8話
冒険者ギルド『ヴェネステラ支部』は他の冒険者ギルドとは少し変わっている。ギルド内で居酒屋があり通常のギルドと広さが4倍もある。1階では通常の個人冒険者への依頼斡旋、2階ではほぼ全面事務所として利用し、3階では大会議場となっている。ギルドの裏には古物商だとか色々とあるがそれはさておき、こんなに広くなったのは明確な理由があった。まずはこの都市『ヴェネステラ』が別名『冒険者の都市』と呼ばれるようになったのは大きく2つ要因がある。一つは世界最難関ダンジョンが都市のすぐ北側に存在する事。そして都市長と2カ国の強力な援助資金のお陰である。この関係性についてはまた語るとして、今語るべきは、世界最大の冒険者ギルドが、見世物小屋と化している事だろう。
「秩序と正義の神ミロスは言ったわ!『正義は個々それぞれ人に有る。故に互いの正義を互いが認め、秩序が生まれる。ただ、始まりが困難』だと!ならば、困難に立ち向かう勇気を出して、最初の一石となるのがこの私だわ!それが修道女の務めだもの!」
「ごめんアリス!アリス様!俺が悪かった!!」
「謝る相手が違うわ!」
「シデン!ここは一緒に謝ろう!僕も君に謝るから君が僕に謝ってくれ!」
「ならお前から謝れ!俺は別に悪くねぇだろ!」
「っ、僕だって君を傷つけないよう言葉をずっと選んでたさ!それなのに突っかかってきたのはそっちだろう!」
「誰が誰を傷つけるって!?あぁ!?」
「・・・エリナリーゼ様。」
「はぁーい♡」
エリナリーゼの両腕に括り付けられた2人の青年は向かいあったまま距離を縮めた。2人の思いとは裏腹に。
「いいぞやれぇ!」「ブチュッといけぇ野郎共ぉ!」「エリナリーゼちゃん止めちゃダメだぜぇ!」「白髪の子とは私がしたいわぁん♡」「覚悟決めてブチュッといけやぁ!」「舌入れねぇと俺は認めねぇぞ!」「きーす!きーす!きーす!」
日々荒くれ者達が集まるギルドに通常のギルドとは4倍。騒ぎを聞きつけた冒険者がまた騒ぎを広め、さながら現場は阿鼻叫喚である。キスするかしないか賭博まで行われる始末。そして意固地になってきた2人はさらにヒートアップする。
「大体僕が丸く収めようとしてるのにずっと突っかかって来たのはそっちだろう!?君の発言で空気がだんだん悪くなって行くのが分からないのかい!?」
「んだとテメェ!吹っかけても怒る素振りも見せねぇ臆病もんがよぉ!男はなぁ!拳と拳で語り合うもんなんだよ!テメェは一々考えすぎなんだよダァホォ!!」
「なっ、君にだけはアホだと言われたくないね!この脳筋大アホ!!」
「んだとぉ!」
「・・・ん。」
パチンっと指が鳴らす音が部屋に響いた
「は〜い♡」
ガツン
2人の距離はもうガチ恋目線、額がぶつかり互いの鼻の毛穴までしっかり見える距離になる。もう、後がないぞ。
「「「「キャーーーーーーーー!!!!!!」」」」「「「「あらヤダぁ♡」」」」「「「「ぶちゅっといけぇええええ!!!」」」」
「───わかった。協力、する。」
「───僕も、謝るよ。」
「ああ、確かに、俺も悪かった。空気を悪くしたり、変につかかったり悪かった。」
「うん、僕も悪かった。僕は・・・君に、自分を被せて同族嫌悪してたんだ。」
「─俺はお前じゃねぇ。」
「わかってる。でも君も、うっすら感じてたんじゃないか?」
「・・・」
「ごめん。」
「・・・よし。」
「ふふ、良かったわね。」
「「ふぃー・・・」」
「「「「「「「「「「「「ちっ」」」」」」」」」」」」
どうにか2人は人生トップをかける程の難を逃れ、関係者には円満な解決、外野はつまらぬ結果となりはしたが、平和な日々が今日も訪れる、はずだった。
「あ、ママ帰ってきたよ。」
「「「「「「「「「「「「えっ」」」」」」」」」」」」
「ママ!?」
ブチュッ
「「ん!?」」
「あっ、ごめんなさいね♡」
「「ぎゃああああああああああああああああ」」
・・・味はきっとジェリーパイだ。




