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僕と魔王の復讐協定 ―皆殺し復讐物語―  作者: パン
3章 ファンタジー異世界
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水と油な勇者達

 "朝目覚めたら窓から光が差し込んでいた"という表現が好きだ。

 いつも夜型だったから、起きる時はいつも外は黒く染まっていたからだ。


 きちんと朝に起きて、窓から光が差し込み、温かい空気がおはようと囁き、部屋に充満するいい香りが優しく意識を目覚めさせる。

 元の世界でも体験できたはずのその感覚を、僕はファンタジーっぽいなと感じた。


 この世界にきて2日目、僕はこの世界の事を知らな過ぎている。

 今日はまず、自分の持っている力について調べようと思った。

 とりあえず僕はこの世界の朝食はなんだろうな、と考えながら服を着替える事にした。




 ◇◇◇◇◇



 パンの上に乗った目玉焼きとベーコンの朝食を平らげた後、街の外へとくり出した。

 昨日のゴブリン退治した場所より、もっと街に近い安全な場所だ。

 ……1人で魔物退治なんてのは、まだちょっと僕には早すぎるような気がするし、単純に怖いからだ。


 ここに来た理由は1つ、魔物が襲ってきてもすぐ逃げれるような視界の広い場所で、スキルの復習をする為だ。

 色々試した結果、僕が【狩人の罠】で創り出す事ができるトラップは二種類。

 1つは相手の動きを束縛するトラップ。

 2つ目は火属性魔法が発動するトラップ。


 トラップが発動する条件は誰かがトラップに触れるか、僕が任意で発動するかのどちらか。


 そして最後に、これらのトラップは3個まで置けるという事。

 1個なら簡単に創り出せるが、3個はかなり集中しないと難しい。

 頭の中でトラップを思い描きながらだと、戦闘中に3個創り出すことは僕にはまだ無理みたいだ。


 束縛できると言っても、どれくらいまで束縛できるのかがわからない。

 火属性魔法も、1つではたき火くらいの威力で、3つ合わせてようやくキャンプファイヤーくらいになる威力。

 3個同時発動でようやくギリギリ殺傷能力を持つ威力で、痒いところに手が届かないスキルだなと思った。



 調べれば調べる内に、自分の無力さを感じ始めていたその時、木の影からなにやら気配を察知した。

 僕は全力で逃げる姿勢を整えながら、気配の方向を注意深く観察する。

 昨日は反則的に強い3人がいたからそこそこ戦えたんだ。1人じゃまだまだゴブリン一匹ですら怖くて怖くて戦いたくない。


 ……十分に距離を取り、いつまで経っても現れない気配の正体に、ゆっくりと慎重に火属性トラップを軽く発動させてみた。

 小さな爆発音と同時に「うわっ!」と驚いた人間の声が聞こえた。


 気の影から見えたのは、昨日ガレンさんにどやされて酒場から退場した勇者のカップルだった。


 ……まぁ相手が誰であれ、僕の事を隠れて観察、あるいは襲おうとした事実に変わりはない。

 しかも相手は2人だ。単純に考えて戦力は2倍。

 僕は目の前に束縛トラップを仕掛けながら、相手の動向を待つことにした。



「……いた! そこに居やがったか! てめえ、昨日はよくも恥をかかせてくれやがったな!」


 簡単に居場所がばれた僕に向かって、彼は堂々と歩み始める。

 その右手には僕と同じ銀色の剣が握られていた。


「そうよそうよ! 謝りなさいよ!」


 その後ろからひょっこりと女が顔を真っ赤にしながら現れた。

 魔法を使う為なのか、こちらは剣ではなく重そうな杖を両手で握っていた。


 僕はこういう素行の悪い人間というか、不良と例えるべきか、ヤンキーと呼ぶべきか、そういう類の人間が大嫌いだ。

 自分さえ楽しければ周りに迷惑をかけてもいいと思っている人間。

 俺達はお前らゴミとは違う! と語っているかのような目をした人間。



 ……まぁ僕も、今ではそんなグループの一員に足を踏み入れている訳だけれど。



「申し訳ありません」


 僕が生涯で一番使ったであろう言葉を2人に投げかけた。


「不可抗力だったとはいえ、この世界にきてまだ初日の僕が先輩であるあなた方に恥をかかせてしまったのは申し訳なく思っております」


 予想外だったのか、ぽかーんと口をあける2人に向けて言葉を重ねる。


「昨日は冒険者3人の力があったからこそゴブリンをなんとか倒せたのです。もしあなた方が同じ立場なら、僕の倍以上は倒せていたでしょう。そして、あのギルドで朝から酒を飲んでいたのは僕だったのかもしれないのです」


 目を瞑り、悲しそうな表情をしながら僕は続ける。


「僕のスキルは束縛できる魔法を創り出す事ができます。この辺りのゴブリンなら安全に狩りをする事ができます。僕のような弱小の身の提案で恐れ多いのですが、よろしければ一緒に狩りをしていただけないでしょうか?」


 なんともまあ、すらすらと思ってもいない事が口から出るものだなと我ながら感心する。

 勇者2人は相談し、どうやらこちらの提案を飲んでくれたようだ。


「しかたねーな! そういう事なら俺も少し力を貸してやることにするぜ!」

「私もっ! 後ろからダーリンを後方支援するよっ!」


 1人より3人の方が心強い事には変わりない。

 今日中にゴブリン相手にどれくらいスキルが効くのかを確かめたかったので、本当に嬉しいハプニング。

 昨日の敵は今日の友って偉い人が言っていた。たぶんそれが今なのかもしれないな。

 なんて心に思ってもない事を考えながら、僕達は意気揚々と仲良くゴブリンを狩ることとなった。

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