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僕と魔王の復讐協定 ―皆殺し復讐物語―  作者: パン
3章 ファンタジー異世界
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おかわり自由な勇者様

 少し離れた豪華な部屋に入るなり、見た感じ貴族が座るような豪華な椅子に案内される。

 目の前のテーブルには、不気味に光る水晶玉が置いてあった。


「お掛けになってお聞きください。戸惑っておられるでしょうが、先ほど聖女様が申した通り勇者様には成すべきことをしていただかなければ成りません」

「……はい」


 気の抜けた返事を返しながら、お互いの自己紹介をする。

 この世界ではアキと名乗ることにした。

 トランさんに付けてもらったのと、心機一転生まれ変わって生きてみようと思ったからだ。

 そういえば、聖女さんからは名前を聞かれなかったな。まあ100人も居ればいちいち覚えていられないのだろう。


「心中お察し申し上げます。自分には魔王を倒す力は無い、そう思っているのではありませんか?」


 たしかに、今のままだと勇者どころか先ほどすれ違った兵士ですら倒せ無いと思っております。


「ですがご安心ください。勇者として召喚された時点で、アキ様は神より聖なるスキルを授かっております」

「聖なるスキル……ですか?」

「スキルとは、この世界では誰もが1つ持っている力となります。普通の民ですと、少し足が早かったり、記憶力がよかったり、料理がうまかったり。……後は寝つきが凄く良くなる、なんてスキルもありますね」


 うわあああ微妙。寝つきが良くなるだけなんて全力で同情してしまいそうだ。

 ……でもニートの時には凄く便利なスキルだと思ってしまう。

 無職は外出しないから身体が一切疲れない、だから寝つきが悪くなるんだよね。

 一週間くらい前なら喉から手が出る程ほしいスキルだったけど、勇者としてならばそのスキルは勘弁願いたい。


「比べて、勇者様は圧倒的な力を持っています。属性魔法の強化、詠唱短縮、複合魔法の修得など、魔法関係は当然のこと、各種武器の力を引き出したり、鋼のように硬くなったりと、様々なスキルをお持ちになっています」


 ほえーって関心してしまっているが、僕はそんなスキルを持つ屈強の勇者を倒さなければならないのか。

 ますます簡単にはいかない戦いになりそうだ。


「僕のスキルは一体なんなのかって分かるんですか?」

「はい、こちらの魔法具 虹色水晶に触れることでわかるようになっております」


 魔王の紋章のようにビリビリするんじゃないか? と少し怯えながら僕は水晶玉に触れた。

 すると、頭の中と水晶にスキル名が浮かび上がった。


――狩人の罠(ハンター・トラップ)

――魔力に応じた魔法の罠を生成。トラップ周囲の気配を察知することができる。


「なかなか珍しいスキルになりましたね。おめでとうございます。」

「珍しいんですか?」

「はい、先ほど申しました通り、大半の勇者様は身体か魔法を強化するものを習得しています。それだけでも単純に強いのですが、アキ様のような変化のある特殊なスキルが、この世界では重宝されております」

「単純に力が強いほうがいいような気もしますけどね」

「魔王はとても巨大な力をもっています。先日も勇者様5名と冒険者30名が犠牲となりました。現在我が軍を総動員しても、なかなか城にも近づけない状況なのです。その為、アキ様のような優秀な特殊スキル持ちが重要な鍵になっているのです」


 僕は頭に大きなクエスチョンマークが浮かび、それをそのまま言葉にして投げかける。


「……魔王って、どんな奴なんでしょうか」

「死を司る魔王のようで、殺した人間や魔物をアンデットのように使う卑劣な能力を持っています。聖女様が光の防御陣を敷いていますので、今の所大きな被害はありませんが、これも時間の問題です」




 ……魔王が存在する?

 トランさんは魔王に家族を殺され1人になったと言っていた。

 生き残りがいた?別の血族がいた?


 ……封印されている魔王の事は目の前の彼女に確認することはできない。

 それはそうだ、僕はまだ封印されている魔王の存在を知っている訳がない存在なのだから。


「少し落ち着いた所で聖女様の所へ戻り、勇者の紋章を授かりにいきましょう」



 魔王の存在に少し混乱しながら、来た道を戻った。

 門番の屈強な兵士は、何故か僕を睨んでいるように見えた。

 僕が100人束になっても勝てなさそうな兵士達も相手にしないといけないと思うと、胃に穴が開きそうだ。


◇◇◇◇◇


「お待ちしておりました、勇者様」


 聖女セイカさんは、ふわりとお辞儀をしながらそう言った。


「申し訳ありません。実はそろそろ次の勇者様の召喚を始めなくてはならないのです」


 わんこそばみたいに召喚されるのか……。

 僕が勇者を殺しても切りが無いのではないのだろうか。

 このファンタジー世界にきて1時間くらいしか経過していないが、僕の心は既に折れかけている。


「慌ただしくて申し訳ありません。早速ですが右手を出していただいてもよろしいですか」


 右手を差し出した瞬間、手の甲が光り輝きだした。

 天使の羽のような紋章が描かれ、そこから力が溢れているように感じる。


「はい、終わりました。その紋章は勇者としての証となります。紋章は魔物を殺す事で魂が紋章に流れ込み、自身の力となります。身体能力の強化だけでなく、スキル開花の可能性もありますよ」


 パパっとハンコを押すような感じで紋章を授かった。

 左手には魔王の紋章、右手には勇者の紋章。

 なんともまあ複雑怪奇な存在だなと自分の事ながら思ってしまう。


「魔王討伐に向かう前に、まずはこの都市周辺で魔物を退治し、自身を成長させるのが良いかと思います。早足ですみません、そろそろ召喚の儀をしなければならないので、この辺りで失礼させていたきます」

「……お忙しい中ありがとうございます。頑張ります」


 頑張ります、なんともまあ便利な言葉だ。

 どう頑張ればいいのか分からないが、どう頑張るべきかを調べるために今日は頑張ろうと思った。


 城を出る前に、お金と軽い鎧と剣を貰った。

 ここで木の棒と布の服を渡すような惨い追い打ちをかけられたら、僕はこの場でストライキを始める所だった。



 大きな門を潜り抜けると素晴らしい景色が広がっていた。

 城を中心とした美しい城下町、外周には外敵から守るために高い城壁が並んでいて圧巻だ。

 レンガや木で作られているであろうその空間からは、自然のいい香りが漂っていた。

 聖都というだけあってか、あちらこちらに教会が建ち並んでいるようだ。


 頭で思い描いたようなファンタジーを目の前にして、僕は確かにファンタジー異世界に来たんだなという事を再確認した。


 元の世界であればいますぐ写真を撮ってSNSにアップしたい所だ。

 そんなとんちんかんな事を考えながら、わくわくした観光気分で僕は町を探索してみることにした。

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