕はみかちゃんのことを大切にしようと、みかちゃんが傷付かないようにと、誰かさんの謗りや妬みについ反論していた。けれどこれは、僕自身が制裁行動で得られる快楽、つまり、みかちゃんを守ったヒーローという立ち位置に僕がなりたかった、結局、みかちゃんによく見られたかった、というようにも捉えられた。そもそも、みかちゃんは僕よりも大人だし、そんな些細なことで傷付かないのかもしれないのに、僕が子供っぽくヒーローぶりたくて、己の身勝手な正義を振りかざしたくて、誰かさんに対して攻撃的になってんの、を見て、やっぱみかちゃんは笑ってた。ああ、また自己嫌悪に落ちそう。僕は生きていることに罪悪を感じる。
「馨、どうしたの?勉強いつもより捗ってないじゃん」
夜、みかちゃんが入れた一杯の珈琲を飲んで、眠気を飛ばしながら学業に勤しむ。机に座っているだけで、ペンがずっと動かないこと、みかちゃんに見破られてしまった。
「今日の授業のこと考えてて.......」
「難しいのがあった?」
「うん、時間外労働を頼んでもいい?」
「ふふっ、労働じゃないよ。ただの恋人同士の会話でしょ?」
と僕の頬にキスするから、悶々としてまた勉強が捗りそうにない。.......ありがとうのキスくらいはしても良いかな?今はキスしてもいい先生みたいだし、
「罪悪の対義語として神聖が置かれているけど、あまり感覚的に掴めないんだよね。神聖なもの、と言われても教徒じゃないから分かんない」
「罪悪って明確な対義語がないから、難しいよね。俺は罪悪感を払拭するほどの純粋だと思っているよ」
「純粋って、僕がみかちゃんのことを一途に愛している、みたいなことだね♡♡」
半笑いでふざけたトーンでそんなことを言う僕はきっともう純粋でない気がする。恥のために純粋でいられない。
「そう、だね」
照れ隠しなのか目を逸らし噛み締めるような喜びの表情を見せるのがとても可愛いらしい。
「好き」
そう呟いて、みかちゃんといけないことをする僕は罪悪感とともに背徳感を感じている。そもそも、この行為はただの性処理でいけないことでもないのだけれど、みかちゃんの恥じらう表情を見ていると唆られるものがある。社会一般的に見て、セックスは子孫繁栄のための神聖な行為。けれど、理性を飛ばして快楽にどっぷりと浸かる下劣な行為。僕らの間には子供なんてできやしないから、社会の規範に乖く罪悪な行為だと身に染みている。それだったら、僕らが親密度を深めるのためにその行為を楽しむのは悪なのか?エゴイストがただ己の快楽のために孕ませるのは善なのか?はたまた僕らだと僕が勘違いしていて、エゴイストな僕がみかちゃんをレイプしてただ遊んでいるだけなのか?分かんないけど、付き合ってくれるみかちゃんは随分といじらしいと思う。現世に生きる天使みたいだ。




