9話
とある人が帰ってきたことによりお祭り騒ぎだったギルドは、雲を散らすように解散していった。そんなギルドは今、紫煙が漂っている。
「んで、これは一体どういう状況だい?」
「ママ、この子達さっきまで喧嘩してたんだけど仲直りしたわ。でも、また喧嘩しちゃったのかしら?」
「いいえ、エリナリーゼ様。喧嘩はしていません。今はただお互いの顔を見たくないだけです。」
「同意見だ。後ちょっと間ジェリーパイも食べたくない。」
「同意見です。」
「仲良くなって安心だわ!」
「「仲良くはなってない。」」
「はっはっは、面白い子達だねぇ。アリスに引きづられてるだけはあるよ。」
「フフン、それほどでもないわ!」
「それたぶん─」
「褒めてないぞ。」
「はっはっは!エリナリーゼ、アタシこの子ら気に入ったよ。」
「ええママ、彼ら面白いわよ。色んな意味でね。」
「─へぇ。」
そうして紫煙を優雅に吹くのは、目の前に座る燃える様な赤い髪をした美女だ。足を組んでギルドに常備されてるソファーに座っている。メイン色を赤とした女海賊のような格好だ。
「アタシの名前はブリュンヒルデ。『炎上の踊り子ブリュンヒルデ』さ。つってももう踊り子は外して欲しいとは思うんだけどねぇ。神にとって人は等しく皆子供って事さね。聞いたことあるかい?」
「ええ、もちろん。」
この世界では特定の人間に神が直々に名を与える事がある。その恩恵は馬鹿にできず、絶大な恩寵が宿る。だが、中には意味のない物であったりして一部には評判がすこぶる悪いらしい。名を貰った人間はギルド掲示板に張り出されることになっている。そんな中でブリュンヒルデは1目置かれていた。
「最難関ダンジョン『アビスホール』到達階層27パーティ平均レベルは130、ですよね?」
「へぇ。アンタ名前は?」
「ロードって言います。」
「ああ、アンタがロードか。アリスが良く話してるよ。そっちは?」
「─シデンだ。」
「ふむふむ。」
ブリュンヒルデは逡巡思考した後、決定を下した。その顔は面白そうだと言わんばかりに綻ばせている。
「アンタら好きにやんな。何かあったらウチら『フレイムダンス』を頼るといい。悪さは許さないかんね。」
「どういう事だ?」
「私の目が、直感が訴えてるのさ。アンタらは原石だって。きっとそんな遠くない未来には最前線でも耳にする。そんな気がするのさ。そんな原石を野放しにして他のクランに取られるのはまぁ面白くないねぇ。面白くないが、アンタらのリーダーを制御出来るクランがあるとも思えない。だから、野放しにして借りを作っておこうって話さ。」
「フフン、それほどでもあるわ!」
「はっはっは。アンタら大変だろうけどい良いリーダーがいてくれて良かったねぇ。」
「良い、リーダー?コイツが?」
「僕は異論は無いよ。」
「ありがとうママ!また会いにくるわ!」
「ああ、また顔を見せておくれアリス。」
そう言って三人一行は立ち上がり、アリスについて行くように去っていく中、シデンだけが戻ってきた。
「漢女!」
「あら、どうしたのかしら?また追いかけっこするのかしら?」
「っ、あんたレベルは?」
「119よ。」
「・・・次は負けねぇ。」
「いつでもかかってらっしゃい。」
そう言い捨てて、シデンはパーティに戻っていった。




