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僕と魔王の復讐協定 ―皆殺し復讐物語―  作者: パン
2章 2つの世界と2つの復讐
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羞恥心と復讐心

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――――。

 ――。


 ……トランさんとの記憶の共有化が始まって、どのくらいたっただろうか。

 ……なかなか、いや、なんというか。


 『恥ずかしいッッ!!』


 合唱コンクールだったら優勝できるくらいピッタリと言葉が重なった。


「……復讐についてだけの記憶の共有化ですよね? ですよね!?」


 男として恥ずかしい所を見られてないか、僕はすごく心配になった。


「私も初めてだからわからん……」


 トランさんが顔を真っ赤にしている。

 一体何を見たのだろうか、気になってしょうがない。


「……トランさんに比べたら、僕の復讐なんて小さく思えてしまいましたよ」


 恥ずかしさを隠すように、僕は素直な感想を彼女に伝えた。


「そんなことはないぞ」


 彼女は否定し、続けてこう言った。


「私は生まれながらにして力があったからこそ、抵抗できたのだ。無意識の内に家畜を育てるかのような環境で育って、その中でさらに奴隷のように扱われる。更に真の敵の正体すら分からない状況とは! 私だったら耐えられん! カッカッカ!」


 僕に気遣いながらではなく、本心で言っているように聞こえた。


「恥じることはない。むしろ力があって家族すら守れなかった私が恥ずべき所だ。」

「いえ、そんなことはないですよ。トランさんは耐えて、ベストを尽くしたと思います」


 なんだかきまずい空気が流れる。

 お互い顔を見るのが恥ずかしいというか、くすぐったい気持ちになっている。


「……とりあえずだ、これからの事を考える前に、だ」


 耳を真っ赤にしながら、トランさんは叫んだ。


「まずはお菓子が必要なんだ! エネルギー補給の時間だ! 飲み物と菓子をもってくるんだ! そぉい!」


 そぉいと、僕はこれ以上ない雑な動作で元の世界に返された。

 いたたまれない思いをしながら、僕は意識を手放した。



 ◇◇◇◇◇



 元の世界に帰った。時刻はお昼の12時をまわった頃だった。


 恥ずかしくて全身から冷や汗が出てきた。

 こんなに恥ずかしい思いをするとは思わなかったし、恥ずかしい思いをさせてしまうとも思ってなかったし、なんだかトランさんに余計なものを見せてしまったような、なんだかよくわからない感情がぐるぐるとまわった。

 とりあえず冷静になるために、熱いシャワーを浴びて誤魔化す事にした。



 買い物に行く前に、まずはノートの効果を確かめたかった。

 適当にテレビをつけて、生放送に出演している芸能人の名前を書く。


 本当はもっと慎重に確かめたかったけど、この世界はトランさんに任せることにしたので、まあいいだろうと吹っ切れた。

 テレビの向こう側では、お祭りのような騒ぎが始まった。


 そしてもう一人、僕を恐喝して会社を辞めさせた上司の名前を書いてみる。

 本当は苦しませたかったけど、許す事にした。お前がいなければ、僕はトランさんに会えなかったから。

 何処で死んだのかなんて興味は微塵もない。

 だからは許す。だから殺す。苦しまずに殺す。


 体の内側から、小さいが確かに力が溢れ出した。

 今、生まれてはじめて僕は才能を使った。


=========================

スキル:【復讐者の進化】<アヴェンジャー・エボリューション>

戦闘時、対象への憎悪が大きいほど、スキル所有者の能力が強化される

スキル所有者によって対象を殺害した場合、対象の能力の一部を奪う

対象への憎悪が大きいほど、奪う力が強化される

=========================


 興奮した。歓喜した。

 人を殺すのに迷いが無かったし、別に怖くも無かった。

 むしろ、快感が優っているくらいだ。


 記憶の共有化というのは『自分の記憶+トランさんの記憶+相手を思う気持ち』すら共有化されてるみたいで、人を殺した僕は自分だけではなく、トランさんの復讐すら達成したような高揚感を持った。


 このまま淡々と殺していってもいいが、いずれトランさんに支配してもらうにしろ、魔法具の正体がばれるような懸念は残したくなかった。

 残りの人間は、トランさんと一緒に殺そうと思った。

 それがきっとお互いの為だし、一緒に喜んでくれると思った。


 そんな事を想いをはせながらノートをペラペラとめくっていると、今まで読めなかった文字が読めるようになったようだ。

 セバスト(・・・・)という文字、名前を認識できた。いや、正確にはセバスト(ドクロマーク)である。


 トランさんに勇者到着を知らせた教育係の人の名前だ。

 魔力を持つ者には効かないらしいが、どんな恨みで書いたのか気になるので帰ったら聞いてみることにしよう。


 僕は頭を切り替えて外の世界に繰り出した。

 いつも夜にしか出かけないからか、日差しが焼けるように痛く感じた。

 太陽の光って眩しすぎるよ。暑過ぎる。

 日差しが弱点という所だけをみると、確かに僕には魔王のセンスがあるように思えた。

 そんなくだらない事を考えながら、光から逃げるように少しだけ駆け足で、僕は近所のスーパーに向かった。

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