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第十六話

文化祭当日。

ザキと飴ちゃんと三人で校内をまわる。


「ねーねー、お化け屋敷ある。行く?」


と飴ちゃんが僕達に問いかける。


「えー俺はもうお化けとか懲り懲りなんだけど。」


「ザキ、お願い。お化け屋敷、入ろ?」


と強くお願いしてみる。

僕的には行けなかったら困るのだ。


「わかったよ。後で何か奢ってね。」


「ふふっ、やった。」


長蛇の列に並んで、やっと入れた館内はひんやりと涼しかった。

気味の悪い音がする廃墟の病院を歩いていく。


「やっべ、すっげー怖え。」


と笑顔で進む飴ちゃんとその腕を離さぬようにしっかり掴んでいるザキ。すげー面白い。と後ろから眺める僕。


突然、パチパチッっと電気が切れる。

暗くなって、ザキがやばいしか言えない状態に陥る。


「うるさーい。」


と飴ちゃんがへらへら笑いながらザキを揺する。


再度、明かりが付いても何も変わりは無かった。


「何だったんだろうねー。」


と目の前にある鏡を見てみると、僕達の他にもう一人、血だらけの患者が立っていた。


「うわっ、あああ、いるいるいる。」


とザキがまた騒ぎ立てる。だが、後ろを振り返ってみると、そこには誰もいなかった。


「うわあ、今のめっちゃ鳥肌たったあ。」


飴ちゃんも少しビクついている様子。

完成度、えぐい高いな。


今度は女の子の泣き声が聞こえてくる。

一人の女の子が道端に座っていた。


「声かける?」


「いや、やばいって。」


と飴ちゃんの提案を即否定するザキ。


「あはっ、ひでーやつ。」


とそんなザキを笑って、飴ちゃんが声をかけた。


「どーしたの?」


「私、綺麗?」


と泣いている女の子が振り返って、口元を見せるとその口の端が引き裂かれていた。


声をかけた飴ちゃんもこれには若干、顔を歪ませた。

ザキは声を殺して、驚いた顔をしている。


「綺麗じゃ…ないよね。こんな口じゃ、私、もう生きていけない。」


「僕は良いと思うよ。その口。」


「お砂糖ちゃん、何口説いてんの。」


と飴ちゃんに半笑いで囁かれた。

確かに、そうだなって、言った後に思って、口裂け女役の子に悪い事をしたな、とも思った。

でも、その子、ちょっと笑ってたから、まあ、良いか。


その後も音や小道具でたくさん驚かされて、出口から飛び出した。


「あははっ、楽しかったあ。」


と第一声をあげる。


「うん、面白かったねー。」


とその声に飴ちゃんが共感してくれた。


「俺は今日一日分の気力を失った。」


とザキにどっと疲れが溜まっているのが傍から見てもわかった。


「おつかれザキ。何か奢るよ。」


とマップを手にまた歩き出そうとすると、肩をトントンと軽く叩かれた。


振り向くと、少し緑がかった髪に白くペイントした顔。目の周りは黒く塗られていて、口は裂けている。そして、一番驚いたのはナース服を着ていること。


「Why so serious?」


と話しかけてきたやばい人は一瞬で誰だか理解できた。

そして、僕を笑顔にさせた。


「あはははっ、最高ですね。」


と笑いながら、写真を撮った。


誰?と首を傾げている二人とすごい温度差を感じたので説明した。


「生物の塩先生。」


「え、塩ちゃん?あの話題のイケメンが?」


と飴ちゃんが食いついてきた。

あのイケメンがこんな狂人になっているんだ無理もない。


「馨、仲良いの?」


「うん。朝、よく会うんだ。」


会いに行ってるの間違いかもしれないが。



文化祭前日。


「みかちゃん、文化祭一緒にまわりましょうよ。」


と軽く誘ってみると、


「無理。」


と即答された。慈悲の欠片もなかった。


「まあ、そうなりますよね。」


「でも、ちょっとは楽しみにしててよ。」


とは言ってくれていた。



これかあ、最高。文化祭ありがとう。


「塩ちゃん、何か奢ってくださいよお。」


といつの間にか仲良くなっている飴ちゃんが厚かましく強請っている。


「んー特別だからね。」


とそのお願いを聞いてくれた。


みかちゃんはアイスを僕達に奢ったらどっかに行ってしまった。

クーラーの効いた部屋で奢ってもらったアイスを食べる。



「みーちゃん、どう?できは?」


「ありがと。完璧。」


「随分と目立ったでしょ?」


「んーでも楽しかったよ。ちょっと踊ってきた。廊下で。」


「狂人だあ。」


「うん。だからか、例年よりも声かけられなかったよ。」


「普通にやばい人。」


「それ、お粥に言われちゃうのか。」


「うん、俺と同類。」


と嬉しそうに笑っている。


立ち入り禁止の美術室でタバコ休憩をする。

このメイク全部、お粥にやってもらった。

本当は馨と一緒にまわってやりたかったけど、教師の立場ではできないので、仕方なく仮装をしてみた。

