決意と覚悟の記憶共有
何時間眠っていたのかはわからない。
夢は見れた。
アキと一緒に勇者を殺しまわる、とても愉快爽快な夢だった。
飛んでいる鳥に魔法を当てたら、鳥の落下衝撃で兎が死んで、近くに美味しい野菜まで転がってたようなお得な夢だった。
そんな楽しい夢だったが、目覚めると視界には白い世界が残酷にも現実を押し付けてきた。
そんな事実、今は味わいたくなんてない。
私は二度寝の惰眠を貪ることに決めた……と思ったら、アキがきた。
驚いた。驚きの余韻に浸る暇もない。
彼は言った。お菓子を食べたいと言ってたから持って来たよと。
アホかこいつはと思った。
アホすぎるが、そんな気遣いが嬉しくて嬉しくてたまらなくて、自分もまたアホだと思った。
今まで食べたもののなかでダントツ1位で美味しかった。
食べれば食べるほど、ランキングが上塗りされていく。
ここ数百年と自分の腕しか食べてこなかったからと言うのもあるが、それを差し引いても美味しかった。
甘い! 甘ぢょっぱい! 辛い! ふわふわパリパリサクサクしっとり!
どれもどれも、みんな素晴らしい。
どれも感動しながら、ほとんど平らげてしまった。
アキは苦笑いしながら、私の食べてないお菓子を食べていた。
あれが一番美味しそうだった。
こちらでは1日しか経ってないが、どうしたんだと聞くと「すぐ死ぬんじゃなくて、極限まで苦しませてから殺すようなノートは無いか」と聞いてきた。
そんなご都合魔法具、存在するわけが無い。あったとしても作り方が分からない。
「カッカッカ! 無いものはしょうがないんだよ! そもそもアキ、一方的に復讐を手伝ってほしいだなんて考えがそもそも都合がよすぎるぞ」
面白しぎて、アキが来てからなんだかもう数百年どころか、この先 千年くらい笑ったがする。
「交換条件だ。アキの復讐は私がしよう。私の復讐はアキ、君がやってくれないか」
私は、頭の中の言葉を自然と口に出した。
運命なんていう言葉は使いたくないんだが、もうそれ以外の表現がみつからない。
彼も、私も、お互いを必要としていた。
だから、惹かれた。惹かれ合った。
「――君にしかできない。君の復讐者の進化と、私の勇者殺しがあれば」
お互いの世界に復讐しよう。
交換条件と表現すると、なるほど確かに対等だなと思った。
「僕にできるのであれば、やりましょうか」
少し自信なさげに、彼は言った。
「なかなか軽く言うね」
私は鼻で笑いながらそう言った。
「アキ、記憶の共有化をしよう。
私の全てを知ってもらいたい。君の全てを知りたい。
私の全てを伝え、受け入れてほしい。
君の全ては、私が受け入れる」
止まっていた時間、アキが確かに動かしてくれた。
目の前の彼は、ただの人間ではなく、同じ夢を持つ。
全てを恨んでいた復讐心に、信じていた心に息吹を与えてくれた人間。
「隠すことなんてない。隠すことなんてできない。
私だけは、君を裏切らない。君だけは、私を裏切らない」
彼は女性をエスコートするかのように、私の目の前まで歩み寄ってくれた。
「楽しみです」
彼は言った。
「私もだ」
白い空間が、醜い牢獄が、いまでは綺麗に輝いているように見える。
私たちは、お互いの右手を、思いを込めて頭に乗せた。




