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僕と魔王の復讐協定 ―皆殺し復讐物語―  作者: パン
3章 ファンタジー異世界
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3つのスキルと3つの講師

 ゴブリンを迷いなく殺せた事で、どうやら3人にとても気に入られたらしい。


 僕は今、優秀な3人の先生の元でスキル【狩人の罠】の練習をしている。

 スキルは誰にも話さない予定だったけど、まぁ隠し通せるものでもなさそうだし、素直に指導を貰ったほうが後々役に立ちそうだったので説明した。

 当然、能力奪取【復讐者の進化】と勇者即死【魔王の宣告】は内緒にしておいた。


「頭の中で目の前に罠をイメージしなさい。過去にひっかかった経験のあるものなら簡単にできるはずよ」


 そんな事言われても今までひっかかった罠なんて、黒板消しをドアに挟んだやつとか、座ろうとした椅子を引っ張られる事くらいしか無い。

 ゲームならばトラばさみに何百回とひっかかった経験がある、そんな経験が役に立つかわからないけど、僕は半ばやけくそでイメージを繰り返していた。


「心が乱れてるわよ。心を落ち着かせてイメージしなさい」


 肩の力を抜き、深呼吸を繰り返す。

 目を瞑り、右手を少し離れた地面に向ける。

 体から蒸気が噴き出すような感覚と同時に、白い光を放つ魔法陣が目の前に描かれた。

 眼を開くと、確かに魔法陣はそこにあった。


「勇者様の魔力を感じましたが見えませんね、失敗ですかな?」

「いえ、僕にはそこに魔法陣が見えますが」

「罠という特性からか不可視になるのよ。まあ当然といえば当然ね」


 僕が想像していた以上に、このスキルは便利のようだった。

 罠を仕掛け、標的が来るまでじっと待つ。

 FPSゲームで引きこもって後方からスナイパーばかりしていた僕にはピッタリのスキルだった。


「オラァ!!!」

 突然、ガレンさんがセーショさんの背中を思いっきり蹴り、魔法陣の中央に飛ばした。


「ギャアアアアアア!!!」

 瞬間、セーショさんの身体が光り、変な姿勢のまま動かなくなった。


「ガッハッハッハッハ!」

「はっはっは! 最高に面白いわ! はっはっは!」


 二人が大声で笑う。僕もつられてすこし笑ってしまった。


「腰がー! 腰がー! 腰がぁー!」


 泣きながら、腰がーを連呼するセーショさん。

 酒場とは別の意味で、壊れた機械のようになってしまった。




 数分後、半泣きで腰を回復魔法で癒すセーショさんの姿がそこにあった。


「なななな! なーんて事をするんですがみなさん! 傷害ですよ! しょ・う・が・い!」

「生涯を神に誓ってる奴がショーガイだってよ。面白いな」


 ガレンさんのギャグは全然面白くなかった。



「セーショよ、深く考えるのです。勇者とは神の使い。つまりセーショは今、神の試練を受けたのです」

 モルガナさんが心にもないとんでも理論をセーショさんに伝えていた。それはあまりにも無理があると思った。


 何故かセーショさんは目を輝かせ、涙を流しながら神に祈りを捧げた。

 いつもこんなやり取りしてるんだろうな……と、酒場のなんともいえない雰囲気を思い出して察してしまった。




 スキル【狩人の罠】を駆使しながら、僕達はゴブリンを片っ端から殺してまわった。


「いいかアキ。ゴブリンの耳と目は、薬や魔法具作成の素材となるの。集めておくと、いい稼ぎにもなるわ」


 モルガナさんは、聖母のような瞳で優しく教えてくれた。


「だから、この耳と目は全部私の物ね」


 ささっと黒いローブの中に全ての素材を隠し始めた。

 聖母がとんでもない悪女に変身した瞬間を目撃した。



 殺したゴブリンの魂の一部は、霧のようになり勇者の紋章に吸い込まれた。

 身体能力が少しずつ成長していく感覚を覚えた。……気のせいかもしれないけど。



「オオッラァァ! 死ねや!」

 ガレンさんの大剣は、ゴブリンを真っ二つにしながら大地を大きく揺らしていた。


「束縛しろ ――氷結する大地(ランドフロスト)

 モルガナさんは全身が動けなくなったゴブリンの耳と目を切り落としながらゴブリンの住処を破壊し尽くしていた。


「…… ――幸福の癒し(ハピネス・ヒーリング)

 セーショさんは腰に手を当てながら癒しに徹していた。



 どれだけ身体能力が上がっても、この人達だけとは戦わないようにしないといけないなと、僕は心の中で誓った。





 夕日が沈む前に、僕達はギルドに帰ることにした。


「アキ、お前はなかなか見どころがあるな」


 疲れていないのか、疲れを見せないのか、おそらく前者であろう元気満々なガレンさんに背中を叩かれながらそう言われた


「皆さんのご指導のおかげです。ありがとうございます」


 お世辞ではなく、本心で僕は伝えた。


「勇者の称号を持っている癖に怯えて酒場に入り浸る馬鹿とは比べるまでもなかったわね」

「勇者様、あぁ勇者様! 私達と運命のような出会いとした時、そのギルドに数名、勇者の称号だけを持っただけの愚か者が存在しました! そいつらは勇者の癖に! 神の使いのくせに! 自らの使命を全うせず! ただ怯え! 恐怖に怯え! くだらん時間と必要のない食料を豚のように消費し続け! 酒の力で己をごまかし続けているゴミが存在したのです!」



 ……まぁ、気持ちはわかる。僕も魔王という偉大な殺戮者と記憶共有なんてしてなかったら、きっと殺せなかったかもしれない。

 自分に復讐の才能が無かったら、ビビッてしまい殺せなかったのかもしれない。

 ……今となっては確かめようはないけれど。


 ゴブリンを殺した時に高揚感、爽快感を感じている僕ももう普通の勇者ではないのかもしれない。

 ……まぁ普通の勇者ではない訳なんですけども。


 普通じゃない勇者というか、普通じゃない存在なんだ。

 普通だったら魔王と復讐協定を結べない。普通の神経じゃ勇者を殺そうとしない。


 =========================

 スキル:【復讐者の進化】アヴェンジャー・エボリューション

 戦闘時、対象への憎悪が大きいほど、スキル所有者の能力が強化される

 スキル所有者によって対象を殺害した場合、対象の能力の一部を奪う

 対象への憎悪が大きいほど、奪う力が強化される

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 スキル:【魔王の宣告】(サタン・センテンス)

 勇者を対象に発動

 頭に手を触れ、死を宣告することで魂を破壊する

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 スキル:【狩人の罠】(ハンター・トラップ)

 魔力に応じた魔法の罠を生成する

 トラップ周囲の気配を察知することができる

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 3人にはいつか謝らなくてはいけないかもしれない。

 僕は勇者ではなく、神でもなく、魔王でもなく、普通じゃない歪な存在だという事を。




 ……今は難しい事を考えるのはやめよう。

 今日は頑張った。初日でこれだけ頑張れた。

 僕は頑張る事は嫌いだったけど、きっと明日も頑張れるだろう。


 緑の草原が夕日に照らされて美しく輝いている。

 そんな前世界でも見れたであろうファンタジーのような道を歩きながら、僕達は帰路についた。

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