クラスのコンセプトに合わせて。


「みーちゃんさあ、最近、楽しそうだよね。恋人のせい?」


「そうだね。」


「誰誰誰?生徒?受け持ち?禁断の恋的な?」


「何でそんなに生徒にしたがるの?」


「だって、学校行事で張り切るなんて相手生徒じゃなきゃしないもーん。」


「あー、確かにな。」


自分で納得してどうすんだと突っ込んでも、納得せざるおえないド正論。


「で、どの子?俺、絶っっっ対に言わないから。」


お粥の口の硬さは信頼できるが、俺に言うメリットが一ミリもない。


「聞いてどうすんの?俺を脅す気?」


「超信用無いじゃん。ただの好奇心。」


「ヒントは校内で一番顔が良い子。」


「んー、うん。お幸せに。」


と訳がわからない返事をされたので、


「ああ、ありがとね。」


とぎこちなく気持ちがこもってない感謝を述べる。


「ねえ、顔が良い子で思い出したんだけどさ、砂糖 馨って子、知ってる?」


「え?知ってるけど。」


いきなりその名前を出されて、内心の動揺が隠せない。


「その子さ、みーちゃんに似てて、すごい綺麗だよね。」


「で?」


「俺のモデルにしちゃおっかなあ、なーんて。」


「やめた方が良いよ。生徒相手だと問題になる。」


まあ、俺が言えたことじゃないけど。


「だけどさあ、可愛くない?黒髪で制服着てるあのあどけなさが。」


「んー、可愛いなあ。」


もちろん、あいつは世界で一番可愛い。

表面上と内心の温度差を不自然に作る。


「授業中もずっと見てても飽きないくらいに惚れちゃってさあ。やばいんだよね。前髪あげてると特に顔が良く見えて最高。」


こいつが人の顔しか見ないのはよく知っている。顔以外興味関心が一切ない為、付き合う人の性格は全てバラバラだ。

ただ、自分が見たい表情を作らせる為には、何をしたって大丈夫な人。

だから、仕事だってやめてもきっと大丈夫なんだろう。


「ふふっ、狂人だな。」


「それ褒め言葉だよ?」


「うん、わかってる。ただし、生徒を傷つけたら俺が許さないから。」


「へーへー、教師様は怖いなあ。」


「じゃあ、俺はもうちょっと遊んでこよっかな?」


「んー、早く行け。」


と自分の陣地から出て行けと手の仕草を交えて伝えられた。


「あはっ、超不機嫌。」


と俺は上機嫌でまた校内を練り歩く。


あっ、碧先生。チーズハットグなんて食ってる。食わされたんだろうな。全然似合ってない。


「碧先生、文化祭楽しんでますか?」


と声をかけても返事がすぐに帰ってこない。

きっと俺が誰だか分からないのか。


「まあ、楽しんではいるが…何だ?その格好は?」


「クラスの宣伝ですよ。お化け屋敷やってるんで。」


「あっ、お前!塩 蜜柑か!」


と驚いた様子で言われ、もやもやが解けたといったスッキリした表情を見せられた。


「当たりです。」


「教師のくせに浮かれてんなあ。」


と嫌味ったらしい口調が始まった。私だとわかった瞬間。


「良いじゃないですか。今日ぐらいは。」


「第一、文化祭は生徒の行事だ。お前が楽しんでどうする。」


「私は生徒と一緒に楽しめる行事だと思ってますけど。」


「はあ。だいたい、そんなんじゃ教師として示しがつかないだろ。」


「はい。まあ、そうですよね。そこは反省してますよ。でも…」


「でもじゃない。言い訳無用だ。早く何とかしろ。」


はあ、何でこの人こんなに固いんだろ。


「碧先生、これドッキリカメラだったらどうします?」


「え?何?ドッキリカメラって?」


「もしも後輩が文化祭で羽目を外していたら、碧先生は叱る?叱らない?的なあれです。」


「ああ、テレビでよく見るやつな。それで?」


「この様子がずっと撮られてて、それが校内中に広まったらどうします?って話です。」


「ん?それがどうだって言うんだ?俺は俺の行動が正しいと思ってる。何も恥じる事はない。」


「さすがですね。じゃあ、投稿しても大丈夫ですよね?」


とスマホを取り出して、操作する振りを見せた。


「ちょっと待て、塩 蜜柑。そんなつまらんコンテンツを配信するな。」


とスマホを操作する手を掴まれた。


「もしかして怖いんですか?色んな人から批評されるのが。」


「…やめないか?そういうことは。」


と珍しく困った表情を見せてきた。

流石に可哀想になってきたので、ネタばらしでもしようか。


「全部嘘ですよ。」


と笑顔で真っ黒のスマホ画面を見せる。


「はあ、塩 蜜柑。お前、本当。まじで…可愛くないよ。イタズラが。まったく。」


と間が悪そうに言って、安堵からか怒りからかため息が止まらない。


「クラスで動画配信してるから信じるかなって。」


「ああ、もう何も奢ってやんねー。」


「え、それは酷いですよ。」

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