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第十一話

終業式。


「みかちゃん、アイス買ってきました。」


と暑さにやられている俺のもとに天使がやってきた。


「まじでありがと。」


「ここ最近の暑さは異常ですよね。」


と棒付きアイスを一緒に食べる。


「何?」


彼が少し目を細めて、こちらを見ているのを不審に感じた。


「すいません、色っぽくて見とれてました。」


「この変態。」


「みかちゃん、ちょっと見ててくださいね。」


とアイスを下から上へ舐めて、


「どうですか?」


と得意気に笑った。


「教室でそれやるなよ。欲情する。」


「ふふっ、みかちゃんも同じ変態ですね。」


と何だか嬉しそうにしてるのが可笑しかった。



夏休みに入って、かれこれ一週間。

恋人からの連絡が一件も入ってこない。


「まさか俺の事、飽きたのか?」


携帯を取り出し、連絡が無いのを確認しては不安に駆られる日々。

夏休みで心機一転、彼女が出来ましたなんて。

洒落にならない。


夜、二十二時半。

酒を飲みながら勢いで電話をかけてみた。


「もしもし、馨。」


「はい、何ですか?」


「単刀直入に聞くぞ。俺の事、好きか?」


「はい、好きですよ。今も声が聞けて嬉しいです。」


「じゃあ、連絡くらいしてよ。…凄い寂しかった。」


「ふふっ、ごめんなさい。僕も寂しかったです。」


と嬉しそうな声が返ってきた。

話を聞くと、夏期講習を始めたらしく、自習室で二十二時まで勉強しているらしい。

それで、家に帰ってから電話するにしても、時間が遅いから迷惑だと思っていたようだ。

なんなら、夏期講習が終わってから、存分に楽しむ予定だったとも聞かされた。


「じゃあ、八月十一日から。楽しみにしてますね。おやすみなさい。」


と言われて電話を切られた。



「砂糖先輩、こんにちは。」


「あっ、桃ちゃん。おはよ。」


あぁ、今はおはようの時間か。テンパった。


私、桃原 景は憧れの砂糖先輩と同じ塾に通わせてもらっている。

たまたま偶然に噂を聞いて、夏期講習だけだが親に頼み込んでやってみることにしたのだ。


授業を受け、その後は自習室にこもって勉強する。

勉強好きでもない私がここまで勉強熱心になったのは砂糖先輩のおかげである。


そして、何よりも楽しみなのが、先輩と駅までの少しの間、一緒に帰れる事だ。


二十二時になって、自習室から出ていく人でうるさくなる頃。


「今日も疲れたね。」


と先輩が声をかけてくれるので、今までの勉強の疲れが全て癒される。


帰り道では、今日の授業がどうだったとか、夏休みをどう過ごすかとか、夏休みの宿題が終わらないとか、そう言った、ただの学生の会話をしていた。

それでも、先輩と一緒いるのが楽しかった。


夏期講習の最終日。


「今日で終わりだね。」


と先輩が嬉しそうに話すのが少し寂しかった。


帰り道、


「少しコンビニに寄っても良い?」


と先輩に言われた。

「良いですよ。」と言って、先輩について行く。


「何か食べたいのある?奢ってあげるよ。」


とコンビニのショーケースを見ながら、質問された。


「いや、それは悪いですよ。」


と言うと、


「遠慮しないでいいって。ちょっとは先輩面させてよ。」


と笑顔で言われてしまった。


私は頭を使ったせいか、無性に甘いものが食べたかったので、お言葉に甘えて、シュークリームを買ってもらった。


先輩は「なんかガッツリ食べたくなった。」と言って、唐揚げくんを買って食べていた。

先輩の新たな一面が見られて少し面白かった。



八月十一日。

昼にインターホンが鳴った。

ドアを開けると、


「すいません。家事代行サービスで来ました。砂糖と申します。」


と礼儀正しく挨拶をされた。

横には大きなキャリーケース。


「家事代行サービス?」


「はい。要りませんか?」


「いるよ。入って。」


と家に招き入れた。


「普通に家に来れば良いのに。」


ソファに座らせて、お茶を出す。


「いつの時代もエンターテインメント性は大事です。」


「ふふっ、馨はいつも俺を楽しませてくれるね。」


「もっと楽しませてあげましょうか?」


と肩を抱かれた。


「それは後で。」


と無理矢理、彼を引き離す。


「あっ、これあげます。」


とふと思いついたように彼がポケットから小さなフィギィアを取り出した。


「なにこれ、イグアナ?」


「はい、ガチャガチャで手に入れました。みかちゃん、好きかなって思って。」


「うん、好き。ありがと。」


早速、机の上に飾って置いた。凄く可愛い。

テレビではニュースが流れている。

馨が何か考えている様子を見せたと思ったら、


「みかちゃん、大好き。愛してる。」


といきなり抱きしめてきた。


「馨、どうしたの?」


「未来は信じられないです。」


「ん?」


「変わりたくないです。このまま時を止めていたい。」


と強く抱きしめて訴えてきた。


「時が止まってたら、馨に愛してるって言えないよ。」


「だけど、ずっとこのままでいたいんです。変わりたくありません。愛していたいです。」


「我儘だな、馨は。」


人が人を好きになる。

それは三年が限度だと言われている。


けれども、死んだらそれは永遠になるのだろうか。

存在は消えても想いは消えないのだろうか。


ずっと愛し合ったままで、永遠に死んでいたい。


「馨、俺を殺して。」

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