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僕と魔王の復讐協定 ―皆殺し復讐物語―  作者: パン
6章 集合都市アクアコット
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お久しぶり

「新幹線って乗り物があってね、ここから目的地くらいまでだったら一瞬で到着できちゃうくらい速いんだよ」

「……勝てそうにないですね」


 魔法都市を出発し、トラブルもなく順調に歩く事1時間。

 退屈くらいがちょうどいいという事をここ最近嫌という程思い知らされてきた僕達は、緑豊かな大自然を背景に退屈で平和な時間を過ごしていた。


「しかもね、乗ってる最中に飲み物とかお弁当の販売まであるんだよ。流れる景色を眺めながらお酒を飲む、1度経験すれば病みつきになるね」

「肉は!? 美味しい肉はあるんですか!?」

「……たぶん、リリーが思い浮かべてるような大きい肉はないね」


 カツサンドやお弁当のおかずくらいならあるかもしれないけど、どんなに御もてなしレベルが高くなっても数十キロ単位の巨大な肉が提供される事はどんな未来でも用意される事はないだろう。

 サービスが悪いですね、とでも言いたそうな表情でリリーは足元に転がっていた小石を空高く蹴り飛ばした。



 それが合図となったのかは分からないが、同じタイミングで森の奥から殺気を放ちながら何かが近づいてくる気配がした。

 かなり遠い距離だったが、どんなに薄い気配でもこんな平和な空間に流れ込んでしまえば、どんな生き物だって察知できるだろう。

 それを証拠に小鳥のさえずりや虫の鳴き声は怯えるように小さくなっていき、この場の音感は僕達2人と自然に流れる風だけが支配していた。


 左手で光る魔王の紋章に合わせるように剣を持ち、魔法攻撃に備えて闇の剣を構える。

 リリーは姿を現した瞬間にマーキングできるよう、鋭い目つきで周囲を警戒した。



 ここまで若干の冷や汗をかきながら色々準備したというのに、数秒後には全てが水の泡になってしまった。

 目の前に現れたのは特に意味もなく殺気を纏いながら近づいてきた、魔王直属の部下 セバストさんだった。


「お久しぶりでございます」


 男爵のような立派な白ヒゲをくるくると弄りながら、笑顔で彼はそう言った。



 ◇◇◇◇◇



「アキ殿と別れてから魔王様の城へ入ろうと試みましたが、結界が邪魔して一歩も踏み入れる事ができません。己の無力が悔やまれますな」


 両手をお手上げ状態のセバストさんにこれまで集めた情報を伝えると、色々とおかしな点が浮かび上がってきた。

 魔王トランさんが封印された後、少なくともこの世界に数年は魔王なんて存在していなかったらしい。

 それよりも、魔王が死んだら新たな魔王が生まれるなんて話もありえないときた。


 結論から言うと、マジで何が何だかまったく分からない。どれが本当で、どれが嘘なのかも。

 魔王は存在するけど、存在するハズがない。

 ……一体どういう事なんだ。


「何故か人間だけが結果に干渉しない所を見るに、何が真実であるかはアキ殿が直接出向かなければ分かりませんな!!」

「ラスボスの本拠地に行けっていうんですか? 絶対無理ですし嫌です、瞬殺される自信があります」

「そんな事ありません。試しに(わたくし)と手合わせしてみましょう」

「絶対に嫌ですよ。かないっこないです」


 リリーもそう思うよね? と同意を求めようと彼女に視線を移すと「マスターならできる!」と根拠のない自信と共に笑顔で親指を立て始めた。


「できないよ……」


 血の気の多い魔物に囲まれた僕に、同意してくれる温和な仲間は存在しなかった。


「いやいや、私は最初に会った時と同じ威圧を与えたつもりなのですが、前回は泣きながら逃走しておりました。ですが今回は殺しに来てますからな! たった20日程でここまでとは、正直予想外で驚いております」

「……二度と試すような真似はやめていただきたいですよ。心臓が疲れます」

「善処致しましょう」


 善処致さないようならトランさんにチクってやろうと決意した所で、重い腰を上げて目的地に向けて歩く事にしようとした。


「……ところで、そのまま7日間歩くおつもりで?」

「残念ながらそれしか手段がありませんので」

「そこにいるシャドーウルフ…… ではなく、リリー殿の背中に乗って移動してみては?」


 その提案を聞いた時、僕は稲妻に撃たれたような気分で、ゲームであれば頭の上に"!"マークが浮かんでいるに違いない衝撃を受けた。

 口を半開きにしながらゆっくりとリリーの顔を伺ってみると、まるで人間の返り血を浴びたように顔を真っ赤にさせていた。


「む…… 無理です!」


 手をあたふたとしながら顔を横に振り続けるリリー。


「リリーならできる!」


 僕は根拠のない自信と共に笑顔で親指を立て、ここぞとばかりに彼女の逃げ道を封じる事にした。

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