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僕と魔王の復讐協定 ―皆殺し復讐物語―  作者: パン
2章 2つの世界と2つの復讐
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瞳に宿る復讐者

 「カッカッカ! なぁアキ、機嫌を直してくれよ! 冗談だったんだって! 」


 子供をあやすような言葉がお気に召さなかったのか、アキはむすーっとヘの字に口を曲げた。

 本当は冗談ではなく本気なのだが、まぁそんなことは些細な事だ。

 心にも思っていない謝罪を、アキはやれやれと首をかしげながら受け入れてくれた。

 その飽きれたような仕草は、妹によく似ていた。めんどくさいと思っている仕草だった。


 アキは、自殺したらいつの間にかココに居たと言った。


 自殺なんて今時ネズミですらしないと馬鹿にしたが、少し前に私も自殺を考えていた事を思い出した。

 絶対に内緒にしよう。この嘘は墓まで持っていくと決めた。


 話をしていると、なんと言うべきか、アキとは性別も体格も力も全てがチグハグで、まったくこれぽっちも似ていないが

 いつのまにか彼に親近感を持っていた。


 ――アキの事をもっと知りたい。


 こんな気持ちは始めてだ。

 数百年くらい独りぼっちだった所にピョコっと現れたら、昆虫にだって恋しそうだ。

 羞恥で湧き立つ感情が私の顔を歪めてくる。


 アキは頭の上に数分間、手を乗せ続けると相手のスキルが見える事を知らないらしい。

 正確には"ある程度心を開いた者同士が手を乗せる"というものだが……


 まあ要約すると、スキルと同時に"ある程度"とやらも確かめる事になる。

 ……不可抗力でな!


 「……アキ、もし良ければ、良ければなんだけど、君の頭に手を乗せていいかい? そうだな、だいたい5分くらいで済む」


 胸の奥が高鳴ったような気がした。

 怖がっているのか恥ずかしいのか、微妙な顔で小さく震えながら、アキは頭を差し出した。



 ◇◇◇◇◇



 城の周りの森には、バニーボアという普段温厚だが怒ると物凄い勢いで突進してくる動物がいた。

 捕まえるのに苦労するが、その凶悪な見た目とは裏腹に、美味しい食用肉になる優秀な動物だ。

 あの時食べたバニーボアのステーキは、とても美味しかった。


 ――軽く現実逃避していた思考を奥から引き戻した。

 現実から目を逸らしても仕方がない事は分かっている。

 だけども、目の前の大人しそうな雰囲気をかもし出しているアキの能力を見ると、それも仕方ないと思ってしまう。


 ――復讐者の進化アヴェンジャー・エボリューション


 かなりえげつない。特にこの"対象の能力を一部を奪う"なんていうのは本来魔王クラスに与えられるスキルだ。

 自身を一時的に強化したり、他者を強化、弱体するようなスキルはあるが、能力を奪うスキルなんて見たことが無い。

 神が与えた能力を人間が奪う、まるで神への反逆を意味しているようだ。


 私のスキルは死神の錬金術(デス・アルケミー)。回復して魔法具を作れるただそれだけ。

 魔王よりよっぽど魔王らしいスキルを持つ人間をまのわたりにすると、魔王としての自信が無くなっていきそうだ。


 聞けばアキはまだ、人を殺したことがないらしい。

 殺人の才能があるのに、その才能を活用しないとは。

 使わないならほしいくらいだ。交換してくれ。くれ。


 いや、実はアキは人を殺せないのかもしれない。

 頭では分かっていても、体がうごかず殺せないタイプ。

 慈悲を乞うと許してしまうタイプ。


 「アキ、君は復讐を望むか?」私は聞いた。

 言葉は必要なく、眼で肯定を確認できた。


 種族は違えど、目的は同じだ。

 何かの縁だ、アキの復讐に協力してあげることにした。


 魔力で魔法具を作成した。

 久々だったが、一度子供の頃に創った物をそのまま創り出しただけだから難なく完成した。

 あちらの世界では魔法がないらしい。

 アキ自体が魔力がないので、きっと他の人間も同じなのだろう。


 魂に損傷が無いという事は、身体はまだ生きている可能性を示している。

 ここに来れたという事は、きっと元の世界の身体に戻す事は可能だろう。

 ここは魔王だけを閉じ込める空間。人間向けに作られてはいないハズなのだから。


 ……ただ、結果どうなったかくらいは聞きたい。

 魔法具を渡したんだ、それくらいの権利は発生していると思っている。


 そうと決まれば魔王の紋章をつけよう。

 そうしないと、死んだときに魂が消滅するか、勇者として今度こそあの世界に召喚されるだろう。


 それは嫌だ。両方ダメだ。

 消えるくらいなら、勇者になるくらいなら、もう一度私の所に来てほしい。

 まだまだ教えてもらう事があるし、いっぱい話したい事がある。


 私は引き止めようとする心を抑え、彼を見送った。

 ありがとう、と。

 願わくば、また会うときにその瞳の色は変わらないでおくれと。




 次に会えるのは、何年後になるだろうか。


 数百年封印された私にとっては、たいした時間ではない。誤差だ。ささいな時間。

 しばし、余韻に浸ることにしよう。


 楽しかった。わくわくした。

 数百年ぶりに誰かと会う。

 ドキドキはした。異性ではあったが、そっちのドキドキではたぶん無いと思う。

 だけど、それも悪くないと思った。

 城にいた頃は完全に箱入り娘として生きてきたから、何もかも新鮮だった。

 まぁ、ある意味今でも箱入り娘なんですがね ってやかましいわ!


 一人ツッコミできるくらい、私の心は晴れやかだった。


 復讐心だけでなく、心まで満たしてくれた彼。

 また、いつかあえるだろうか。

 あえなくても、残酷だとは思わない。

 ずっとこのまま絶望だとおもっていたから。


 少し、眠るとしよう。

 今なら、幸せな夢が見れると信じていたから。

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