アイリーンの行方
いつも読んでくださりありがとうございます。
信じられない言葉に、部屋にいた全員が息を呑む。
ほんの数十分前まで隣で微笑んでいた美しい姉の危機に、エメラルダの表情も強張った。
「兄様達にはもう連絡はしてあるの?近衛は捜索を開始しているの?いつ気づいたの?」
扉の前で呆然としているディアに、エメラルダが近寄り状況確認をする。
はっと我に返ったディアが、こくりと頷き状況を報告し出した。
「現在、リデア殿下、グレイブ殿下、ローレン殿下に報告済みです。グレイブ殿下指揮の元、近衛兵による捜索が開始されました。先ほど退出された際にお供したメイドが応接間に倒れており、発覚してからすでに10分ほど経過しております」
(10分ならまだ王城内にいるはず。グレイブ兄様の事だから、虫の一匹王城から出る事を許さないだろう)
「グレイブ兄様のところへ行くわ」
エメラルダの言葉にディアが眉を顰めた。
「エメラルダ殿下。現在、城内は大変危険な状態です。アイリーン殿下の命に関わるのです。エメラルダ殿下がグレイブ殿下の元に行かれても…」
冷静さを失っているのか、いつもより感情を露わにディアが口を挟む。
(まぁ、「お前が行っても邪魔になるだけ。大人しくしてろ」というところかな。私の王城での扱いと、スキルを知らない人からすればそう思うのは無理ないか)
人に見えない様にスキルを発動させ、城内にいる全ての人間の居場所を『検索』する。
そこで目に入った部屋に近づいてくる人物の名に、エメラルダの口角が上がった。
「そうね。私が行く必要はなさそうだわ」
エメラルダの含みのある言葉に、ディアが口を開こうとすると同時に部屋のドアが無遠慮に開かれる。そこに佇むのは怒りで表情を失っているグレイブだった。
「エメラルダ。アイリーンの居場所を探せ」
「もう見つけております」
エメラルダの言葉に周りがざわつく。いつ?どうやって?あの王女が?
ヒソヒソと話しているが、普通に不敬に当たる言葉もちらほら聞き取れる。そんな周囲の言葉など気にせず、グレイブはニヤリと笑う。
「さすが我が妹だ。行くぞ。ローレンのスキルでアイリーンの場所までひとっ飛びだ」
グレイブがエメラルダにずいっと近づき、あっという間に抱き上げる。流石に予想してなかった抱っこにエメラルダも慌てる。
「グレイブ兄様!私は歩けます!」
「その短い脚で移動していたら日が暮れる。行くぞ!」
落とされない様にグレイブの首にしがみつく。そんなエメラルダを気に留めることなく、ローレンの待つ執務室へと走り出した。その後を慌てた様に近衛兵がついて行く。あっという間の出来事に、部屋に取り残された者は唖然と見送る事しかできなかった。




